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note|幸せの分母を増やすということ

4月にインタビューさせてもらったsioの鳥羽周作さんのインタビュー記事を前後半2回にわたって公開することできました。前後編あわせて2日間で3000人以上の方に読んでいただけました。Twitterでも感想をつぶやいてくださる方も多くて、鳥羽さんのある一面がすこしでも伝えることができたかなとほっとしております。

また、自分としてもコロナ禍の2カ月を記録できるような内容がまとめられた達成感もあって、なんとなくですが、自分のなかでの対コロナ戦がようやく次に行ける、そんな気がしています。

「幸せの分母」に共感したきっかけはヤフコメ

鳥羽さんのインタビュー記事(前編)にも書いたのですがが、4月5日にsioに向かったその日の9時23分に、飲食店がコロナによってドミノ式に倒産するのではないか、という東洋経済の記事を読み、Facebookページでも「見るに堪えられない」というコメントをつけてシェアしていました。

現在は、yahoo!の記事ページが削除されているので、コメントは見られないのですが、当時は、「8万円の客単価の店なんて一生いけないから消えてよし」とか「自分たちは高級外車に乗ってて、コロナになったらこれかよ」、「経営者として失格」など、見ていて悲しくなるようなコメントが多く(むしろほとんどがその類)ありました。

それを見て僕は、匿名でコメントしている人たちに対して「何も本質がわかっていない」とか「食文化が消えてしまってもいいのか?」というような反論だったり反発するような感情が一切沸き起こってきませんでした。それよりも「飲食の良さ、レストランの良さ、まったく広まってないじゃん」という危機感でした。

お前は、別にレストラン経営しているわけでもないし、飲食店の仕事をしてるわけじゃないんだから関係ないじゃないか」という方もいるかもしれませんが、レストランや料理人に人生を変えられて、なんとかレストランのためになるようなことを仕事にしたいと思っている僕にとっては、パートナーが思いっきり非難を受けているような状況だったわけで。それは危機感を覚えますよね。

そんななかで、その日の夜に鳥羽さんと会い、「幸せの分母」の話を聞き、「ああ、コロナによってレストランだったり食の役目が変わってくるかもしれない」ということを痛烈に感じたわけです。

そのとき、現在の状況を想像することはできなかったけど、鳥羽さんが考える「幸せの分母」を増やしていくことができれば、ヤフコメにあったコメントが半分に減るかもしれないし、飲食業を守るために政治にかけあおうとしているグランシェフたちにも、同業者やレストランに通い詰めている人だけじゃなく、年に1回レストランに行くような方々からも賞賛の声があがったのではないか。

それは、けっしてこれまでの飲食業界が努力不足だったということではなくて、コロナによって気づくきっかけをもらったということだと思っていて、もしこの何十年かあとに飲食業を襲う苦難があったときに、今回のように冷ややかな目が向けられるのではなく、「飲食業がなくなってしまっては困る!私たちの大切なレストランを守ってほしい!」という声が、飲食業の外からあがってくる。そんな状況にするなるためにも、幸せの分母を増やすことを今からやっていくべきではないか、と考えるようになりました。

僕もやってみた「幸せの分母」を増やすこと

4/5に鳥羽さんに会ってから、僕なりに幸せの分母を増やしていけるようなことを始めました。

①レシピブックの自主制作

たとえば、フランス在住のシェフ、神谷隆幸さんのレシピをまとめた「アスパラガスのレシピ」もその一つです。神谷さん自身もフランスのロックダウンで先が見えない中で、神谷さんのファンの方々に家庭で喜んでいただきたいと思って始めたものでした。

結果的には食べチョクさんとコラボレーションして、アスパラガスの生産者さんをすこしでも応援できたのは、当初想定していたことではないだけに、うれしかったです。

②LINEサービス・オンライン番組の制作

神谷さんが代表を務め、僕も編集者として参加している #CookForJapan でも一緒に活動している関口幸秀さんと始めた #教えて消費レシピ の公式LINEや毎週水曜にやっているZoom番組も、レストランシェフの知識や技をすこしでもご家庭のなかで活かせないかと思って始めたものです。

③インスタライブの裏方

CHEESE STANDの藤川真至さんとは、コロナ前から藤川さん付き編集者といしていろいろな考えを共有してきて、藤川さん自身もコロナ禍で精力的に動かれていたなかで、チーズの卸先のレストランシェフをゲストにお呼びして始めた「インスタライブ」にチャット担当(質問やトークテーマをチャット内で整理する役目)を引き受けたのも、これは「幸せの分母」を増やすことになるんじゃないか、と思ったからです。

上のnoteは、そのときのトークの内容をまとめたものです。料理人の方がコロナ禍でどんなことを考えて、次にどんなレストランを作ろうとしているのかの一端をみることができて、それはモノづくりでありクリエイターの真摯な姿として、広く感動を得られるのではないかと僕なりに思っています。

④レストラン発のオンラインメディア

緊急事態宣言が解除されてから再開した、東京・青山一丁目の「The Burn」でのMAGARI(レストランの一角を借りて一日仕事をする)では、レストラン発のYouTubeの制作を始めました。コロナ禍では、インスタライブやYouTubeなどで、多くのシェフがお客さんとオンラインで繋がり、シェフの存在が身近に感じられるようになりました。

通常営業が始まると、なかなかそういった時間が取れなくなってしまうのですが、そこを外部の僕が制作を担当することとで、引き続きオンラインでシェフの発信ができるようになります。

料理人がどんなことを考えてキッチンに立っているのか。そういったこととがわかると、レストランでの食事が特別なものになっていくのではないかと思っています。

幸せの分母を増やすことが未来の飲食業を助ける

上の動画のなかでラ・ブリアンツァの奥野義幸さんが、「(1年後にもう一度飲食が大変になったときに)それでも生き残れる。勝つ負けるじゃなくて、生き残るための準備というのが大事」ということを言ってらっしゃいました。

もしかしたら、その大変な時期が半年後かもしれないし、2年後かもしれない。または、小刻みに何度も襲いかかるかもしれません。その時のために、飲食業のファンや応援団がたくさんついていてもらえれば、「幸せの分母」をいろいろな方法で増やしていければ、その危機をきっと乗り越えていけるのではないかと感じています。

なかなか、通常の営業が再開したなかで、オンラインを意識していくのは難しいと思います。それに、やっぱりレストランの本当の価値はオフラインにあります。そこを大切にするのは、レストラン人の務めでしょうし、そこがアイデンティティで、歓びでもあると思います。

僕らのようなレストランを愛する人たち(食の周辺で仕事をしている僕のような編集者やフォトグラファー、デザイナーとか)が、レストランのオンライン発信を助けていけるような形ができると、さらに幸せの分母が増えていくのではないかと思っています。

それと、当然「幸せの分子」も増やしていかないと、分母ばっかり増えてもしょうがないので、深めていくようなことも両輪で大事になって行きますよね。たとえば星付きのレストランとか、シェフとかになるんだろうな。

僕自身は分母を増やす方にいるけど、分子を増やす(高める)ような方も絶対必要なんだと思います。それは、どっちがいいとかじゃなくて両方で飲食業が提供できる幸せを増やしていけたら最高ですよね。

ということで、これからも食をテーマにした「幸せの分母」を増やすために頑張っていくぞ!

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明日の予定

日曜のテーマは「Rock」です。初めての日本のアルバムなのですが、ミッシェルガンエレファントの《High Time》についてです。同年代のリアルな記憶を手繰り寄せてみます。



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