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ジョブ型雇用で万事解決、しない。

安易なリストラは自社の首を絞めるだけです。なぜならば、これまで年功序列・終身雇用・メンバーシップ型で運営されていた企業がいきなり実力主義・ジョブ型になっても社員がついてこないからです。

結果として、下記の記事のように優秀な社員から辞めていき、そうでない社員は会社にしがみつくという構図になります。

最近、ジョブ型雇用が注目され、もてはやされていますが、私は本当の意味で日本にジョブ型雇用が根付くことはない。あるいは根付くまで10年20年以上かかると考えています。

■雇用のあり方が日本と異なるアメリカ・ヨーロッパ

理由は簡単で、アメリカやヨーロッパ(特に西欧)と組織や仕事のあり方やマインドが違うからです。

例えばヨーロッパ(フランスやドイツ)は完全な横スライド転職です。しかも、同じ営業でもインサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスは別の職種として扱われます。そのため、インサイドセールスの転職先は(業界は違えど)インサイドセールスしかありません。

このような状況だからジョブ型雇用になるのは当たり前です。日本の総合職のように、営業が次の日から経理になるなどということは起こりません。業務とスキルが細分化され、空いたポジションには同じスキルを持った人しか入れないため、明確なジョブディスクリプションが必要となります。

一方、アメリカは職種感の移動が緩やかですが、日本のように正社員の雇用が守られておらず、雇用が流動的です。そのため雇用者側は自分が何ができるかを明確にするので、その仕事で何を求められているのかがわからないと採用マッチングができません。

■日本のムラ社会、欧米の契約社会

そもそも、欧米は契約を前提とした社会です。すべては契約に基づいて実行され、契約に記載されていない役務に責任はありません。キリスト教の旧約聖書・新約聖書も神様との契約です(旧い契約と新しい契約)。

神様とも契約するようなメンタリティーをもった人たちが、仕事で明文化し契約しないわけがありません。

一方の日本はムラ社会です。契約よりも空気や人間関係を重んじます。もう少し言えば義理・人情の世界ですね。仕事でも同じです。特に営業に求められるのは、顧客との人間関係を構築することです。知らない営業よりも馴染みの営業に発注することは、よく行われています。

古いと言われながらも、いまだ飲みニケーションが残っているのは、人間関係で仕事をする文化が残っているからでしょう。

■それぞれのメリット・デメリットを考える

そのような風土のなかでジョブ型採用は浸透するのか。私ははなはだ疑問です。

しかし、ジョブ型雇用を否定しているわけではありません。ジョブ型雇用・メンバーシップ型雇用にはそれぞれメリット・デメリットがあります。ITエンジニアを始めとする技術職はジョブ型雇用に適していると思う一方、経理や総務、経営企画など管理本部のポジション、販売スタッフ、営業などのフロントはメンバーシップ型がよいと考えています。

言い方が悪いですが、職場の空気感を読むのが大切であったり、ロイヤリティ(忠誠心)が求められたりするポジションはメンバーシップ型がよいと言えます。

「この制度を取り入れたら、万事解決する」ことはありません。風土・文化や企業・組織の特徴に合わせて、最適なものを採用することが企業が成長するカギです。経営陣は自分たちの組織やメンバーをよく見て、何が最適かを考えることが重要です。

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似非教授
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