note|天竜川ナコンさんの note を読んで
最近、ドはまりしているnoterさんがいる。天竜川ナコンさんだ(コナンではない)。
これまでも、「「想像上の妻子」と結婚したら、自己肯定感が上がった話」や「久しぶりに「髻ウ讌ス髑題ウ」したら、「莠コ髢薙↓驕ュ驕」した話」、「「フラれそうな時、彼女に送る長文のLINE」職人の朝は、早いーー。」などは、読ませていただいていたのですが、決定的にファンになってしまったのが、このnoteだ。
「なんかおもしろいんだよなぁ」と、いって終わらせることはできるのですが、そのおもしろい理由を伝えることが、僕の仕事。かなり難しい挑戦だけど頑張ってみたい。
流行になりかけの気持ち悪さを見事にデフォルメ
これまでのnoteも十分好きだったのですが、圧倒的にこのnoteに惹かれた理由は、写真の良さ。いつもは、天竜川さんのおそらく自撮り画像を使って、noteを組み立てていると思うのですが、やっぱり自然界の物の美しさでデュエルするからには、写真が美しくないと説得力なかったのでしょう。
また、今回は、初めて天竜川さん以外に登場人物がでてきています。知り合いの人さんです。この方のすっとぼけた感じの表情はいい。そして、デュエルを境にどんどん変わっていくのも、期待を見事に裏切られる。
さらにテーマもいいですよね。M-1でブレイクした「ぺぽか」の漫才のような、現代の多様性とか共感、コミュニティみたいなことなのですが、それに対するちょっとした気持ち悪さを、ほどよくデフォルメしている。
あと、前半の緑デッキの構築のくだりっているのかなと思うのですが、最後に枯れ葉を出すことで、見事に伏線回収(これも伏線回収のデフォルメでしょう)。
演者とカメラマンの3人で制作したのだろうか。やっぱり、人の手が加わると格段にクオリティがあがり、バカバカしさとのコントラストがより鮮明になる。たとえば、次はライカ自慢しているようなカメラ好きの人にとってもらったものとかのも、僕は見てみたいと思ったなぁ。「それ、ライカの必要ある?」みたいなクオリティで、底抜けにバカバカしいものを。
天竜川さんのおもしろさってそこで、まじめに一生懸命やっている人をちょこっとずらしてみていく感じがおもしろいなぁ、と思っています。
それでいて、しっかりとストーリがある。ここも重要で、どうなっていくのかな、という起承転結によってグイグイと物語に引き込まれていってしまうのです。
ノリアキとパフュームと天竜川ナコン
天竜川さんってどんな人なんだろう? そう思って調べてみたんですが、まったく情報が出てこない、謎の人でした。
数少ないネット情報によると、もともとニコニコ動画で活躍していたラッパーだったようです。代表曲は「神ラップ」。2014年の作品です。
「神ラップ」もいいんですが、天竜川さんの曲のなかでは、トラックのカッコよさと、ラップのリズムの外し方の意外性で「Father Fucker」の方が好きかなぁ。
そういえば、「神ラップ」後半にあてられている映像が、20代の時にはまっていたノリアキだったのにも驚きました。自分が好きなアーティストって、やっぱつながるんだよなぁと。ノリアキと言えば、「unstoppable」は名曲ですよね。
ノリアキも、当時認知されはじめていた時期で、「yo yo」ってなんか恥ずかしいなぁっていう一般層が、少しずつラップ自体の本質に気付き始めたときに、そのズレをうまくキャラクターに昇華させた人です。
音楽(トラック)も歌詞(ライム)も、しっかりできているのに、キャラクターが舐めてる。そんなずれた感じを、引いた感じで見ているの20代の僕にはおもしろかったのでしょう。
そういう「●●だけど、ほかのものは本物なんだよね」みたいなところでは、デビュー仕立てのperfumeもそうだった。「エレクトロ・ワールド」を初めて聞いたとき、「少女アイドルの歌なのに、なんでこんなかっこいいんだ」ってびっくりしたものだ。
「オレを評価してみろよ」という挑発
話しは脱線したが、天竜川さんのnoteには、それまでマイナーだったものが認知され、メジャーに昇華していく途中に起きる、ブームへの違和感をうまくいじりながら、それを取り囲む枠組みのクオリティの高さで、かろうじて形を維持しているものの、偶然的なおもしろさが魅力のように感じる。
そういう意味で、天竜川さんがnoteを選んだことに、彼独自のきゅう覚なのだろう。noteは、少しづつメジャーになってきて、「note(ノート)は、文章、写真、イラスト、音楽、映像などを手軽に投稿できるクリエイターと読者をつなぐサービスです。」とあるが、ここがどうもこそばゆい気持ちは、確かにわかる。嵐が「嵐 - A・RA・SHI」でデビューしたときにHIP-HOPへの接近の仕方に、なんか恥ずかしくなったあの感情を、今のnoteに感じているのだろう。
おいおい、お前たちが言ってるクリエイターってなんだよ?
そんな声が、僕にはこのnoteの奥から聞こえてくるのだ。そして天竜川さんが、さらにこう詰め寄ってくる。
オレを評価してみろよ
しかし、noteも負けてはいない。
見よ、この圧倒的スルー感。「え、このnoteのおもしろさって、そういうことだっけ」と、肩透かしを食らった。まるでクライアントからのわけわからない依頼をひらりとかわす敏腕サラリーマンの高等テクじゃないですか。やるなnote。見事な問題先送り感。
天竜川さんの投稿がまたスキされまくったときに、noteがどういう反応を示すか。これもまた楽しみなデュエルだ。
パンクでロックな天竜川さん
noteは、共感に特化したSNSプラットフォームだ、なんてよく言われます。なので、共感されやすい記事がスキをもらいやすいのも、1か月半も毎日書いていればわかります。
その一方で、書くことって、それだけなのかな、って思ってしまいます。
エンタメ性をどう共感に組み込んでいくか。それは、noteの外に出たときに重要になってくるような気がします。noteで通用していた技が、ほかでは通用しなくなっては、真のクリエイターとはいえません。
今回、土曜のテーマ「note」に天竜川さんを選ばせていただいたのは、自分の中にあるnote方程式を一度壊してみたかったんでしょう。
天竜川さんのパンクで、ロックなスピリットに、今週は打ちのめされてしまいました。