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ログラインの作り方①・物語や小説の書き方を上達させたいなら多分これが一番速いと思います

このコラムでは、物語およびログラインの定義と、作者オススメのログラインの作り方2種について解説しています。

物語や小説の上達のためには、ログラインを作り、それを基に短編小説を書くのが一番速いです。そこで、ログラインの作り方だけでなく、実は小説に欠かせない「お楽しみシーン」や、短編小説の文字数の目安についても説明しています。さらに、その先の長編小説の書き方についても少し触れています。



ログラインとは

ログラインとは「物語を一文で説明したもの」を指します。プレミスとも呼ばれます。上記のnoteでは、このログラインを「誰がどんな状況で何をするか」と説明しています。

物語の構造

物語は、出来事の「変化」と、それらの出来事の「因果」関係から構成されます。つまり「AがBになった。なぜならC」が物語の最小構造です。

実は、物語を作る上では、上記のログラインにおける「何をするか」よりも、「なぜそうなったか」の方が重要なのです。なぜなら、物語には出来事の「連続性」が必要であり、それを形作る上で用いられるのが因果関係による「論理的構造」だからです。

さらに、人気作を作る上では、「心変わり」つまり「情動の変化」を描くことが重要になってきます。なぜなら、多くの読者は、世界観の設定や物語の展開そのものよりも、キャラの感情の移り変わりを楽しみに物語を読むからです。作者よりの人は、この辺りを忘れがちなんですよね……(自戒)

ログラインの基本型

では、物語を作る際に使えるログライン、さらに言うなら「あらすじ」の作り方を紹介しましょう。それは、(基本形の場合)次の7つの要素から構成されます。

① 人物
② 状況
③ 障害
④ ナラティブクエスチョン
⑤ 解答
⑥ 理由
⑦ 結末

この内「②④⑤⑥は必須項目、①は推奨項目、③⑦は任意項目(あってもなくてもよい、ない場合もよくある)」です。

これを、当てはめた文章は次のようになります。

①(人物)が、②(状況)。③しかし、(障害)。④さて、(ナラティブクエスチョン)?⑤(解答)。⑥なぜなら、(理由)からだ。⑦結局、(結末)。

穴埋め箇所を埋めていけば、その時点で面白い小説かが分かります。特に、①~④までの「セットアップ」が面白いかが、読者が続きを読みたくなるかを判断する目安として重宝します。なぜなら、一般的な物語の「あらすじ」はここまでしか書かないからです。一方、残りの⑤~⑦までの「ペイオフ」は、読者が物語に納得できるかに関わってきます。

では、次にそれぞれの要素について説明していきましょう。

① 人物

この物語における中心人物、つまり主人公です。その特徴を書きます。これは推奨項目です。なぜなら、なくてもいいけど、あった方が格段に書きやすく読みやすいからです。

多くの読者は、小説を読むときに主人公に注目します。もし群像劇を書くとしても、シークエンスごとの主人公っぽい人はいた方がいいでしょう。

② 状況

主人公のいる状況です。世界観や設定に関わってきます。「人物」と「状況」をミスマッチにすることが、面白いログラインを作る一つのコツです。

③ 障害

後述する「ナラティブクエスチョン」が解決しなさそうな原因です。典型パターンとして、次の4つが挙げられます。

:最も典型的な障害。壁を壊せば、解決できる。(例:敵対者)
:破壊はできなくても、枷を外したり逃げ切ったりすれば、解決できる。(例:呪いや追跡者)
:つまりはハンデや縛り。ナラティブクエスチョンの解決に制限がある。だからといって、荷を壊したり捨てたりしたらハッピーエンドにならない。(例:守るべき幼い子どもや主人公のポリシー)
:主人公にとって不明な障害がある。罠の発見や解明は必ずしも必要ではないが、避ける必要がある。(例:トラップや誘惑)

これらは、障害が主人公に対して「積極的か・消極的か」か、そして主人公が障害に対して「闘争的か・逃走的か」によって分類できます。

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「障害」は任意項目です。もし「人物と状況」の時点で内容が面白ければ、障害がなくても物語は成立します。

④ ナラティブクエスチョン

「ナラティブクエスチョン」とは、物語の序盤に提起され、終盤に解決される問いのことです。「セントラルクエスチョン」や「ストーリークエスチョン」とも呼ばれ、主に物語の「目的」がここに該当します。

例えば、ワンピースなら「主人公のルフィは、海賊王になれるか?」、HUNTER×HUNTERなら「主人公のゴンは、父親のジンに会えるか?」、ドラゴンボールなら「主人公の孫悟空は、ドラゴンボールを7つ揃えることができるか?」、呪術廻戦なら「主人公の虎杖裕二は、正しい死を迎えることができるか?」、「刃牙」なら「主人公の範馬刃牙は、父親の範馬勇次郎を倒すことができるか?」などが該当します。

原則として、ナラティブクエスチョンが解決したら、物語はすぐさま終局に向かいます。なので、もし物語を続けたい場合は、「もうちょっとだけ続くんじゃ」で、新しいナラティブクエスチョンを提起しましょう。

ここで強く推奨したいことがあります。それは「ナラティブクエスチョンは必ず選択式にする」ことです。なぜなら、その方が後の「解答」項目で候補を網羅して列挙でき、よりログラインを作りやすくできるからです。定番は上記のナラティブクエスチョンのような「Yesか?Noか?」で答えられる二択問題です。ミステリーやラブコメなら「Aか?Bか?」のような選択肢になるでしょう。

例えば、ラブコメならナラティブクエスチョンで「主人公は誰と結ばれるのか?」とは書かず、「主人公と結ばれるのは五つ子の内、誰か?」とか、「主人公が結ばれるのは"理系"か"文系"か?」と書きましょう。もちろん後から「"体育会系"や"医学部"や"先生"」などの選択肢を増やしても大丈夫です。

⑤ 解答

ナラティブクエスチョンの解答です。

これはナラティブクエスチョンが「Yesか?Noか?」の場合は次の6種類のパターンがあります(アキネーターを参考にしました)。

① はい
② 部分的にそう
③ どちらでもない
④ そうでもない
⑤ いいえ
⑥ 分からない

もし「Aか?Bか?」の二択問題なら5種類となります。

① Aだ
② Bだ
③ AもBもだ
④ AでもBでもない
⑤ 分からない

ただし、選択肢として「分からない」は非推奨です。なぜなら、もし読者に考えさせる結末にしたい場合も、作者としては全てのありうる可能性を考慮して、その上で良さそうな結末を描いた方がいいからです。たしかに「リドル・ストーリー」と呼ばれる作品群は、セントラルクエスチョンに対して答えを出さずに終わります。しかしながら、実際に描くかは別として、ちゃんと答えを出しておきましょう。

⑥ 理由

ナラティブクエスチョンの理由です。ここが、物語の結末に納得ができるかの最重要ポイントです。先のログラインの3要素の内「何をするか(行動)」はここに入ることが多いです。

この「理由」は、問題を抱えている人物自身のアクションによって解決することが望ましいです。なぜなら、その方が物語が面白くなるからです。もし必要なら、前の要素に理由への布石を書き加えておきましょう。

⑦ 結末

ナラティブクエスチョンの定義上、物語はそれが解決した時点で終わっても構いません。そのため、結末は必須項目ではなく、任意項目です。

例えば「千と千尋の神隠し」の主人公・千尋が持つナラティブクエスチョンは「元の世界に帰れるか?」です。そして、元の世界に帰ってすぐに物語は終わり、その後彼女がどうなったかは描かれません。

しかし、クライマックスを経たあとの、エピローグが書きたいあるいは読みたい人は多くいるでしょう。その場合は(あまり長くならない程度に)結末を入れます。

ログラインの具体例

分かりやすく童話を例にして、ログラインを書いてみました。

桃太郎
①桃から生まれた桃太郎が、②鬼を退治するために旅に出た。③しかし、鬼はとても強い。④さて、桃太郎は鬼を退治することができるか?⑤はい。⑥なぜなら、犬と猿、雉の三匹を、旅の道中でお供にしたからだ。⑦結局、鬼を倒した桃太郎は、鬼が集めていた金銀財宝を手に入れて村に帰り、幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。

マッチ売りの少女
①みすぼらしい服を着たマッチ売りの少女が、②雪の降りしきる大みそかの晩に大通りでマッチを売っていた。③しかし、マッチは一本も売れない。マッチが一本も売れないまま帰っても、家に入れないだろう。④さて、少女は家に帰ることができるのか?⑤いいえ。⑥なぜなら、少女は暖を取るために全てのマッチを擦ってしまったからだ。⑦結局、少女は倒れてしまい、天国へ行ったそうだ。

応用型ログライン

基本型が「主人公≒中心人物=問題を抱える人物」なのに対して、応用型は「中心人物が問題を抱えていて、それを中心人物以外の誰かが解決する」パターンです。「中心人物以外の誰か」は主人公であることが多いです。

例えば「水戸黄門」なら、困っている町人の問題を主人公のご老公たちが解決します。これは、特にサブプロット(後述)を書く際にオススメです。

① 中心人物の特徴
② (中心人物の)状況
③ (中心人物の)障害
④ 主人公の特徴
⑤ (中心人物の)ナラティブクエスチョン
⑥ 解答
⑦ 主人公のアクション
⑧ 中心人物のリアクションかつ理由
⑨ 結末

これを、当てはめた文章は次のようになります。

①(中心人物の特徴)は、②(状況)だ。③しかし、(障害)だ。④そこへ、(主人公の特徴)が現れる。⑤さて、(ナラティブクエスチョン)?⑥(解答)。⑦なぜなら、(主人公のアクション)によって、⑧(中心人物のリアクションかつ理由)からだ。⑨結局、(結末)。

⑦主人公のアクション&⑧中心人物のリアクションかつ理由

問題解決の際に、必ず主人公がアクションを起こしてください。もし、主人公がアクションを起こさない、あるいはそのアクションが解決に影響しないようなら、応用型ログラインではなく、基本型ログラインを使いましょう。

具体例

シンデレラ
①ママ母と義理の姉にいじめられる日々を過ごしているシンデレラは、②舞踏会に行きたがっている。舞踏会には王子様がいる。③しかし、シンデレラはお城に行くための足もドレスもない。④そこへ、魔法使いのおばあさんが現れる。⑤さて、シンデレラは舞踏会に行き、王子様と結婚することができるのか?⑥はい。⑦なぜなら、魔法使いのおばあさんが魔法をかけたことによって、⑧シンデレラと仲の良かったネズミが馬に、畑のカボチャが馬車になり、さらに彼女の服がドレスに変わったからだ。くわえて、舞踏会に行ったシンデレラが、王子様に見初められたからだ。⑨結局、シンデレラは王子様と結婚して幸せに暮らしました。めでたしめでたし。

ログラインと序破急

ログラインの要素を、有名な「序破急」に当てはめると次のようになります。

:①人物~④ナラティブクエスチョン(①~④=問題)
:⑥理由
:⑤解決+⑦結末

ログラインを作って物語に起こすときは、上記の順序を始めに書いてから物語の構成を調整していくとよいでしょう。では、起承転結の場合はどうなるかというと……?

起承転結はいらない子

起承転結は考えなくていいです。なぜなら、実際に書いてみると分かりますが「承」の部分に当てはまるものを考えるのが難しいからです。前述したとおり、物語の最小構造は「AはBになった。なぜならC」です。だから「"起"は"結"になった。なぜなら"転"」という「起転結」構造で十分。なら、ば、3要素という点で「序破急」を用いた説明で事足ります。

では、起承転結のように「4要素」の物語構造は不要なのかというと、実はそうでもありません。なぜなら、小説や物語には「楽」つまり「お楽しみシーン」が必要だからです。

お楽しみシーンとは?

「お楽しみシーン」とは読者の期待に応える、物語の一番おいしい部分に当たります。すなわち「読者へのサービス」シーンです。読者やジャンルによって「お楽しみ」は変わるので、きちんと読者層に合わせていきましょう。ただし、短編になればなるほど「お楽しみシーン」を入れる尺が足りなくなります。

例えば、なろう小説なら「お楽しみシーン」のパターンは次の4つです。

・俺TSUEEE
・俺SUGEEE
・ざまぁ
・モテ (女性向けなら、イチャラブ?)

この「お楽しみ」は三幕構成において、二幕前半つまり「承」の部分に入ります。なので「起承転結」も、理にかなっているところはあります。

しかし「お楽しみシーン」は物語の骨子から見ると、別個で入れられて、かつどこに入れてもおかしくない「肉」のような部分です。というか、長編ならシークエンスごとに入れてもいいくらいです。なので、次の「序破急+楽」で全体の物語の構成を考えることをオススメします。

序破急+楽の3パターン

「お楽しみシーン」こと「楽」は「序破急」の各パートの直後に入る可能性があります。それぞれの入る位置によって、少しずつ意味が変わってきます。

序[楽]破急
偽解決と仮初の栄華。三幕構成でお馴染み、かつ典型的「起承転結」形式のパターン。問題が一旦解決したかに見えますが、実はそれは間違った解決法です。それに気づいたときが物語の節目になります。本題の解決に乗り出すと展開が重苦しくなるので、その前に、序盤をクリアした読者に一旦楽しい気分になってもらいましょう。

序破[楽]急
最終決戦前の準備とつかの間の休息。ラスボス戦前にたき火を囲んで仲間同士で語り合ったり、過去編を挟んだり……。そういうシーンが入るパターンです。

特に終盤に怒涛の展開が起きてそのまま結末に至る場合(少女革命ウテナなど)、その直前に「楽」を入れておくしかありません。「この戦いが終わったら、お前に言いたいことがあるんだ」と、決意を新たにフラグを立てておきましょう。

序破急[楽]
褒賞、あるいはゲームのリザルト画面。ナラティブクエスチョンを解決した主人公に素敵なことが起きます。ハッピーエンドでエンディングが長いパターンがこれです。

マンガ「東京卍リベンジャーズ」だと、現代に戻ってきたシーンがこれに当たります(ただし、現代シーンは次のナラティブクエスチョンの布石も兼ねています。構成が上手すぎる)。

小説の書き方を上達させる方法と文字数の目安

では、どうやって実際に小説を書いていくかを説明しましょう。

完全初心者がすることは、まず「①ログライン1つに、②お楽しみシーンを1つ入れた、③5000字以下の短編小説を書く」ことです。ラノベ1冊はおよそ10万字とされています。なので、ここから「5000→7500→10000→15000→20000→30000……100000」という目標で、書ける文字数を増やして行くといいでしょう。まずは1万字くらいの物語をたくさん書いて執筆の実力をつけ、3万字くらいまで書けるようになればひとまず、なろうやカクヨムでランキング狙いの作品を量産することができるようになると思います。3万字くらいで完結する物語を書いていき、人気が出たらそれを10万字に増やせばいいのです。

ネット小説だと、1話が約2000~4000字くらいです。なので、この文字数内で物語のペーシングを行うといいでしょう。例えば、1話の文字数を3000字前後にすると決めたら、その文字数で「序」の展開を収めるようにするのです。

ちなみに私の感覚だと、お楽しみシーン抜きの状態でログライン1つで書ける物語は「6000字強」が限界でした。その辺りは人によるので、自分の感覚を磨いてください。ちなみにそれ以上の場合は、次に説明する「サブプロット」を取り入れて、物語を構築します。

長編小説の書き方

長編小説を書くときも、もちろんログラインは使えます。そのときは、複数のログラインを組み合わせて使う必要があります。

このとき、物語の最も広い範囲に跨るナラティブクエスチョンが「メインクエスチョン」、それを解決する物語が「メインプロット」です。くわえて、それを解決するための小さなナラティブクエスチョンが「サブクエスチョン」であり「サブプロット」となります。

例えば、ポケモンだとチャンピオンになるためには、ジムバッチを手にする必要がありますね?とすると「主人公はチャンピオンになれるのか?」がメインクエスチョンであり、その旅が「メインプロット」。ジムに挑戦するまでの過程、扉が閉まって開かないとか、ジムリーダーが不在だとか、ジム戦などが「サブクエスチョン」や「サブプロット」に当たります。さらに悪の組織との因縁もまた、サブプロットです。

サブプロットは、メインクエスチョンに関与するものだけを取り扱った方がいいです。なぜなら、なかなかメインプロットの展開が進まないと読者がダレて読み止めてしまうからです。ただし、登場キャラについて掘り下げる話は人気が出やすいので、(あまり良いとは言えませんが)入れてもいいと思います。この際、「お楽しみシーン」を兼ねるようにサブプロットを作るとより効果的です。

もう一つ、サブプロットでオススメなのが「ミスリード」です。先の「偽解決」でも述べましたが、「メインクエスチョン」の別解をサブプロットとして入れておくと、最後に判明する「メインクエスチョンの真の解答」がより意味深いものになります。

作り方は、ログラインの「解答」部分を別のものにして、そうなった理由をつけ直すことで簡単に作れます。例えば「はい」が真の解答なら「部分的にそう」や「いいえ」にして、理由を新たに作ります。これは「中ボスが実は主人公と似た軌跡を辿った果てに敵になっていた」などのパターンに当たります。物語あるあるですね。

おわりに

物語を作るのは、一度コツを掴むとするする書けるようになります。初心者は既存作品からログラインを起こして、ストックをたくさん作り、それを組み合わせて自分の作品を書くと、すぐに物書きの質と速度が伸びますよ。オススメです!

次は、キャラの作り方についてです。私も苦手だった「キャラ同士の会話」を書くために便利なモデルを紹介します。よろしければ、スキを押していただければ幸いです。

新型ログライン

追記(2024/03/17)
このnoteで紹介したものを「問題解決型」と定義し直して、新たに「ジレンマ型」のログラインも考えました。


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