「自社に合うターゲット」の解像度を上げることが、採用成功の第一歩
先日、「いい人」を採用することが一番大切、というnoteを書きました。その「いい人」とは「利他的な人」を再定義したわけですが、採用において大切なことは、自分たちが採用すべきターゲットがどんな人なのかの解像度を上げることです。
よく「いい人が欲しい」「優秀な人が欲しい」というオーダーをいただきますが、自社にとっての「いい人」「優秀な人」を定義されていないことがほとんどです。
世の中のいう「いい人」「優秀な人」が欲しいのでは、レッドオーシャンの中で多くの企業は負けてしまいます。
『ゼロからわかる新卒エンジニアマニュアル』からみる、求職者の解像度の上げ方
『ゼロからわかる新卒エンジニアマニュアル』で、どういう新卒を採用すべきかセグメントされていたので、その分類を踏まえて自社に合う人をどう採用すべきかを考えたいと思います。
同書では、新卒エンジニア採用では情報系の学生を採用すべきとし、その学生を技術レベルで以下4つの分類に分けています。
なるほど。確かに、この分類は有効です。エンジニアに限らず、おおむね上位20%が優秀層であり、優秀層のなかにも濃淡が存在します。
これを理解せずに、「とりあえず情報系の学生を採用する」という方針を取っている企業では、「いい人」は採用できないでしょう。
そして、さらにこの4つの分類に、志向性による2つの分類を掛け算しています。
同書では「授業+αグループ」×「ユーザー志向」の学生を、DXを実現したい事業会社は採用すべきとしています。
中途採用でもターゲットの志向性を考えることが大切
詳細は同書に譲りますが、中途採用でも似たような分類が可能です。中途採用のほうが組み合わせが複雑――とくに技術レベルが複雑なので端折ります。しかし、志向性はシンプルです。
ユーザー志向:世の中に新しい価値を提供したい
技術志向:新しい技術を身につけ、難しいことに挑戦したい
安定志向:給与や条件、待遇を上げたい
ユーザー志向は新卒も中途も、ベンチャー企業やWebサービス企業に多く在籍しています。サービスを作り、価値を提供することにやりがいを感じているエンジニアです。SIerにも存在しますが、最終的には自社サービスを持っている企業に転職しているような気がしています。
技術志向はエンジニアリングが好き、新しい技術を身につけて、自分のスキルを上げたいエンジニアです。わかりやすく言えば、コードを書いていたいタイプですね。
安定志向はザ・サラリーマン志向とも言いかえられます。昨今のエンジニア人気は安定志向タイプの人に支えられているのではと邪推するほど、エンジニア=手に職、高給取り、(会社が潰れても)安定を志向しています。そのため、SESや自社サービスなどビジネス自体には興味がありません。
今、エンジニアで増えているのは安定志向です。もちろん、安定するために最低限のスキルを身につけますが、新卒の「授業のみグループ」と同じで、自主的には動かないグループです。
もしかして、企業が考える「自社の魅力」って見当違い?
給与や条件・待遇は他社に負けないレベルが必要であることは前提とし、「ユーザー志向」「技術志向」のエンジニアを、どう採用するかがポイントでしょう。
そこで目を向けるべきは、「自社の魅力」とはなにか。もっと言えば、他社に勝てるものはなにかです。もし、「技術力」というのであれば、相手(求職者)に言語化して伝えられなければなりません。
そして、魅力が「求職者の求めるもの」と合致しているのか。
いくら「この扇風機は、職人歴50年のベテランが手作業でつくったものです」といっても売れないのは必至でしょう。なぜなら、扇風機に価値を見出す人が少ないからです。
一方で羽のない扇風機は人気なのはユーザーのニーズに合致しているからです。
採用も同じで、いくら技術力が高いと喧伝しても、「うちは30年以上COBOL一筋でやってきた技術会社です」という会社に入りたいエンジニアはいないでしょう。
自社が思う魅力と、求職者が求めるものがズレている企業は少なくありません。求職者の志向性を捉え直し、自分たちの魅力を見つめ直し、どういう求職者を採用すべきか、問い直すことが中途採用の成功の第一歩といえるでしょう。
採用の解像度を上げると、ターゲットが求めるものが、今、自社で打ち出している魅力と異なる可能性があります。エンジニア採用は年々、難易度を上げています。dodaによると採用倍率は10倍を超えているそうです。
改めて「自社に合うターゲット」を考え直し、「自社の魅力」とはなにかを考えるだけで、応募すら来なかった企業のエンジニア採用が変わるかもしれません。