折り紙の技術で人工眼球をつくる
人間の目というのはとても不思議で複雑な構造を持っています。
カメラの検出器(ディテクター)は平面ですが、人間の目は球体をしていますよね。
実はこの球体の眼球というのは平面の検出器よりも優れた特性を持っているようで、研究者たちはそんな高性能な目を目指すべく日夜研究を続けていますんです。
今回は、そんな高性能を目指すべく、半球形の形をした人工眼球(検出器) を簡単に作れる技術について紹介します。
まるでメカメカしい人工眼球のようなものが出てくるので興味がある方は是非見ていってください。
折り紙×眼球模倣=高性能検出器
人工的に作られた眼球といっても、人工臓器のようなものではありません。あくまで、シリコンでできた検出器を目のように半球型に形作ったものですが、まずは見てもらった方がわかりやすいと思います。
まるでロボットの目に使われるかのようなSF感が漂っていますよね。
そしてこの半球型の検出器の面白いところは、折り紙の考え方を使っているという点なんです。
折り紙といえば日本の伝統文化ですが、最近では最先端の研究にも使われており、注目されている技術になります。
この折り紙の考え方を応用し、1つ1つのシリコン検出器を下のような展開図で配置してやれば、それを折り曲げると半球型になるという算段です。くわえて、この形をどこかで見たことがありませんか?
そうです。サッカーボールです。
サッカーボールは正五角形と正六角形が組み合わさることでつくられる準正三十二面体と呼ばれる構造なんですね。今回紹介してる半球型ディテクターはより複雑な構造であることがわかりますが、これにより滑らかな球面を作りあげているとも言えます。
簡単に作るための工夫
どうしてこれまでこのような半球型の検出器が作られてこなかったのでしょうか?
それは単純に作るのが容易ではないという点が挙げられます。当然、研究レベルでは作れても大量生産が求められるとやはり簡単に作れる技術がないと一般的に普及はしませんよね。
今回、研究グループではこの半球状の検出器を簡単に作る方法を模索しました。
まず初めに、1つ1つのシリコン検出器は平面上でポリイミドというフィルム上の決められた位置に配置されます。
それを半球状の方に入れてやるだけです。折り紙の要領でポリイミドフィルムは折り目が付き、半球状の形にきれいに収まります。
これで大量生産も可能になるというわけですね。
ちなみに、この方に押しあてて半球状の人工眼球を作るというのは、逆に昆虫の複眼を作る技術にも応用することができるようです。こちらはまだまだ改良が必要なようですが、同じ手法で昆虫の目も模倣できるというのは面白い技術ですよね。
半球状の人工眼球の性能
半球状にすることによって得られるメリットは非常に多いようで、無限遠の被写界深度、広視野角、低収差など、最新のカメラでは実現できない視覚記録を可能にすることができるそうです。
私自身は検出器について素人なので、どこまで可能なのかはわかりませんが、単純に視野角が広がるというのはいくつかの論文で見たことがありますね。
さらに、この半球状の人工眼球をいろいろ傾けて画像を取得すると下図のように見えるようです。
最後に
今回は、半球状の人工眼球について紹介しました。
産業を目の前にすると多くの基礎研究は太刀打ちできなくなってしまいますが、そんな大きな打破するかのような研究でしたね。
このコンセプトはとてもシンプルなので、他にも近い研究が多くあるかもしれません。また似たような研究を見つけたら紹介したいと思います。
参考文献
Origami silicon optoelectronics for hemispherical electronic eye systems
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