
【お菓子の科学】ショートケーキは泡からできてる
泡というと石鹸や洗剤の泡を思い浮かべる方が多いかもしれません。
では、料理における泡といったら何を思い浮かべますか?
実は、一度は食べたことのある生クリームやスポンジケーキは泡に関係する食べ物なんです。
どこが泡なんだ?ケーキは泡ではないだろう!と思う方も多いでしょう。
今回はそんな謎も含めて全部紹介していきます。
私たちは泡を食べている
まず泡とは何でしょう?
空気の粒が液体の膜に囲まれている状態と言えるかもしれません。
もう少し広く考えると必ずしも空気でなくても炭酸ガスなんかでもいいでしょう。要は気体の粒が液体に囲まれている状態が泡と言えます。
科学的には気体が液体に包まれている状態を指しコロイドの一種とされます。
ここでは科学的な厳密さは置いておいて、皆さんが思いつく一般的な泡を思い浮かべてもらえば大丈夫です。
身近なところではビールやせっけんなどがわかりやすいでしょう。

では、ショートケーキも泡からできていると言われたらどうでしょうか。さすがに泡ではないと感じる人が多いと思います。たしかに厳密に言えば泡の部分はごく一部ですが、実はショートケーキの大部分の形成には泡が重要な働きをしているんです。
ここからは生クリームとスポンジでできたショートケーキを例に泡との関係性を見ていきましょう。
生クリームもスポンジケーキも泡からできている?
まず、わかりやすい生クリームから考えてみましょう。
市販で売っている液体の生クリームは乳脂肪が水中にプカプカと分散して浮いている状態です。
牛乳も同様に、水の中に小さな脂肪(油)の粒が分散しており、この油を集めて濃度を上げたものが生クリームです。
ショートケーキをはじめとするケーキに塗る生クリームは液体の生クリームに砂糖を加えて氷を入れたボウルの中で冷やしながら泡立てます。
このとき生クリーム内の油の粒を形成する高分子(リン脂質やタンパク質)が泡の周りに集まり、泡を安定させることができます。
こちらは想像しやすいように、液体の成分の中に無数の気泡を閉じ込めた泡の状態であることがわかるでしょう。
ふんわり甘い生クリームを食べているとき、私たちは泡を味わっているといっても過言ではありません。
ちなみに生クリームをビンに入れて振り続けるとバターができます。これもコロイド科学の面白い話なんですが、また別の機会に紹介しましょう。

さて、お次はケーキの土台となるスポンジ部分です。科学的に言ってもスポンジは泡ではないんですが、このスポンジ形成には泡が欠かせないというのは事実です。
スポンジケーキを作る際には、卵白を泡立て砂糖と卵黄、薄力粉を加えて加熱します。このとき重要になってくるのが卵白を泡立てたメレンゲです。卵白に含まれるタンパク質の成分が小さな空気の粒を閉じ込める働きをするため、きめ細やか泡を作ることができます。

そしてスポンジケーキを膨らむ理由は、メレンゲに含まれる気泡がオーブンの熱で膨張するためなんです。気泡の周りには卵と小麦粉からできたベースがありますよね。加熱によって気泡が膨らみ、全体として膨張しながら、タンパク質の凝固により固体のスポンジが形成されます。
想像するとわかるように、卵と小麦粉と砂糖を混ぜただけで加熱すると分量にもよりますが、クッキーができます。当たり前ですが、スポンジケーキはクッキーと比べると気泡の領域が多く、ふわふわ感も段違いですよね。
ちなみにスポンジケーキの作り方にはいろいろあるため、今回はメレンゲを使った場合の一例を紹介しています。
このように見てみると、ショートケーキをはじめとするケーキは生クリームとメレンゲからできたスポンジという2種類の泡を食べているといえるでしょう。
今後ケーキを食べるときはその気泡の数や大きさと食感について考えてみると面白いかもしれません。
最後に
今回は泡という物理的な観点からショートケーキを見てみるというあまり馴染みのないことをしてみました。
お菓子を物理的に観察すると変人かと思われそうですが、身近な科学を知れるいいきっかけにもなると思います。
泡の科学は非常に面白いため、興味がある方は調べてみてください!