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【監査法人の本質思考-第2回】総括分析の本質

【全体分析とは?】

Mパートナー:総括分析見してくれるか?

期末監査も佳境に差し掛かり、チームメンバーの疲労もピークに。講評会が明日のタイミングでMパートナーが朝いちで会議室に来た。開口一番、全体分析をみしてほしいと。
入社5年目で、初めてインチャージを務める谷川は、あたふたする。わかっていたし、構えてはいたけど、やはりレビューを受けるのは、緊張感がある。まして、Mパートナーのレビューを受けるのは初めてで、どんな鋭い突っ込みが来るのかがわからない怖さがある。
疲れから眠たさがあったが、一気に吹き飛んだ。

総括分析(全体分析)とは、監査上、必須の調書で、会社の財務諸表を総括的な観点で分析する調書だ。通常、インチャージが作成し、マネジャー、パートナー、審査員のレビューを受ける。会社全体の動きを把握するために肝となる監査手続き。年間の監査を通じて得た企業やビジネスの理解、また経済環境や事業環境の変化を反映させる。基本的には、前年比較の増減分析、対予算分析で、増減値が一定の閾値を超えたものや監査人の判断によって、どこまで深堀りをするかを決める。

ある意味、一番、センスを問われる監査手続き。そして、増減分析から、異常な増減や説明がつかない項目が出てくると、財務諸表が間違っていることに気づくし、場合によっては、不正な会計が行われている可能性がある。

過去の経験からいうと、会計処理の誤りは、全体分析で発見されることが結構ある。例えば、連結仕訳の誤りとかは、個別仕訳単位ではわからないことが、全体分析で前期比較をしたときに、増減が大きすぎる、もしくは、動くべき増減が入っていない、などの数値の動きにより、深堀りし、発見される。しかも全体分析で発見される誤りは、金額影響がでかい。なので、各監査チームともに全体分析について深度を高めるような工夫を凝らす。

そういう経緯もあって、まずは全体分析を確認するパートナーが多い。その中に、今年の監査トピックスが詰まっているからだ。

※監査チームの設定や登場人物については、本連載シリーズの第1回をご参考ください。


【やり直し】

谷川IC:はい、こちらです(よかった、昨日ほぼ徹夜で仕上げた甲斐があった。)。マネジャー確認が一部未了ですが、概ね完了しています。

Mパートナー:(3分ほど見て)ん~、書いてることはわかるけど、全体分析はこういうことじゃない。今年は何が起きたんや?

谷川IC:はい、今年は、前年比増収で、背景には消費者の需要が好調であることがあげられます。新型ウィルス感染症の影響は概ね終息し、消費者は感染症前のレベルの消費行動に戻りました。一方で原材料価格の高騰によって、利益は横ばいとなっています。在庫は増加傾向にあります。海外からの原材料輸入がサプライチェーンの乱れによって遅れていることもあり、完成品の製造が遅れていることが主な要因です。

Mパートナー:了解。そのストーリーが、財務諸表に数値として表れているんやったら、全体感はつながるからわかるな。ただ、調書をみてもそれがわからんわ。財務諸表分析っていうのは、ドリルダウンで行うんやで。ボトムアップじゃない。今の調書はボトムアップで積み上げた構造になっている。そこを直してほしい。

例えば、売上を見たら、いきなり各事業部の分析があって、それぞれの事業部の傾向について事細かに書いてくれてる。それはそれで有用やけど、パッと見てもどれが今回のキーかはわからへん。飲料事業でいうと、従来品、スポーツ系、健康品を見たときに、明らかに、健康品が今回のトピックとなるべき。やけど、中身をみたら、それぞれ3つともに同じようなボリュームで、細かいところにこだわっている。ここを改善していかなあかんな。

谷川IC:承知しました。調書の作り方について修正するようにします。

Mパートナー:たぶん、わかってないな。調書の作り方の話をしてるんとちゃうで、考え方の話をしてるんやけど、まあええわ、その辺は、後藤さんからの指導に任せるとしよか。講評メモみして。

その後、Mパートナーは、講評メモについても本質を突く指摘をして、さっそうと会議室を後にした。

【財務諸表分析の本質】

谷川IC:今日はありがとうございました。財務諸表分析は宿題がでてしまいました。正直、Mさんが言ってたことを理解しきれていなくてですね・・・。

後藤EM:今日はMさんとの話を主導してくれてありがとう。Mさんは、総括分析については特にこだわりがあって、私もこっぴどく指導されました。今回の調書ももっと直したかったけど、正直、時間の兼ね合いもあるし直しきれていなかったのは申し訳なかったね。でも、しっかりと直していこうか。

一番のポイントは、

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