『オフ・ザ・フィールドの子育て』著者・中竹竜二さんインタビュー!「人を伸ばす人を育成する」プロが、子どもを伸ばす極意について語ります!(後編)
記憶に新しい2019年のラグビーワールドカップ。試合の様子はもちろん、試合外での選手たちの様子も注目を集めました。
ラグビーは、ほかのスポーツとは一味違い、足が速くなくても、パスが苦手でも、活躍の場所がある「どんな個性も活きる」スポーツです。これは社会の理想の姿かもしれません。
そんなラグビー界で「コーチのコーチ」として活躍する中竹竜二さんが語った、人育て=子育てとは?
今年新たに執筆した『どんな個性も活きるスポーツ・ラグビーに学ぶ オフ・ザ・フィールドの子育て』のスピンオフとして行われたインタビューを公開します!
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(前編よりつづき)
―この本で特に注目してほしいポイントは何でしょうか。
特に、タイトルの「オフ・ザ・フィールド」に注目してほしいと思います。人は何かと、自分の興味のある点や、試合やテストなどの結果に目を向けがちです。しかしその結果が出るまでに、どれだけ練習したかや、どれだけ議論を重ねて信頼関係を築いたかなど、皆の注目が集まる場所の周辺、つまり、「オフ・ザ・フィールド」がとても大切なのです。この周辺的な事柄こそが、人を育てる軸になっているのです。
親子の関係にしても、子どもと離れている時間に目を向けてほしいと思います。そこでいかに自分を省みることができるかが、その親子が成長する鍵です。たまに、「私は子どものことを24時間考えています!」と堂々と言う親御さんがいます。それくらい子どもを大事に思う信念自体はいいですが、その時間の半分は、自分のことを考えるべきです。「私は子どものことをとても大切に考えているので、私自身が成長すること、私自身についても考えています」ということが、賞賛されるようになるといいのではないかと思います。
―コロナの影響で、時代に変化が見られます。中竹さんは、「全員がリーダーになることが必要な時代」とおっしゃっていますが、その意味するところをお聞かせいただけますか。
まず、「リーダーの概念」を変えてほしいと思います。
それは、「自分を自分の力で引っ張るのもリーダーである」ということです。親御さんも子どもを引っ張るだけでなく、自分を引っ張るのです。そうすれば子どもも、誰からも引っ張られることなく、「私の今日は私が引っ張る」という風になっていきます。
それはもちろん、仲間も引っ張ることができればいいですが、なかなかそうはいきませんから、「オセロやゲームはだめだけれど、野球では引っ張ることができるな。」などと、自分が引っ張れることを見極められることが大事です。子どものうちから、自分を引っ張るのも、仲間を引っ張るのもどちらもリーダーだ、というのを、分かっていて欲しいと思います。
そして最終的には、「リーダーを引っ張るリーダー」が生まれてほしいです。影響力のある人に、新しい視点を投げかけて、一定の決められた方向以外を提示ことができたら、豊かですよね。
―本書の第1章で、「インナドリーム」についても書いていらっしゃいますが。
「夢」というと、例えば、アメリカンドリームのように、誰にでも分かりやすい明確なものを思い浮かべますよね。褒められることや、勝利、評価や感謝などです。
しかし、これは、「結果」の段階になってはじめて手にすることができるもので、この結果が得られなかったら、次のアクションを起こす原動力がなくなってしいまいます。だからこそ、「内側から湧き起こる」ドリームが必要です。これさえあれば、私は没頭する時間や幸せを得ることができるというものです。
例えば、野球でボールを打ったときの、カーン!という音、サッカーでボールを蹴った感触、陸上でスタートする瞬間、難しい問題に向き合っている時間など、結果によらないものです。これが見つかった人はとても強いです。辛いことがあっても、ここに立ち戻りさえすれば、幸せが待っているのですから。
でも、このインナードリームは、トップアスリートでも認知していないことが多く、そういう人は、辛いときに戻ってこられないでいます。
一方、トップアスリートのなかでも本当に世界で勝っていく人は、自分のインナードリームをしっかり認識しています。試合で負けてしまっても、翌日大好きなプレーをすることで、「よし、今日も頑張ろう!」となるのです。
このインナードリームは、早いうちから見つけられるといいですね。
―本書の中で、「子どもを伸ばす親になるための6カ条」の項目も興味深いです。その中から、親が「本当に安心できる居場所になる」というメッセ―ジの真意を教えてください。
正直でいられることは大切です。親や先生は自分よりすごい、と子どもは思っているはずですが、必ずしもそうではないですよね。親にもダメなところがあるのだ、と分かっていれば、子どもも正直に失敗を報告することができます。そのためにも、ダメな親の姿をさらけ出すことが大切です。人生規模でダメなところをさらけ出すのは、頃合いを見計らっての大切な日にしてほしいですが、日常のちょっとした失敗や後悔は、「今朝は言い過ぎてごめんね。別のことでイライラしていたものだから…」という様に、正直に伝えてよいのです。
これも、親も子も成長する、素敵な姿のひとつですね。
―中竹竜二( Nakatake Ryuji )
株式会社チームボックス代表取締役
日本ラグビーフットボール協会理事
1973年福岡県生まれ。早稲田大学卒業、レスター大学大学院修了。三菱総合研究所を経て、早稲田大学ラグビー蹴球部監督に就任し、自律支援型の指導法で大学選手権二連覇を果たす。2010年、日本ラグビーフットボール協会「コーチのコーチ」、指導者を指導する立場であるコーチングディレクターに就任。2012年より3期にわたりU20日本代表ヘッドコーチを経て、2016年には日本代表ヘッドコーチ代行も兼務。2014年、企業のリーダー育成トレーニングを行う株式会社チームボックス設立。2018年、コーチの学びの場を創出し促進するための団体、スポーツコーチングJapanを設立、代表理事を務める。
ほかに、一般社団法人日本ウィルチェアーラグビー連盟 副理事長 など。
著書に『新版リーダーシップからフォロワーシップへ カリスマリーダー不要の組織づくりとは』(CCCメディアハウス)など多数。
2020年、初の育児書『どんな個性も活きるスポーツ・ラグビーに学ぶ オフ・ザ・フィールドの子育て』を執筆。
◆『オフ・ザ・フィールドの子育て』の紹介◆
本書では、「多様性」というキーワードに着目し、それを独自に育んできたラグビーに学ぶことで、子どもたちに多様性を身につけてもらえる、子育てをよりよくできるのではないかと考えました。
教えてくれるのは、「コーチのコーチ」をしてきた“教え方のプロ"である中竹竜二氏。
さらに、花まる学習会を主宰する高濱正伸先生から、著者の考えに対して、
「子育て」や「学び」の観点から、適宜コメントを入れていただきました。
また、巻末にはお二人の対談を掲載し、ラグビーに学ぶことの意義についてご紹介しています。
改めて「ワンチーム」という言葉の意味や、ラグビーが大事にしてきた「オフ・ザ・フィールド」という考え方を知ることで、わが子の個性をどのように活かしたらよいかを考えるきっかけとし、わが子が実際に輝ける場所を親子で一緒に見つけてほしいと思います。
“サンドウィッチマン推薦! "
ラグビーがなかったら、いまの俺たちはいなかったと思う。
「中竹さん、ラグビーから学んだことは、今に活きています! 」