完全失業率の低下は「改善」と言えるか?
12月25日付の各紙に前月に比べて完全失業率の改善したことを報じる記事がありました。
以前、完全失業率の上昇について備考録のような記事を書きました。今回は完全失業率の低下を「改善」と表現しても良いのか、書き留めておきたいと思います。
まず、完全失業率の定義について簡単に確認をしておきます。
完全失業率=完全失業者÷労働力人口
ただし、
労働力人口=就業者+完全失業者
完全失業者=求職活動中の者
12月25日に更新された、総務省のWebページに掲載されている労働力基本調査の要約を確認すると、次のことが読み取れます。
就業者の減少量は、対前年同月比で10月は93万人だが、11月は55万人。
完全失業者の増加量は、対前年同月比で10月は51万人だが、11月は44万人。
以上より、今回の完全失業率の低下の背景には、就業者数の減少量と完全失業者の増加量が低い水準に抑制されたことが挙げられます。引用した記事では、この結果を「改善」として報じています。
ただし、完全失業率の低下は経済状態の改善を必ずしも意味しません。
完全失業者をやや詳しく言うと「調査期間中に仕事をしていない者のうち、就業可能であり、かつ就業を希望していて、求職活動中の人数」です。これは「完全失業者数が減った」と言うとき、それは就職したのか、それとも求職活動を止めたのかは分からないことを意味します。
求職活動を止めた理由が、企業への就職以外の収入を得たためであれば問題ないでしょう。ただし、収入源は労働所得なのに労働意欲を失ってしまい求職活動を止めたとしたら問題です。したがって、完全失業率の低下は人々の経済状態の改善を必ず保証するものではありません。
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