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意外と知らない光学顕微鏡の世界

小さいものを見たいとき、研究者や技術者は顕微鏡を使います。

私生活では使うことはありませんが、おそらく多くの方が小中学校の実験で顕微鏡を覗いたことがあるのではないでしょうか。

人類の探求心を満たし、新たな科学技術の発展に貢献する顕微鏡ですが、世の中には様々な種類の顕微鏡があることを知っていますか?

顕微鏡とは

顕微鏡については、冒頭でも書いたように小さなものを見る道具として、みなさん知っていると思いますが、その種類については知られていませんよね。

顕微鏡には様々な種類があり、その方法によって名前が異なります。

最も一般的なものが私たちの目に見える光(可視光)を使って観察する光学顕微鏡です。これは中学校や高校の理科室に置いてあることが多いですね。とても一般的であるものの、その更なる分類については意外と知られていないと思います。

この光学顕微鏡の奥深い世界については、次のセクションで紹介しましょう。

光といってもその波長によっては私たちの目に見える可視光からX線まで幅広い種類があります。私たちの体の中を見るレントゲンなどがX線を使うわかりやすい例ですね。

引用元:環境省

このX線を使って小さなものを観察するのがX線顕微鏡です。物質の中身まで見通すことができるため、光学顕微鏡では見ることのできなかったものを容易に観察することができたりします。

一方で、X線を制御するためのレンズを作るのが非常に難しいため、光学顕微鏡ほどの多種多様な発展が進んでいないのもまた現状です。逆に言えば今後の発展を期待したい分野でもありますね。

続いて、電子を使って観察するのが電子顕微鏡です。電子顕微鏡には大きく分けて2種類あり、走査型電子顕微鏡と透過型電子顕微鏡という装置があります。さすがに中高に置いてあるような代物ではありませんが、大学や企業の研究所などは何台か保有していると思います。

走査型電子顕微鏡についてはこちらの記事で紹介しているので、是非ご覧ください。

他にもイオンを飛ばしてものを見る走査型イオン顕微鏡や小さな針で表面をなぞって凹凸を調べる走査型プローブ顕微鏡といったものもあります。

このように光学顕微鏡から始まった顕微鏡の世界はもはや鏡を使わないナノの世界まで到達していると言えますね。

さて、話を少し戻して、光学顕微鏡にフォーカスを当てたいと思います。多くの方は一般的な顕微鏡でしょ!知っているよと思われるかもしれませんが、その世界は非常に複雑で今もなお大学などで研究されている領域なんです。

ということで、何回かに分けて光学顕微鏡について紹介していきたいと思います。

光学顕微鏡とは

今回から何回かにわたって紹介するのはまさに私たちが目で観測できる光を使って結像する光学顕微鏡です。

引用元:高分子学会

光学顕微鏡にはいくつかの種類があります。

  • 明視野顕微鏡

  • 暗視野顕微鏡

  • 位相差顕微鏡

  • 偏光顕微鏡

  • 微分干渉顕微鏡

  • 蛍光顕微鏡

  • 超解像顕微鏡

  • 共焦点レーザー顕微鏡※

いずれも可視光域の光を利用して画像を構築する手法です。中には偏光といって人間の目では感知できないような光の特徴を画像にするものもありますが、基本的には私たちの目で見える赤から紫の光を使っているわけです。

そして科学の発展とともに様々な原理を応用して、見えにくいものや普通に見たら見えないものを見えるようにしているというのが面白いところです。

こう見ると、いかに人類が顕微鏡の研究に時間を注いできたかがわかりますよね。

光学顕微鏡の原理

一般的な光学顕微鏡は明視野観察と呼ばれます。これはおそらく多くの方が知っている顕微鏡です。

明視野顕微鏡ではレンズを使って試料に照射した光を拡大して私たちの目に見せてくれます。

レンズの光学系は面白い物理の話ですが、ここでは難しくなってしまうので割愛して、簡単に紹介したいと思います。

私たちがものを見るときに大事にするのがコントラストです。簡単に言えば画像の明るさのことですね。光学顕微鏡の場合だと、明るさに加えて色も大事になってきます。ざっくりとは、この2つが顕微鏡像を作っているといってもいいでしょう。

通常は試料やサンプルと呼ばれますが、観察対象の裏側から入った光はサンプルの色や屈折率の違いにより、レンズに入って拡大される像が変わります。まさにそれは私たちの目でサンプルを見たときに見たかったものになるわけです。

いわば、最も一般的な結像方法である明視野観察では、中学校の時に習ったレンズによる屈折により、サンプルを通った光の情報を拡大して届けてくれるというわけです。

また、光学顕微鏡には複数の配置があります。
わかりやすい例として、透過による観察方法を上げましたが、光をサンプルの裏からではなく上から当てて反射光を見る方法もあります。これを落射と呼びます。

引用元:オリンパス

何やら聞きなれない表現かもしれませんが、ハーフミラーを使って光の道を上手に制御しているだけです。

はじめに考えた人はすごいな~と思いますが、今となっては当たり前の光学系になっていますね。

最後に

今回は、光学顕微鏡の種類と最も一般的な顕微鏡の原理を紹介しました。これは最もわかりやすい例になりますが、この原理をベースに研究は進められ、さらなる進化を見せています。

次回は、普通の明視野観察では見ることのできないような小さな構造を調べる方法として生み出された暗視野観察について紹介したいと思います。

※レーザー顕微鏡はレーザー光を使っていますが、原理的には一般的な光学顕微鏡とは異なります。

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