【光の波長を超えた観察】見えないものを見る技術:暗視野顕微鏡とは
見えないもの見る方法。
そんなものがあったら、嬉しいですよね。
顕微鏡の世界では、そんなことが当たり前のように行われているんです。昔では考えられなかった小さなものを観察する技術は日々進歩し今では当たり前になっているんです。
たとえば光学顕微鏡を使って観察していても倍率を上げていくと途中でぼやけて見えなくなってしまいます。
この顕微鏡が持つどれだけ小さいものを見ることができるかを分解能と言ったりしますが、光には波長という限界があります※
いきなり科学的な話になってしまいましたが、簡単に言えば光学顕微鏡にも限界はあるというわけです。
そんな初期の顕微鏡(明視野観察)の限界を超えるべく開発されたのが暗視野顕微鏡と呼ばれる手法です。
今回はそんな暗視野顕微鏡について紹介したいと思います。
暗視野顕微鏡の原理
前回、紹介した明視野観察ではサンプルを通った光をレンズを使って拡大するといいましたが、これは直接光を観察しているといいます。一方、今回観察したいのはその一般的な手法よりも小さなもの見る方法です。
そもそもレンズでの拡大の限界を超えてより小さなものを見る方法などあるのでしょうか?
それがこの暗視野観察です。その原理を語弊を恐れずざっくりと紹介していきましょう。
映画館などの暗い空間で空中に浮遊している埃を見たことがあるという方はいるのではないでしょうか。暗い部屋で懐中電灯なんかを使っても宙に浮かぶ埃を見ることができると思います。
一方で、空中にはそれなりに埃が浮遊しているはずなのに、普段の環境ではそれを見ることがないですよね。色の問題なのかもしれませんが、そのサイズもまた小さくて人間の目で見るにはよ~く観察しないと見えてこないかもしれません。
それではなぜ暗い部屋では見ることができるのでしょうか?
実は、この暗い部屋の埃というのは、ちょっと特殊な観察方法をしているというのが答えです。
このちょっと特殊な観察方法というのがまさに暗視野観察になります。
通常、私たちは物体に当たって反射した光を見ていますが、暗い部屋で埃を見つけるときというのは、埃にあたって散乱した光を見ています。
明るい部屋で埃から直接飛んでくる光よりも、暗い部屋で埃で散乱した光の方が私たちは観察しやすいということです。
この暗い場所で、サンプルに散乱した光を観察するというのが顕微鏡における暗視野観察です。
直接光をレンズで拡大するのではなく、サンプルにあって散乱する、本来捨てられるはずだった光をレンズで拡大して観察することにより、明視野観察では見れなかったサイズの構造を観察することができるようになります。
暗視野観察の注意すべき点は、あくまでサンプルに当たってボヤっと散乱した光を見ているということです。例えば埃(糸くず)の長さは大体わかっても、その太さは実物よりも大きく見えてしまうように、実際のサイズを調べるというのが少し難しいというところがあります。
ただ、そのような注意点を踏まえれば、普通の明視野観察では見れなかったものが見えるようになるというメリットがあります。
ちなみに、この暗視野観察、今では当たり前の観察手法になっていますが、ノーベル賞を受賞したほどの大発見だったようです。それぐらいインパクトの大きい顕微鏡技術だったというわけですね。
最後に
今回は明視野観察と比較して、小さなものが見える暗視野観察について紹介しました。
散乱した光を観察するというちょっとした工夫で新しい発見ができるというのは面白いな~と感じました。そして、顕微鏡についている暗視野モードがいったい何を示しているのかというのも改めて勉強になりましたね。
※分解能とは科学的には異なる位置にある2点を測定できる距離のことをいいます。例えば10μmの位置にある2つの物体が重ならずに、分離してあることを確かめられれば、10μmの分解能はあると言えます。
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