【NCPR編】出生直後のチェックポイント:生まれたらまず赤ん坊を見よ
NCPRでは「赤ちゃんが生まれたら3つのことを確認」となっています。出生直後のチェックポイントは①早産児、②弱い呼吸・啼泣、③筋緊張低下の3つです。それによりルーチンケアとなるか、蘇生の初期処置に入るかが決まります。
3つのチェックポイントはいずれも生まれた赤ん坊を見て評価します。えっ、週数は見るものじゃない、って?いえいえ、そんなことはありません。あらかじめ聞いていた推定週数でもよいでしょうが、熟練者は生まれた児の実際の週数も"見て"いるのです。たとえば40週と聞いていたお産で、生まれた子が胎脂べったり、みずみずしく毛穴も白くプツプツと胎脂が詰まっていて、すこし浮腫も見られている。そんな時には週数違いです。36週くらいだと思って蘇生が必要になるかもしれないという心構えができます。また、その後に未熟性に伴う問題がでてくるかもしれないという視点で見ることができます。人間予想外のことに対応するのはとても大変ですが、予想が立っていれば、何かあった場合の対応がとても楽になります。②の項目は呼吸と啼泣ですが、児が生まれたらまず声を聴いておきます。第一啼泣があり、その後も続いている場合には安心して落ち着いて対応できます。啼泣が聞こえた際にゴロゴロうがいのような声がしている場合には吸引をすぐに行えるように待ち構えておきます。もしも啼泣の声が聞こえない場合や、弱くて続かない場合には吸引および人工呼吸を行うつもりで待ち構えておきます。娩出の後のごく短時間でその判断を行っておくことで、その後の処置がスムーズにできるようになります。そしてその後に大事なのは呼吸の観察です。啼泣ではありません。病院のお産で見ることは通常ありませんが、助産院のお産では仮死があるわけでもなく、生まれた後に啼泣することもなく母にカンガルーケアをしてもらいながら静かに穏やかに呼吸を確立させるお子さんもいます。赤ん坊が泣くのはストレスに対する応答ですから、母子ともにストレスから解放されてゆっくりと出産の時間を味わうことのできる、そんなお産もあるのです。医師頭でエビデンスガチガチの人はそういう世界もあるということを信じず否定しますが、実際に目の当たりにするとお産に対する見方が変わりますよ。逆に泣いていたとしても、突然呼吸を止めてしまうこともあります。新生児の呼吸は血液のpHと二酸化炭素分圧(PaCO2)により制御されていますので、啼泣でPaCO2が低下すると無呼吸を起こしたり低換気を起こしたりすることがあるのです。泣いていれば大丈夫というわけではないのが新生児蘇生の注意点です。蘇生中は児から"目を離さず"呼吸をしっかりと観察すること、どうしても目を離さなくてはならない時でも"耳を離さない"ようにしましょう。気が付いたら静かになっていて息を止めていたということはしばしば起こりえます。体をふく、タオルを取り換える、モニターをつける、臍処置をする等々、色々やらなければならいことが多いとはいえ、蘇生中には児の状態に集中して、目・耳・心を離してはなりません。泣いているかどうかよりも、しっかりと呼吸ができているかを見る眼が大事になります。それがないと、必要のない処置を行ってしまったり、必要な処置が遅れてしまったりします。③の筋緊張も直感的な見た目の判断です。正期産児は上肢をWの形、下肢はMの形に屈曲させた姿勢を保持できるのが「筋緊張が良い」状態です。この姿勢を保持できない場合には「筋緊張が低い」という判断になります。例えば下肢は軽く膝立てしていても、上肢は伸ばしてあまり動かさず肘をついている姿勢は筋緊張は低下している姿勢になります。
3つのチェックポイントは「週数」「呼吸」「筋緊張」です。合い言葉として覚えましょう。啼泣は出生直後は良いですが、啼泣を意識してしまうと、ちゃんと呼吸しているのに不要な刺激をしたり、泣ききった後に呼吸を止めているのに気がつかない場合がありますので、蘇生が始まった後は「啼泣」は忘れましょう。あくまでも「呼吸」です。啼泣を目標にしてはいけないことは次の蘇生の初期処置のところでまた触れることになります。
【極論かましてよかですか】
生まれたらまず赤ん坊をみる
合い言葉は「週数」「呼吸」「筋緊張」
元気に泣いていてもいきなり呼吸を止めるのが新生児