マラリアに要注意【Day41-2】
任地8日目.
ついに身近にマラリア感染者が現れた!
放課後にピアノを弾いていると,児童が養護の先生のもとに訪れてきた.
見るからにとても体調が悪そうであった.
対応の過程を見ていると,熱を測った後にどうやらマラリア迅速診断キット(以下検査キット)を使用しているようだった.
使用したMALARIA検査キットにはPf/Panと書かれている.
各表記は以下の通りである.
Pf: 熱帯熱マラリア原虫
Pv: 三日熱マラリア原虫
pan:マラリア原虫共通
この検査キットでは,Pf:熱帯熱マラリア原虫とPan:マラリア原虫共通を検査している.検査の結果(上の写真)では,Pfにラインが検出されているので,この児童に関しては熱帯熱マラリアに感染していることが分かる.
養護の先生から話を聞くと,今日はマラリア感染者が2名出たとのこと.なお,この2名に関してはどうやら姉弟のようだ.
上の写真の+がマラリア感染者を示している.用語の先生からマラリアについての話を伺っている最中に,今度は学校関係者1名が体調不良でやってきた.
彼女も37度以上の熱があったため,キットで検査することになった.養護の先生から促され,彼女の検査を私がすることになった.
キットの使用については,ルワンダに来てすぐに健康グリーフィングで,保管管理員の方とマラリア検査の練習を実践済みである.以下の写真がキットの使い方とキット内容である.
簡単に説明すると,指に針を刺し,血液を絞り取って検査キットにセットし,検査試薬を流して検査結果を待つという流れになる.
針を刺す作業が人によっては大変な作業なる.私は献血が趣味なので針には慣れていたが,自分の指に針を刺すよりも,人に針を刺す方が緊張した.
幸い,彼女の検査結果は陰性であった.
彼女の後にもまた児童がやってきたのだが,今日だけでも5名が検査キットを使用した.うち2名がマラリア感染者だと考えると,あまり蚊を見かけなかったので油断しそうになっていたが,蚊に刺されない対策の必要性を感じた.
夜間の長袖長ズボンの着用,虫よけスプレーの使用,マラリア予防薬のネフロキンの服用を心がけたい.虫よけスプレーは忘れがちなので気を付けたい.
学校では,病院に行けない児童生徒がいるためマラリア感染者に薬を配布しているようだ.年齢によって薬の容量が変化するが,3日間朝晩薬を服用する必要がある.
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マラリア迅速診断キットについて気になったので調べてみた.
(参考資料:http://www.niid.go.jp/niid/images/lab-manual/malaria.pdf)
国立感染研究所によると,世界的には,マラリアの迅速診断キット Rapid Diagnostic Test Kitsとして100種類以上のキットが販売されているようだ.しかし,その品質はまちまちで,WHOは原虫密度100/μl以上での検出を標準としている.
基本的には顕微鏡やPCRでの検査となるが,物理的・金銭的に病院に行けない地域や状況下にあるときはこの検査キットが指標となる.
検査には,イムノクロマト法が(イムノクロマトグラフィー法)用いられている.この検査方法は,免疫の抗原抗体反応を利用しているおり,(詳しくは参考資料へ)日本では,インフルエンザや妊娠検査など様々な検査に幅広く利用されている.
検査キットは,マラリア原虫特異抗原を検出するという原理は共通だが、検出する原虫の種や標的とする蛋白質の違いや組み合わせは様々である。
Histidine-rich protein 2 (HRP-2)を検出するキットおよびマラリア原虫の細胞内代謝酵素plasmodium lactate dehydrogenase (pLDH)を検出するキットに大別される.また、致死的となり得る熱帯熱マラリアと他のマラリアをマラリア原虫とを、15分程度で区別して検出できることを一義的に考えている.
前者のHRP-2は,熱帯熱マラリアを検出するのに特化しているようだ.
マラリアには,熱帯熱マラリア,三日熱マラリア,四日熱マラリア,丸型マラリアの4種類がある.ルワンダは幸か不幸か9割以上は熱帯熱マラリアである.そのため,マラリアに感染したと思ったら,2日以内に病院にいかなければならない.
〈熱帯熱マラリア〉
熱帯熱マラリアの原虫の潜伏期間は12日前後である.4種類の中では一番重症化しやすく,重症化すると脳症、腎症、肺水腫/ARDS、DIC 様出血傾向、重症貧血、代謝性アシドーシス、低血糖、黒水熱(高度の血色素尿症)など種々の合併症を生じ、致死的となる.
学校で使用していた検査キットは,Malraia Ag Pf/Pan Detection of HRP-2 and pLDHであったので2つの検出方法複合型のキットになる.
ルワンダでの2年間,何回この検査キットにお世話になることになるだろうか.一回も使用しないことを心から願っている.
※熱帯マラリア原虫を媒介するハマダラカの特徴等について,以前記事を書いたので興味がある方は是非↓
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