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「商品・サービス開発プロジェクト」最終発表会レポート/後編
「これからの地域を支えるデザイン経営」を本気で学ぶ場所として、2023年にスタートした越前鯖江デザイン経営スクール。2024年3月2日(土)に開催された「商品・サービス開発プロジェクト」の最終発表会の様子をお届けします。
【前編はこちら】
展示会場の様子
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最終発表会場のものづくりキャンパス1階にて、成果展示が行われました。来場者は4つのブースを自由に回り、プロジェクトメンバーからチームの取り組みや商品説明、完成までのエピソードなどを聞きました。
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4チームの展示は3月9日まで行われました。各チームの工夫や熱量が感じられる展示でした。
アフタートーク①「参加して、どうでした?」
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4チームによるプレゼンが終了し、アフタートークに移ります。1つ目のアフタートークは、「参加して、どうでした?」というテーマ。 参加事業者4社にプロジェクトの感想やエピソードをざっくばらんにお話しいただきました。
参加事業者4社
・沢正眼鏡
・曽明漆器店
・小柳箪笥店
・越前セラミカ
モデレーター
・時岡 壮太(株式会社デキタ代表)
・森 一貴(シェアハウス家主)
ーー プロジェクトを終えての感想を教えてください。
沢正眼鏡:半年間本当に楽しかったです。経営者は孤独になりがちなので、チームメンバーに伴走してもらえたことが本当にありがたかったなと。産業と地域のどちらも大切にできる仕組みができてよかったです。
曽明漆器店:チームメンバーの皆さんに丁寧にヒアリングいただき、当店や地域の課題が明確になりました。ビジョンが定まるとプロジェクトの方向性がまとまりやすくなった印象です。チームメンバーが漆器の専門知識や技術を学び、実際に商品を販売していただくことで私たちも刺激になりました。(3代目・富代さん)
小柳箪笥店:さまざまな知見をもったチームメンバーと議論を深めるうちに、家族経営の会社ではこれまで見えてこなかった思いが見えてきて、最終的に3つのプロジェクトが生まれました。後継ぎとして20代のうちに参加できてよかったです。(5代目・勇貴さん)
越前セラミカ:チームメンバーには、私がやりたいことや目指す思いに共感していただきました。熱意とスキルがあるメンバーばかりで、それぞれの得意分野が活きたいいプロジェクトでした。
講師の森さんは、最終プレゼンで発表された成果だけでなく、半年間のプロセス自体に価値があったのだといいます。「チーム一丸となって取り組むためには、事業者はチームメンバーに情報を共有しなければなりません。そこで自社にビジョンがないことに気づいたり、自分にない視点を得られたり。参加者も事業者も、各々がたくさんのことを得られたと思います」。
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ーー 半年間のプロジェクトを経て、会社の売上は変化しそうですか?
沢正眼鏡:シェアハウスの運営は社長にも妻にも言わずに発表してしまったのですが、売上はあとからついてくるというマインドでいます。お金はもちろん稼ぎますが、お金だけじゃない豊かさを大切にしたいです。
曽明漆器店:当社はオンライン販売がメインだったので、マーケットの開催は初めての挑戦でした。メンバーのみなさんに助けていただき、たくさんのお客さまの笑顔を見ることができました。売上が増える可能性が見えてきたのはスクールのおかげです。(4代目・晴奈さん)
小柳箪笥店:売上は絶対に伸びると思います。創業者の気持ちは3代目4代目になると薄れていきますが、「自分はこうしたい!」と息子がコミットしてくれたことが1番の収穫かもしれません。(4代目:範和さん)
越前セラミカ:瓦のベンチは自治体やキャンプ場など販売先の候補があるので、売上は増える予定です。
ーー 親子で参加されてみていかがでしたか?
小柳箪笥店:息子に世間を広く見てほしいという気持ちがあったので、息子が経営者としての理念を見つけてくれたのがよかったですね。(4代目・範和さん)
もともと親子で話す機会は多くて、ビジョンを話し合うことに恥ずかしさはなかったです。今までふわっとしていた「会社を経営する」という自覚が明確になりました。(5代目・勇貴さん)
曽明漆器店:もともと娘だけが参加する予定でしたが、私も参加する流れに。会社のビジョンや方向性を決めるうえで、娘に今まで話していなかったことも話しました。(3代目・富代さん)
話さなくてもわかっているだろうと思っていたことが、意見をすり合わせたら意外と違っていたことにびっくりしました。以前より親子喧嘩をしなくなりましたね。(4代目・晴奈さん)
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ーー 従業員や社内の変化はありましたか?
沢正眼鏡:社内ミーティングを初開催して、今まで意見を言いたくても言える環境がなかったのかもしれないと気づきました。従業員の声を拾えていなかったのは経営者としての落ち度です。会社をいい方向に変えられるという確信が持てました。
越前セラミカ:従業員にテラゾーベンチの図面を見せたら、すぐに試作品を作ってくれました。今まで見えていなかった従業員のよさに改めて気づくきっかけにもなりました。
ーー 最後に、来年度のプロジェクトに参加する企業へメッセージをお願いします。
沢正眼鏡:来年も当社が参加したいくらいおすすめのプロジェクトです。当社のように知名度がなく自分たちではどうしていいかわからず困っている事業者がたくさんいると思うので、そういった会社にもぜひ参加してほしいです。
曽明漆器店:他社にプロジェクトの話をしたら、参加してみたいという声をいただきました。プロジェクトを通して、みんなでつくる楽しさや大変さを知ることができ、社外の人と協働することへの苦手意識が克服できました。事業で悩んでいる方にすすめたいです。
小柳箪笥店:これから自分で情報発信して商品を売りたい事業者や、若い後継者がいる会社におすすめしたいです。
越前セラミカ:ものづくり以外の会社でやっても面白いかもしれませんね。中小企業の経営課題がいい方向に転がるプロジェクトです。
すべての発表がおわり、事業者の皆さんはホッとした様子。半年間お疲れさまでした!
アフタートーク②「結局、デザイン経営って?」
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最後のプログラムは、講師4名とゲストの井上岳一さん、永田宙郷さんによるアフタートーク。「結局、デザイン経営って?」というテーマでディスカッションを行いました。
【ゲスト】
◯井上 岳一 氏|(株)日本総合研究所創発戦略センター エクスパート
1969年神奈川県藤沢市生まれ。林野庁、Cassina IXCを経て2003年から日本総合研究所。豊かな山水の恵みと人の知恵・技術を生かした多様で持続可能な地域社会をつくることをミッションに研究・実践活動に従事。著書に『日本列島回復論』、共著書に『MaaS』等がある。内閣府規制改革推進会議専門委員。国土交通省国土審議会専門部会委員。武蔵野美術大学特別講師・客員研究員。
◯永田 宙郷 氏|TIMELESS 代表
1978年福岡生まれ。金沢美術工芸大学卒業後、金沢21世紀美術館、EXS Inc.(株式会社イクス)を経て現職。「時間を超えることができる本質的なものづくり」をテーマに、数々の事業戦略策定や商品開発を行う。伝統工芸から最先端技術まで必要に応じたビジネス再構築やプランニングに多く携わる。
まずは、ゲスト2名による最終発表の総括。「4事業者の発表を聞いて、部外者(スクールメンバー)が入ることの意味を強く感じました。いろいろな視点を持った人たちを会社に招き入れることで、経営のデザインに結びついたと思います」と井上さん。
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永田さんは、「事業者がこれまでやってきたこととこれからやりたいことを棚卸しする機会を持てたのがよかったと思います。そもそも経営というのは、柱を立てて紐をわたして自分の場所を確認すること。つまり、会社の道義を通し、それに基づいて行動に移すことなんです」と経営の意味を問い直します。
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「講師たちもデザイン経営の定義に悩みながらプロジェクトを進めていました。デザインスクールでも経営スクールでもなく、『デザイン経営スクール』というやや曖昧なスクール名にしたことで、経営やデザインに限らず広く議論できたように思います」と講師の新山さんは振り返ります。
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また、永田さんはデザインの定義の変化について言及。「デザインという言葉の定義は、『最適解を選ぶ』に変わってきていると感じます。ちゃんとした選択をできるよう努力することがいいデザインではないでしょうか」。
さらに、井上さんはデザイナーの存在意義について話します。「会社が社会で生き残る方法を探索し続けるときに、失敗しても諦めないマインドを持つことこそがデザイン思考です。そのときに背中を押してくれるのがデザイナーの役割だと思います」。
また、やらないことのリスクに関する話も。「失敗するリスクを恐れて現状維持を選ばれる経営者が多いですが、やらなかったときに数年後どんなリスクが起きるのかまで考えられるようになれば、社会は変わると思います」と永田さん。
最後は講師陣によるクロージング。来年度は行政職員にもチームに入ってほしいという2期に向けた意気込みも聞かれました。これにて、5時間におよぶ最終発表会が終了!
商品・サービス開発プロジェクトが終了!
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半年間にわたるプロジェクトが無事終了。越前鯖江エリアの4事業者と全国から集まった16名のメンバーが出会い、産地の未来を切り開く数々の商品やしかけが生み出されました。「これからの地域を支えるデザイン経営」を学んだメンバーたちの今後の活躍が楽しみです。2024年度も開催予定の「商品・サービス開発プロジェクト」2期にもぜひご期待ください!
(文:ふるかわともか)