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わたしを作る世界で一番一生懸命で純粋な料理
不覚にも美容院で涙してしまった
土井善晴先生の本「一汁一菜でよいという提案」。
好きでフォローしている方がおすすめされていたので読もうとアマゾンレビューを見ると、泣きましたと書かれていて、「えっ、お料理関係の本で涙する?」と思ったけれど、美容院で髪を染めてもらいながら、まんまと泣いた。
「家庭料理が、いつもいつもご馳走である必要も、いつもいつもおいしい必要もないのです。」
目からウロコだった。
私は一人暮らしだし、家族のためにごはんを作らないといけないわけではない。
でもやっぱり食事の支度をめんどうにいつも思っていた。
しかも作るなら美味しくないといけないと思って、レシピを見て、しっかり測って作っていた。
もう
「TO DO」
「タスク」
という感じ。
メキシコにはコンビニはあるけれど、おいしいお惣菜などが売られていることはない。しんどくても自分で作らないと食べたいものがない。
旅行前日には帰ってきてからのためにごはんを作り置きしておこうと、夜中まで何品も料理をしていた。
あれもしないと、これも準備しないと、あー、もう、ごはんも作らないと。
しっかりした料理を作って一人前、
この歳で料理くらいちゃちゃっとできんと。
なぞの執念、呪縛。
だから最近そんなに料理はがんばるものじゃないと学んで、楽に感じていたけれど、美味しくなくてもいいなんて、さらに肩の力が抜けた。
「人間の暮らしで一番大切なことは、『一生懸命生活すること』です。料理の上手・下手、器用・不器用、要領の良さでも悪さでもないと思います。一生懸命したことは、いちばん純粋なことです。そして純粋であることはもっとも美しく、尊いことです。それは必ず子どもたちの心に強く残るものだと信じています。」
ちょっと話は広がってしまうけれど、日本の母のごはんを思い出した。
「お母さんのごはんが一番おいしい」
何回言ったかわからないこのセリフ。
海外に住むと「日本食って、何が一番美味しいの?」と到底一言では返せない質問をされる。
お寿司もたまには食べるし、焼き肉も好きやし、ラーメンもおいしいけど、
お母さんのごはんが一番好き。
いつもそう答えていた。
特にどれ?と言われても、どれもこれも好きで総合的に好きとしか言いようがない。
チキンのタルタルソースも
かす汁も
ほうれんそうのおひたしも
白菜のたいたんも
ベーコンのケチャップスパゲッティも。
土井先生の奥さまは撮影で作ったご馳走がたくさんあっても、子どもさんのために取り分けることはされず、「ただいま」の声を聞いてからご自身の料理を作られていたそう。
「それがご馳走であるとか簡単なものであるとか、味付けなんてことも問題ではありません。妻がその場で娘のために作る料理の音を、娘は制服を着替えるあいだに聞いたでしょう。匂いを嗅いだでしょう。母親が台所で料理をする気配を感じているのです。まさに料理は愛情です。どれだけ家に帰ってきてホッとしていることでしょうか。どれだけ安心できたことでしょうか。愛されていることを全身で感じているのです。だから子どもにとって、親の料理は特別なものなのです。」
だからか。
だから「お母さんのごはんが一番美味しい」んだ。
「わっ、今日唐揚げなん!」
「もう揚がるし、さき手洗ってきーや」
「お父さん、もうちょっと待ってや」
「これお皿に入れて」
こうしたこと会話、匂い、音、温度。
「ひじ、つかんと食べや」
「おはし、ちゃんと持って」
「ご飯残したらあかんで」
「先にお仏壇にあげてきてな」
こんなしつけ、学び、成長、風習。
全部ひっくるめて料理であり、食事であり、愛情だ。
なんて愛情の中で私たちは育ててもらったんやろう。
じわーって涙が出る。
でも一時帰国時に母が白米を残してたので、
私:「ごはんまだ残ってるで」
母:「いや、もうお腹いっぱいやねん」
私:「あんなにいつも、『ご飯粒残したらあかんで』って言ってたやん」
母:「えっそんなん言ってた?」
うそーー、いつも言ってたやん・・・!
みたいなこともあって、少なからず驚いたけど、いつ帰ってもお母さんのごはんは楽しみ。
「台所が作る安心」
ほんとうにそうだなと思う。
お母さんのごはん食べに帰りたいな。
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