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ぽんぽんぺいん

 夫と話しているときに、「ぽんぽんぺいん」という言葉を知った。


お腹が痛い、痛くないという会話の中で(なんでそうなったんだろう)夫にぽんぽんぺいんじゃん!と言われた。


幼児語の組み合わせみたいでかわいい!
(ぺいんは幼児語じゃないけど)

わたしはとにかく、発音したときの音が気に入った。

ぽんぽんぺいん ぽんぽんぺいん

いいね〜。我が家の新語じゃん。いい言葉ができた…と思っていた。


 何日も経って、ぽんぽんぺいんって絵本とかにありそうだよね〜と夫に話すと、ぽんぽんぺいんという言葉はネットで話題になっていたものだと知らされた。愕然とした。


夫が創ったんじゃないんかい!!


まあ、それでも、わたしはぽんぽんぺいんが好きなので(腹痛は大っ嫌い)
ぽんぽんぺいんで思い浮かんだお話をここに書いてみようと思う。



「ほら〜、ぽんぽん出していると痛くなっちゃうよ〜」

ママは今日もしょうちゃんに注意します。

しょうちゃんはママにお腹を見せるのが面白くて、Tシャツをめくり上げて走り回り、おへそを出したまま寝転がります。

キャ〜キャッキャ

しょうちゃんはとっても楽しそうです。
手足をバタバタと動かします。

「もう!ぽんぽんしまって」
ママが言うのは何度目でしょうか。
今日もどうにかこうにかしてTシャツの裾をズボンにねじ込み、しょうちゃんを不機嫌にさせながら「おやすみするよ」と寝ることにしました。



えーいびぃーしーでぃーいーえーふじぃー♪


しょうちゃんとママは、ときどき英語の本を読みます。

ヘッード ショルダー ニーズ アンド トーズ ニーズ アンド トーズ♪


ママは英語のうたを歌ってみせます。
歌に合わせて、頭、肩と順に触ります。

同じように頭、肩と触っていくしょうちゃんは、パッとお腹を見せました。

「ぽんぽんは?ぽんぽんは?」
「ぽんぽんはね〜」

言いかけたとき、ママはど忘れしてしまいました。
しまった。なんだっけ。

どうしようかな。
しょうちゃんのお腹を見ながら悩んでいると、いつも注意しているあの言葉。
お腹が痛くなるよ、の痛いの英語が思い浮かびました。

「しょうちゃん。まずぽんぽんはしまおうね。ぽんぽんぺいんになっちゃうよ」
「ぽんぽんぺいん?」

しょうちゃんは、ぽんぽんが英語でなんて言うかよりも、ぺいんが気になりました。

「そうだよ。ぽんぽんぺいん。しょうちゃんがぽんぽん出していると、ママがいつもぽんぽんが痛くなるよ〜って言うでしょ」
「うん。いう」
「ぺいんって痛いってことだよ。ぽんぽんぺいん」
「ぽんぽん…ぺいん……」

お腹が痛いというのがよく分からないしょうちゃんですが、「ぺいん」がとってもこわーいもののような気がしました。



「ただいまー」

パパが帰ってきました。
「おかえり!!」
ダダダッと大股で走り、しょうちゃんはパパに飛びつきます。

「お〜しょう〜。ただいまー。いい子にしてたか」
「うん!今日もママと本よんだよ。ぽんぽん見せた」
「まーたぽんぽん見せたのか」

はっはっはと笑うパパですが、眉毛がへの字になり、またすぐ元に戻りました。

「パパ、どうしたの?」
「ん〜ちょっと、お腹がな…」

それだけ言って、パパはしょうちゃんを抱っこしたままリビングに行きました。

パパ、どうしちゃったんだろう。
まゆげがへの形になった。

いつもいつも元気なパパが、元気そうじゃありません。しょうちゃんは心配です。

おなかがって言ってたけど。おなか…。
そのとき、昼間にママから教えてもらったことがビュンと頭を駆け巡りました。

「ぽんぽん…ぺいん……?」

さあ、大変です!
パパのお腹が痛いのかもしれません。
しょうちゃんはパパからぴょんと抜け出します。

たいへんだ、たいへんだ。
ぽんぽんぺいん ぽんぽんぺいん

「パパはこっち!こっちきて!!」
ぐいぐいパパを引っ張ります。
「なんだなんだ」
「パパはおふとんにいて!!」
「しょうちゃん、どうしたんだ…」

しょうちゃんは走ります。

おみず おみず おみず
おくすり おくすり おくすり

お腹が痛くなったことがないしょうちゃんですが、頭が痛くなったことはあります。ママはしょうちゃんをおふとんに寝かせて、お水とお薬を持ってきてくれました。

「しょうちゃんー?パパどうしたの?」
「ママ!パパはぽんぽんぺいんだよ!」
興奮気味に言いました。
「ぽんぽんぺいん?」
ママは、パパのお腹が痛いなんて珍しいと首を傾げました。

「パパ〜!おみずとおくすりもってきたから、のんで、ねてね!」
「おおー、薬かー」
パパは嬉しそうにしながらも、申し訳なさそうにしています。

「パパー。どうせ飲み過ぎと食べ過ぎでしょ」とママ。
「バレたか」へへっとパパは笑います。
しょうちゃんはパパとママの顔を右左と見ました。

「しょうちゃんごめんな〜。パパ、お腹が痛いんじゃなくて、えっと、食べ過ぎで苦しくて」
「いたくないの…?」
「痛くないよ」

しょうちゃんは気が抜けて、ぐだっ〜と倒れ込みました。

「なーんだ。ぽんぽんぺいんじゃないのか」
しょうちゃんは安心してTシャツをめくり上げ、顔を隠しました。
「しょうちゃん、パパにとってお腹が苦しいのは大変なことなんだ。でもな、お腹が痛くなることはもーっと大変なことなんだよ。もちろん、しょうのお腹もな」
しょうちゃんのお腹をつつきます。

「もーっとたいへんになるの?」

しょうちゃんはパパが泣いているのを見たことがありません。そんなパパが泣いているところを考えると、Tシャツをズボンの中へぎゅっぎゅと入れました。



えーいびぃーしーでぃーいーえーふじぃー♪


今日もママとしょうちゃんは、英語の本を読んでいます。しょうちゃんは英語の本を見ると、ママに教えてもらった言葉を思い出すようになりました。

(ぽんぽんぺいん ぽんぽんぺいん)

しょうちゃんは前のように、お腹を出して走り回ったり、寝転がったりすることはなくなりました。

どうしてもお腹を出したいときは、ママにおへそをチラッと見せます。
しょうちゃんがまたお腹を出すのかと思って、ママが「ああっ」という顔をするのが面白いみたいです。


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