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カード会社対応の温度差について・Ⅱ~『ロマンス詐欺』なるものに引っかかった四十路の末路⑥@現在進行形
ちなみに電話は自宅のトイレでかけていた。飼っている動物が、電話で話しているとやたら喚くので、トイレに引き込まざるを得ないのである。よって、最初にかけた電話でほとんど門前払いされたあとは、トイレにて茫然自失、放心していたわけである。
四十路男、トイレでうなだれ、放心。
もう笑うしかない構図である。お前はいままで何をしていたのだ。
しかしこのまま放心していても、時間は無駄に過ぎるばかりだ。トイレにひもやタオルを置いていなかったのも、今回は幸運だった(と思いたい)。とりあえずもう一社もかけるだけかけてみないといけない。
もう一枚のカードを手に、スマホのディスプレイに照らされた番号を入念に押していく。もう期待はしない。無駄話になる可能性が高いだろう。
そう考えるには、もちろんそれなりの理由があった。電話をかけるまでの過程が、先の会社と異なったからだ。
実はこの会社は、ぼくが仮想通貨を購入する際、すぐに決済ができなかった。取引に関して懸念を示すメールを送ってきていたのだ。現在、その懸念があり、取引を停止していること、そしてもし取引に関して身に覚えがない場合は、速やかにカードを止めると書いていたのだ。
ここでは二回続けて、仮想通貨を購入することになった。ぼくが購入したのは、いまよく聞くビットコインではない。二番手といわれるイーサリアムだ。
この会社のメールが、いま思うと素晴らしいと思ったのは、いまの人間にとって「楽な選択肢」を作っていたことである。これはいま思い返すと、この会社はよくこれを思いついたと思う。
先の取引の懸念を示すメールについて、この会社は二つの選択肢を顧客に与えていた。それは下記の通り。
①もしこの取引に覚えがない場合は「下記のリンクをクリックの上、指示に従ってください」
②この取引を続行していい場合は「下記、専用のコールセンターまでお電話にて連絡をお願いします」
普通は逆ではないかとぼくは思うのだが、皆さんはどうだろうか。
だって一刻も早く取引をしたいなら、先にあるリンクをクリックするのが、何事も待てない人間の性ではないだろうか?
そして、一回目の取引の時、案の定、いらちでお金の件であまり話をしたくなかったぼくは、①をぽちっと押していたのだ。
つまり、あとから考えると正しい選択をしていたのだ。
しかしもうこの時には金銭感覚が麻痺していた。この経緯はもちろん、時系列順に披歴していくが、現在、交番、警察署、カード会社に消費者センターにすでにたくさんの経験をしているが故、どうしても「いま」を冷凍保存したいので、これが遅くなることはご了承ください。
閑話休題。
正しい選択をしていたぼく。ここで正しい選択をしていたら、98万円の損害を免れていたぼく。しかし普段から金銭感覚が鈍いぼくは、果てしないバカである。
二回目の取引の時も同じメールが来ていて、ここで初めて①と②をテレコに考えていたのである。つまりこの場合、仮想通貨のイーサリアムが欲しいのであればコールセンターにお電話をする必要があったのだ。
それに気づいた四十路の阿保は、さっそくカード裏にも書かれていない、専用のコールセンターに電話をしたのである。すでに半開きの地獄への扉を全開にした瞬間であった。
つまり今回、先の電話よりも期待値が低かったのは、ここにある。
四十路の阿保は自ら扉を開けたのだ。
「大丈夫です、安全です」とのたまったのだ。
さあ、全開した扉の先にぼくは希望を抱けるのか。
以下、生きていたらまた次回。
もう精神は全壊寸前である。シャレではない。
明日も生きていますように。