【出版のミライ⑲】飲食業界の生き残り戦略に学ぶ
本日のエッセンシャル出版社のミライ会議は、レッドオーシャンと言われている飲食業界の戦略を見て、出版業界に活かせることがないか、考えてみました。
こんにちは!エッセンシャル出版社の小林です。
私が、”本づくり”をしていく上で、日々、どのようなことを考え、どのような目的で本をつくっているか、記事風に残していきたいと思います。
【プロフィール】
大学卒業後、年中~小学校6年生までの子を対象とした塾、花まる学習会に入社。将来メシが食える大人になること、魅力的な人になるということを教育理念の事業で、授業や野外体験の引率などを行う。授業など子どもたちに関わる傍ら、広報部、講演会事業、ブロック責任者などあらゆる業務にも携わる。現在はエッセンシャル出版社で、本づくり、広報など、出版業に関わる全てに携わる。
エッセンシャル出版社: https://www.essential-p.com/
今年はコロナの影響があり、ウーバーイーツや出前館といったサービス、テイクアウトメニューの充実など飲食業界が一気に戦略を変えた一年とも言えそうです。
ウーバーイーツや出前というテイクアウトなどの仕組みを効果的に活用し、一つのキッチンで、「唐揚げ専門店」と「中華の専門店」と…など7つの業態のお店を運営して成功している飲食店もあります。
このやり方は、「飲食業界」の中でも、新たな状況を俯瞰しながら、様々な仕組みを活用した、上手なやり方だなと感じました。出前やウーバーイーツならば、キッチンをシェアすることが可能になるという目の付け所が、特に素晴らしいと思いました。
従来の飲食店というのは、「人」と「場」と「飲食物」、この3つが揃うものでした。しかし今は、これら1つずつに特化したサービスも始まっています。
「場」について言うと、例えば、夜景の見えるホテルなども一つの場です。
そこにシェフを読んだり、出前をしたりして、食べ物と場を別々に備えた食事もできるのです。
「人」について考えると、サービスを提供する人の価値としてある典型のひとつは、例えば、「スナック」や「バー」なのだと思います。人の魅力が介在し、コミュニケーションをとる場であるということが、そういうタイプの飲食店の価値であるならば、その価値を発揮できている限り、料理を運ぶ、片付けるといった単純労働的な「働き手」はほぼ不要であるとさえ言えるのかもしれません。
要するに、レストランAのライバルは、レストランBやレストランCだけではなく、例えば、特別な場や、魅力的なコミュニケーションなど、それぞれに特化したサービスも含まれるような時代になっているということです。
これは出版社にも当てはまることだと思います。
出版業を分解して考えてみる
たとえば、書籍のコンテンツ/書籍(紙も電子も)を買う場所/本を読む時間という3つに分解して考えてみます。
「書籍のコンテンツ」が、紙や電子以外に、変わる媒体と言えば、
ブログ(noteやアメブロなど)、動画(YouTubeやIGTV、ABEMAなど)、音声(ラジオ、Voicy、Himalaya、Podcastなど)などがあります。
「書籍を買う場所」としてメインだった書店の代わりで言えば、Amazonをはじめとするネット書店やメルカリなどの個人売買なども増えています。
「本を読むという時間」で言えば、動画を見る時間、音楽を聴く時間、ネット記事を読む時間、SNSをする時間などがライバルとして挙げられます。
出版社にとってのライバルは、他の出版社の書籍だけではないのです。
また、販売場所についても、書店だけでなくネット書店が台頭してきているのであれば、その営業戦略も変える必要があります。
新たな視点で言えば、例えば、出版社が、そして個人が、書店になるという流れも検討してもよいということです。
(弊社では、試みとして、Amazonにエッセンシャル出版社書店として自社書籍を出品しています)
飲食物×配達という業種が組み合わさり、売上を伸ばしているということがあるように、出版社も他のサービスに勝つことを考えるだけでなく、他業種との掛け合わせによって、ミライが開けてくる可能性もあります。
「便利・すぐに手元に届く」の真逆の価値を考える
一方で、「ネットで注文してすぐに届く」といった時代の本流の流れとは、真逆をいく仕組みも台頭してきています。
また、例えば、「賞味期限が20分しかない」というsonna bananaという飲み物や、「賞味期限が5分」のプリンなども出てきているようです。
こちらも、ある意味、真逆の戦略で注目を集めています。
同じように、「ほぼ日」の糸井重里さんもこのような発信の仕方を、「ほぼ日」の当初から取り入れていました。
「今日のダーリン」は、バックナンバーやアーカイブを設けておりません。基本的にその日しか読めない読みものとなっておりますのでご了承ください。
https://www.1101.com/sat_darling/
インターネットは、ある意味、「アーカイブできること」が価値であるはずなのに、逆に、「その日にしか読めない」という価値を提供しているのです。その真逆の視点は、とても面白いと思います。
また、タピオカが人気のあった理由のひとつに、「お店に並んでいる間にコミュニケーションがとれること」というものをあげている記者の方がいらっしゃいました。つまり、このスピードの時代に、「すぐには手に入らない」からこその価値です。この仮説があっているかどうかは別として、混んでいる人気店に入りたくなるという人の心理もありますし、女子高生が並んでいる間にコミュニケーションがとれる価値も、タピオカにはあったというのは頷けます。(私の時代は、手ごろな価格のマックがコミュニケーションの場所でした)
普通だったら、「すぐに」サービスを届けた方がいいと思われるのに、ユーザーやファンの心理としては、「1か月待ちのサービスをようやく受けられた」とか「2,3か月待ってでも、商品を手に入れることで喜びや達成感が増した」といった価値を感じるという心理もあります。
人には、真逆の心理が「メビウス∞」的に存在しているのでしょう。
『いま、必要なのは、もっと<遅い>インターネット』という、スピード重視をしてきた社会が抱える弊害(世界の分断、排外主義の台頭など…)と、じっくりと思考するためには?ということを考えるための本も出てきています。
本当にますます激動の時代であり、面白い時代になってきています。
エッセンシャル出版社としては、様々な他業種にも学び、常に時流を俯瞰しながら、真逆の視点を持ち、どちらも中途半端になるのではなく、真逆の視点で、両軸にそれぞれ尖った戦略を立てていきたいと考えています。