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⑰『投資ロマンス詐欺』に引っかかり、約500万借金した四十路の末路@現在進行形-消費者センターに駆けこむ前日譚-

 (承前)

 刑事さんに「悪いのはお金を騙し取った犯人であって、あなたでは決してない」と力説はされたものの、これを書きながらやはりそれは少し違うのではないかと思えてならない。

 今回の場合は、欲をかいたぼく自身に非があるように思える。
 そして貧乏だった時代に思いを馳せる。
 大学でも周りはみんな親が学費を出しているのに、自分だけ奨学金。これさえなければ、今回「奨学金が返せるかも」なんて甘い期待はそもそも抱かずに済んだ。もし仮に別の欲にまみれても、ぼくは誰にも知られることなく個人再生までならもっていけただろう。

 ところが奨学金は、ぼくが借りた当時は記憶では人的保障しかなく、つまりは保証人が要る。個人再生にしろ、自己破産にしても、これだけは支払いを免れることができない。

 今まであまたの危機を乗り越えてきたのも、ひとえに保証人に迷惑をかけないためであった。……しかし、もう疲れた。

 閑話休題。
 
 とりあえずこういう詐欺に遭いました、お金の支払いとかなんとかなりませんか? ……というのは、果たしてどこで相談すればいいのだろうか。あまりよく判っていないので、刑事さんには去り際に尋ねてみた。似た事象に対応しているのであれば、どこに相談したらいいか、把握はされていると考えてのことだ。

「〇×に消費者センターがあるから、そこに行くと、何かしらの相談は受け付けてもらえるはず」とのこと。しかもぼくの住んでいる自治体は、ほかのところもそうかもしれないけれど、予約は不要。これはありがたい。

 消費者センターには明日行くことにしようと決めた。
 何事も早く進めるに越したことはない。

 しかし……。
 欲まみれになっちまったこのおバカは、なんとしてでも詐欺師にとられたお金を取り戻したいという、その思いから抜けだすことはできなかった。

 まあ、500万だもん。

 そこでしてみたのが、スマホでだまし取られたお金を取り返すことをしている会社があるかどうか、調べてみることだった。

「ロマンス詐欺,投資詐欺、お金を取り返す」……そんなワードを入力して、ポチッと検索。するとあら不思議、出るわ出るわ、いろんな弁護士事務所……。

 詐欺ってこんなにみんなかかるものなのね。

 でも全部東京じゃん……orz
 ただよくよく読むと、ラインで相談可とか、電話で相談可とか、相談は無料とか、詐欺師に引っかかった人たちを誘惑するようにしか思えない文言がたくさん……。

 もはやいまとなっては何を信じたらいいのかさえ、わからなくなっているたまぞう。

 血迷ったあげく、一番誠実そうな一社にとりあえず相談依頼のメールを入れてみた。回収を専門に行っている事務所だった。それ以外の業務はしていないようで、ぼくはそこに魅力を感じた。手広く業務をしていたとなると、いまはやりの脱毛サロンの倒産とかではないけれど、お金をむしり取るいいカモにされそうな危惧が少しあったからだ。
 あとはその時考えたらいい。もうこのとき、ぼくはある意味、怖いものなんかなくなっていた。

 その夜、消費者センターに行く準備をしていたところ、くだんの事務所から連絡があった。取り急ぎ、取引記録があるのであれば、一度見てみたいので、送ってもらえないかということだった。

 ぼくは言われるがまま、警察署に提出した書類と、取引で使ったスクリーンショットを抜粋して事務所に送信した。

 そこで、はたと黒い疑念が胸の中を渦巻くのだった。

 この向こう側にいる人は、ほんとうに味方なのだろうか。
 こいつらも、実は弱みに付け込む詐欺師ではないのだろうか。

 もう疑心暗鬼である。
 しかし弁護士が詐欺師だと、これは困る。
 弁護士費用がどのタイミングで発生するのかわからないけれど、自己破産か個人再生に現実味を帯びているぼくとしてみては、そうなった後にさらに詐欺まがいのお金をむしり取られることだけは、ほんとうに勘弁してほしいと切実に願っている。

 そしてその後、もう一度、連絡が。

「拝見した限り、至急を要する案件なので、電話で話したい。ついては都合のいい時間を教えてほしい」とのこと。明日は消費者センターに行くから、明後日のお昼ということで、とりあえずそこは話はまとめた。

 ついでだから、消費者センターにこのことも聞いておこうと考えたのだ。

 そして夜が明け、消費者センターに行く日となった。
 現実の今日、ぼくは法テラスに相談に行く日だ。
 自己破産を勧められたら、ほんとうに死を考えるかもしれない。
 いまの家だけ、これだけはどうか残してほしい。
 いまのぼくの願いは、もはやそれだけである。

 明日も生きていますように。

 

 

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