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34『投資ロマンス詐欺』に引っかかり、約500万借金した四十路の末路@現在進行形-詐欺師の手口・Ⅳ-

 (承前)

 何を血迷っているのか、いましがた、犯人と痴話喧嘩なるものをしていた。
 犯人は「私はあなたのお金をとっていない」という。しかし私は、お金そのものが消えてしまったという。

 確かに犯人は「私のお金は一銭も取っていない」。
 しかし「借金をしてあれやこれやに投資しろ」とせっついたのは事実である。

 ぼくがバカだったのは、もう疑いようのない事実だが、やり取りをしていて、一部の刑事が気にしていた「相手も実は被害者ではないのか??」説は、依然、燻っている。

 どうやら彼も「bitforx」なるサイトに入れなくなったようだ。
 しかし自作自演の可能性も高い。だから信じられない。
 とはいえ、いまなお連絡が取れる真意は測りかねる。

 唯一、ここでいえることは、「bitforx」を信じるなということくらいだろう。

 では、この前まで書いた続き。

 とりあえずその犯人なる相手からは、いかんせん投資できる額が少ない以上、利益がどうしても少ない。だからこそ、もっと運用資金があると、もっと利益が得られるよと、耳元でそっと囁くように、ラインで話をしてきた。

 この頃の話題は、もっぱら投資だった。
 相手の意図としては、投資の話ばかりして、ぼくの思考回路を麻痺させるのが目的だったのだろう。

 とにかく、株よりは安全であり、投資信託よりは遥かに儲かるという話はよくしていた。そして相手は韓国の大学で経済学を勉強していたからこそ、相場感覚は通常の人より把握はできているから、安心してついてきてほしいと強く説かれた。

 ぼくは情に弱い。
 よって、ぼくはこの相手の情に絆された。

 とりあえずぼくが使えるお金。
 使ったとして損をしても、それなりに納得できる貯蓄。
 そもそもぼく、家を買ったばかりなので、貯金はそんなに残っていない。

 そういうわけで、ぼくが手をつけたのは、旅行用の積立で毎月5000円ずつ積み立てていた投資信託だった。甥っ子が中学校を卒業したら、北海道に連れて行ってあげようと貯めていたお金だった。

 少し話が少し逸れるが、ぼくは甥っ子にお年玉をあげたことがない。その代わり、子供のあいだに色々なところに連れだすようにしていた。名古屋、東京、岡山、広島、岐阜、犬山、……まあ、いろいろ連れて行った。しかしさすがに中学生になると、昔みたいに「おっちゃーん」と寄ってこなくなった。ほんとうに寄ってこられなくなる前に、飛行機で札幌か沖縄に連れて行ってあげようと考えていた。

 そのためのお金に、ぼくは手をつけてしまった。
 運用益があれば、それは回収されると考えたからだ。

 その額、22万円……。
 いま、そのお金は、もうどこにあるのかも判らない。
 詐欺師の手元にあるか、マネーロンダリングに使われたか……。

 そしてそのことを相手に伝えると、コインチェックを通じて、全額イーサリアムを購入するように指示を受けた。

 全額……。
 貧乏性のぼくには、これは、ありきたりの言葉で言うなら、清水の舞台から飛び降りるくらいの覚悟が必要だった。

 なぜなら家の次の高い買い物は、不動産取得税の30万円だったからだ。
 それに次ぐ買い物。

 怖い。

 うん、ここで引き返しておけばよかった。
 やっぱりできない。
 ラインの向こうの人間とは会ったことがないのだが、「ごめんちゃい。アンニョン」とか言って、尻尾を巻いて逃げればよかったのだ。

 しかし、ぼくは清水の舞台から飛び降りてしまった。
 そして飛び降りたことで、その後の感覚を麻痺させることとなってしまった。

 そしてここで、犯人から甘い誘いがやってくる。
 そしてこれこそが、のちのちぼくが自滅に追いやられる元凶である。


さあさあ、みんな、お金を勝ち取るどー


bitforxのサポートセンターは、なぜかgignexx.top。最高に使えないサイト。当たり前だよね、偽サイトだもの。

 要は15000ドルを入金したら、報奨金として1588ドルもらえるという、超お得な制度である。もっとも偽サイトなので、見せかけの数字であるが、そんなことも判らないぼくは、このあやしい誘いに乗ってしまったのである。

 こうしてぼくは、どんどん地獄への鉱脈を掘り進めていくのである。

 明日も生きていますように。
 いまは毎月、27日、月末、10日が怖い。
 ほんとうに。

 次回へ続く。

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