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秋の日は釣瓶落とし


 雨の日が続いている。いつも自宅にいるが、雨だと余計に外へ出なくなる。ずっと家にいると、住環境が気になってきて(片付け片付け〜)という思考になる。 
 わたしはこれまで何度か引っ越しを経験して、本を持っていく大変さを痛感した。それから所有する本は、本当にお気に入りだけ+本棚に入るだけにしようと決めた。手放すかどうかは、もう一度読んでから決めることにしている。また読みたいと思ったら本棚へ。読み終えて満足したら、今までありがとうだ。


 狙いを定めて抜き出したとあるエッセイ本。おもしろくて悔しくなる。こんな風に書きたいけれど、書けないよ。作者が羨ましい。この本を持っているのも、なんだか悔しい。できれば手放したい。なんてこじれた思考だ。そう思っても、きっと(そういえばあの話って…)って思うときがくるだろうから、まだ手放さない。本棚にもどす。



 夫が積みっぱなしにしている本も漁り、一冊読んでみた。語彙力についての本。言葉の意味が書いてある。パラパラ読もうと思ったが、いくつか知らない言葉も載っていて興味が湧いたので、イチから読むことにした。意味を勘違いして覚えている言葉や、間違えやすい言い方が載っている。へぇー。わたしも間違って覚えていたかも。あ!この言葉は知らない。気になったものは、いくつかノートに書いて残しておいた。


例えば「辛党」は、辛いものが好きなわけではなくて、酒を好んで飲む人だということ。
「舟を漕ぐ」は居眠りをするということ。
「時を分かたず」はいつもということ。


意味を勘違いしていた言葉は字から連想しているものが多い。言われれば(あ〜なるほど〜)と思うような言葉ばかりだ。


 もし、古くからある言い回しをうまく使えたら、格好いいよなぁと思う。ただ、文章に取り入れても、相手が知らなかったら誤読されちゃうよね。

暖かな日差しが気持ちいい午後。
俺は国語の教科書に隠れてあくびをする。そっと顔を出すと、田中が舟を漕ぎ出したのが見えた。


おい!田中が急に舟を漕ぎ出したぞ?どういうことだ!
ってならないかな。大丈夫?

長く使われてきた日本語を残したいけれど、使っても意味が伝わらない→使われなくなる→ますます意味が通じなくなる→残らない。なんてことに。ジレンマ。


 いつかわたしが、沢山の人に読んでもらえる文章を書けるようになったとしたら、ちょいちょいこういう言葉を取り入れよう。
「なんだこれ、どういうこと?」ってところから意味を調べるきっかけになって、消えかけていく言葉を覚えてもらえたらいいな〜、なんて思う。



 あと一冊、手放すか迷っている本があるけれど、この本もおもしろいに決まっている。まあね。わたしが気に入って買った本だもの。今回手放すものはなさそうだ。まあね。無理に手放す必要はないし。片付けは根気よく。何事も根気よく。



 日差しがあっても空気はどこか冷たくて、あっという間に秋らしくなった。日が沈むのも早い。ここ最近は雨の日が続いているが、今日は久しぶりに晴れだ。





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