99.9%のマイクロ波を吸収するステルスセラミックス
みなさんはマイクロ波というと何を想像するでしょうか
おそらくなんか聞いたことがあるな~という人は電子レンジだと思います。
電子レンジは英語ではマイクロウェイブオーブンといわれ、その名の通りマイクロ波を食材にあてることで、食材内部の水分子を振動させて温めることができるんです。
このマイクロ波の応用は当然他にもあって、飛行機などを検知するレーダーなどもマイクロ波を使っています。レーダーは電波(マイクロ波)を飛ばし、それが飛行機に当たって跳ね返ってきたものを検知することで飛行機をはじめとする物体の位置を知ることができる装置です。
そんなレーダーに感知されるのを避けるために開発されたのがステルス機能です。ステルス機能はレーダーの電波が当たった時に真っ直ぐ跳ね返らないようにする技術です。そうすることで、レーダーはうまく検知することができず、レーダーからしたらあたかも透明になってしまうんですね。
つまり、ステルス戦闘機においてマイクロ波を吸収するというのは非常に需要な特徴になるわけです。
今回はそんなマイクロ波を99.9%も吸収する材料を紹介します。
マイクロ波吸収材料
そもそもマイクロ波とは何でしょうか?
マイクロ波とは電波の一種で、言ってしまえば光やX線の親戚のようなものです。私たちが目にする光(可視光)との違いは、波の波長だけです。
つまり、このマイクロ波は光と同じ電磁波であるため、物質の電気的・磁気的特性がとても重要になってくるようです。
吸収原理の細かい話はかなり難しくなってしまうので、ここではどのようにしてマイクロ波吸収材料を作るのかについて、それは一体どんな特徴を持っているのかについて紹介したいと思います。
まず、この吸収材料の母体はアルミナという物質です。アルミナというと聞きなれない方も多いと思いますが、酸化アルミニウムのことで、私たちが普段目にするアルミ缶の原料になる材料です。
このアルミナには穴のたくさん開いた多孔質のアルミナを使うようです。この中にCoFe2O4というセラミックスのナノ粒子をたくさん入れてやります。つまり、アルミナの中に目に見えない小さな粒がたくさんくっついているようなものを作るんですね。
なぜ、こんなことをするのかという疑問が生まれますが、これはナノ粒子とアルミナがそれぞれ異なる原理で電磁波を吸収する特性を持っており、その能力でマイクロ波を吸収してやるということになります。
さらに、このとき重要になるのは、アルミナとナノ粒子の重量比です。研究グループがいろいろな比率で試しに作ってみたところ、アルミナ60%、ナノ粒子40%の比率が最もよくマイクロ波を吸収したようです。
とはいえ、これでもまだまだ99.9%には近づきません。さらなる工夫が必要なんです。
さらに効率よくマイクロ波を吸収させるために研究グループはアルミナーナノ粒子複合体を炭素でできた2次元のシートであるグラフェンという物質の上に乗せました。これがさらなる吸収効率を生む工夫だそうです。
ちなみに、このグラフェンの量も大事で、アルミナーナノ粒子複合体とグラフェンが9:1の割合の時に最高の性能を示しました。グラフェンを多めに入れた方がいいような気もしますが、多く入れすぎると逆に効率が落ちてしまうそうです。
ちなみに、マイクロ波を吸収するといっても全ての電波を吸収できるわけではありません。というのも、物質が吸収できる電磁波の波長というのはある程度決まっています。今回作成された材料はXバンド領域と呼ばれる、8 - 12GHz(波長だと25 - 37mm)の電波を99.9%吸収することができました。
どうして吸収メカニズムを説明しなかったのか
その理由は私自身完全に理解できなかったからなんです…まあ適当に言うことはできなくはないけれど、自身のない科学を紹介してしまうと勘違いでは済まない誤解を生んでしまうと思い割愛しました。
なぜ、そんなに難しいのかというところなんですが、こちらの画像を見てもらうとわかると思います。
アルミナ、ナノ粒子、グラフェンが特定の比率で複合されたマイクロ波吸収材料ですが、それぞれが各々の特徴的な手段で電磁波を吸収するからなんです。そこには分極や共鳴、散乱などの電磁波が吸収される要因が書かれています。
要はこれらの電磁気的な特徴が合わさった結果、99.9%のマイクロ波が吸収できるようになったというわけですね。
最後に
今回は99.9%のマイクロ波を吸収する材料について紹介しました。
やはり、全ての電波を吸収するというのは難しいもので、それでも99.9%の吸収というのは非常に効率の高いものだといえるでしょう。
このような基礎研究が進むことで、面白いステルス機能が開発されると面白いですね。
参考文献
CoFe2O4 Nanoparticles Grown within Porous Al2O3 and Immobilized on Graphene Nanosheets: A Hierarchical Nanocomposite for Broadband Microwave Absorption