個性と障害の狭間で…
「これは個性なの? それとも障害なの?」
子どもの発達障害の場合、ひと目見てそれとわかるわけではないことが多く、個性なのか障害なのか、一体どこで線を引いたらよいのか……という保護者が少なくありません。
支援者も学校の先生も周囲の人たちも同じで、非常に判断を下しづらいお子さんがたくさんいることは事実です。
障害と個性を比較することは難しいのです。ひとつの理由として、「環境によって左右される側面がある」ことが挙げられます。
たとえば、片腕のない人は今の社会では「身体障害者」になります。でも、世界中の誰もが同じように片腕がないとしたら、それが「定型」になるため、その人は身体障害者にはなりません。
本人の状態は変わらないのに、まわりの環境が変わることによって扱われ方が変わってくる。
つまり、「定型」といわれる大勢の人と比べて「不自由だろう」という見方が成立する場合に、「障害者」とみなされるわけです。しかし、片腕を欠損していることはその人の個性を構成している要素の一部分でしかありません。
私たちは誰にでも、多かれ少なかれ凸凹があります。足が速い子もいれば遅い子もいるし、絵を描くのが好きな子もいれば嫌いな子もいます。現代社会で生活する中で、「足が速くて走るのが得意」という凸の部分や、「足が遅くて走るのが苦手」という凹の部分が大きなウェイトを占めることはないでしょう。
しかし、「コミュニケーションが苦手」という場合はどうでしょうか。それは社会生活において大きなリスクになってしまう可能性があります。そしてそれが、発達障害の子どもたちにとって避けて通ることのできない問題でもあるのです。
要するに、その人を形成している一部分、つまりその属性が社会生活において障害になるわけです。そして、「社会のサポートが必要」という線引きをしたときに、
◆自分の凹んだ部分をほかの能力で補うことができるのであれば「個性」
◆他人の助けや自分の持っている能力以外のものでも
フォローが必要なら「障害」
として、社会はわかりやすくくくっているーそんな風に私は考えています。
―『発達障害の女の子のお母さんが、早めに知っておきたい「47のルール」』はじめに より
◆本書の紹介◆
発達障害の女の子の保護者や支援者が気をつけるべき点や、
知っておくべき情報などを全6章、「47のルール」としてわかりやすくまとめたのが本書です。
1章 診断や医療機関の上手な使い方について
2章 親としての心構え、親のとるべき行動
3章 日常生活での支援と療育について
4章 健やかな生活を送るための学校選び
5章 女の子に必要な「学び」-思春期と性教育
6章 療育支援Q&A
「何度注意してもやめてくれません?」
「プライドが高くて注意するとパニックになります」
「新しい場所や新しいことが苦手です」など。
豊富な経験や、専門家からのアドバイスをもとに著者が作りあげてきた「発達障害の女の子たちが幸せに生きていくためのノウハウ」です。
ぜひご活用ください。
―藤原美保(Fujiwara Miho)
健康運動指導士、介護福祉士。株式会社スプレンドーレ代表。エアロビクス、ピラティス、ヨガインストラクター等フィットネスのインストラクターとしてスポーツクラブ、スポーツセンターでクラスを担当。発達障害のお子さんの運動指導の担当をきっかけに、彼らの身体使いの不器用さを目のあたりにし、何か手助けができないかと、感覚統合やコーディネーショントレーニングを学ぶ。その後、親の会から姿勢矯正指導を依頼され、定期的にクラスを開催。周囲の助けを受け、放課後等デイサービス施設「ルーチェ」を愛知県名古屋市に立ち上げる。
100組以上の発達障害の女の子とその保護者をサポートしてきた経験を踏まえ、実践の場からの声を届けるために、『発達障害の女の子のお母さんが、早めに知っておきたい「47のルール」』を執筆。