見出し画像

【詩】自覚できなかった気持ち

もっと自分に自信を持てたら
もっと自分を認めてあげられたら
もっとあの気持ちを自覚できたかもしれない

今は、16時37分
学期末試験の真っ最中

すでに途切れた私の意識は数字の羅列によって
さらにどこかに逸らされる
行きつく先は窓の先の遠い過去
そっと記憶の隅においたあの人のこと

そう、あれは1年前
初めてのバイトで出会った時のこと
慣れない私に声をかけてくれた「彼」
焦ってうまく答えられなかった“私”

初めて感じる異性からの優しさに
少しずつ芽生えていった気持ち
女子校に通っていた時の男の人への憧れが
たった数往復の会話を薔薇色に染める

まじわる目線と向けられた笑顔
その時はただただ楽しかった
でもその時間はあっという間に消えた

女性としての「私」
彼女としての「私」
会話するにつれて投影される「私」の姿は
どちらも想像すればするほどに
“私”として受け入れられなかった

交わされるはずだった言葉と
縮められるはずだった距離
それらは違和感のある間と
かみ合わなくなるテンポによって
次第に無いものになっていった

それからの会話にもはや意味はなく、
ただ本音をにごらせるだけの時間になった

もっと話してみたい
 ― “私“なんかがそんなこと思うな
もっと話しかけてほしい
 ― 誰も“私”なんかに話しかけない
もっと話しかけたい
 ー どうせまた上手く話せない

相反する二つの本音に打ち消されていく
“本当の気持ち”

あの時の私はまだ世界を怖がっていて
“もっと近づきたい”
を叶えるのにあまりに大きな不安と
“好きかもしれない”
を自覚するのにあまりに小さい自信しか
もっていなかった

きっと「彼」は“私”なんかを好きにならない、
彼が“私”なんかをよく思うはずがない、
そう思った

だから自分自身で彼への感情にちゃんと気づく前に
早く距離を置いて忘れたかった、
この出会いを無かったことにしたかった

そんな風に押し殺されていった気持ちは
「恋」と呼ぶにはあまりに一瞬だった
それでも何度も反復される彼との会話に
少し胸が暖かく感じるのは
「好き」だったと自覚するには十分すぎた

自分の好意も「彼」からへの好意も
簡単に無かったことにしてしまったあの頃の“私”

もっと自分に自信があったら
もっと自分を認めてあげられていたら
もっとこの「好き」を自覚できたかもしれなかった

#INFP  #5w4 #mbti #初投稿 #自己表現 #詩


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?