
懐かしいまどろみ
春がやってきている。桜も開花した。
それでも、我が家のこたつは健在だ。
一気にあったかくなったからなのか、眠い日が続いている。体が追いついていないみたいだ。
昼寝をしてしまうと、夜に眠れなくなる。しばらくは眠気を我慢していたが、先週ぐらいからは諦めて寝るようにしている。眠い頭では、家事も勉強もうまく進まない。
今日も眠くなり、こたつで昼寝。
そろそろ起きなきゃ、と夢と現実の狭間。ウトウトする時間が結構好きである。
こたつで寝ているため、たぶん水分不足だろう。
起きなくてはと目が覚めた。
でも、体が動かない。
金縛りだ。
金縛りというと霊的現象が思い浮かぶだろうが、わたしの金縛りはこわくない。
あ、あれだ。意識はあるけど、体が動かないやつだ!と、脳がわかっているのだ。
昔から何度か金縛りを経験しているので、わたしはいたって冷静だった。
わたしは「んー!」と力を入れる。
動かない体を動かそうと、体がぷるぷる震えているイメージだ。重い物体を押してもびくともしないように、動かない体に力を入れてもすぐには動けない。
はやく水分をとらなくちゃ。
そろそろ起きなくちゃ。
体よ、動け!
脳は働きかける。
「んーーー」
何度か繰り返す。
わたしは夢を見た直後でぼうっとしていたからか、母と暮らしているつもりになっていた。
お母さんが気づいて、起こしてくれないかなぁ。
わたしは昔、金縛りになったときに母をびっくりさせたことがあった。
ある日昼寝をして、金縛りにあっていたわたしは、体を動かそうと試みていた。
鼻息荒く「フンフンッ!フンフンッ!」と吐き出し、力を入れていた。なぜフンフンしていたかというと、フンフン言っていたら母が異変に気づいて起こしてくれるんじゃないかと思ったのだ。
開かない目、動かない体。
意識だけある状態で、何度も「フンフンフンフン」と鼻息を吐いた。いくらやっても母は起こしに来ず、どのくらいか格闘の末、わたしは自力で起きた。
後から母に「うなされてたよ」と言われ、うなされてたんじゃないよ〜、金縛りにあっていたの〜。気づいていたなら起こしてよ〜。と思った。
今日も「んー」と力を入れる。体を動かすために専念する。きっとフンフン言ったって、前みたいにお母さんは起こしてくれないだろうなぁ。くっくっく。ひとりで起きるかぁ。
「フン、フン」と鼻息を吐き、体よ動け動けと力を入れる。起きれるまで繰り返す。
ハッ。
目が覚めた。
よかった。動く。
こたつで水分不足だ。喉が乾いている。飲み物を飲もう。
あれ、お母さんは?
わたしは、部屋でひとりきりなのを思い出した。
結婚してから、違う家で暮らしているんだった。
こたつの暖かさが春の気候みたいにやさしくて、昼寝日和の日と、子ども時代とが重なる。
わたしはこたつから身を起こしたまま、しばらく、ぼうっとした。
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