漢字検定一、二、三
漢字が書けなくなった。
正確には、漢字が思い出せなくなった。
久しぶりに手紙を書くときや懸賞はがきを書くとき、買う物・やることリストを書いているときにおやっ…となっている。
漢数字や何時何分、熊・犬・猫など、生活する上で目にするものやわたしに必要なもの、画数が少ない漢字はスラスラ書ける。
書けないのは、へんやつくりが同じ漢字(馬、禾、攵、冓などなど)や、この線は突き出るんだっけ?横線は何本あるんだっけ?と悩む漢字、はたまた全く思い出せない漢字まである。
わたしがよく悩む漢字はダントツで「募」と「券」だ。
小学生か中学生のころに、漫画『グッドモーニング・コール』を読んだ。主人公菜緒がバイトしていたラーメン屋のおやじさんが、バイト募集の貼り紙をするところがあって、息子のいっちゃんに募の字が間違っていると指摘されていた。(下の部分が刀になっていた)
わたしはそれを読んだときに「うわっ、わたしも間違えそうなやつッッ」と動揺したのを忘れられない。このころから募には捕らえられていたようだ。
券売機が置いてあるお店でごはんを食べるときは、券って下の部分は刀と力のどっちだっけ、と無意識に問題が出される。頻繁に書く漢字ではないけど、わたしの中では苦手漢字として居座り続けている。
全く思い出せずに書けなかった漢字は、わたしも全く思い出せないのでここには書けない。存在自体忘れている。あれー?喉元まで出かかっているんだけど。試しにこんなん?と書いてみると、違和感ありまくりの漢字が生まれていた、という過程は覚えている。
わたしはこりゃスマホの使い過ぎか?と焦り、
わたしを助けてくれるのもスマホという現実。
なんて皮肉なんだ。
書けない漢字があるたびにスマホで打って確認し続けたら、どんどん書けない漢字が増えていくかもしれない。スマホがあるからと、脳が勝手に覚えるのをやめてしまうかもしれない。
わたしがもし迷子になったとして、道行く人に行き先を尋ねたくなったとする。さて、紙に行き先を書いて…と思っても書けない。漢字が分からない。じゃあスマホスマホ。あ、スマホ忘れた。うそー何もできないじゃん!ってなるんじゃ…と話を飛躍させたら、そろそろ頭使わないといけないんじゃない?と冷静になった。
わたしは数年前に挑戦しようとして、すぐに挫折した検定があった。
日本漢字能力検定準一級試験である。
漢検は10級〜3級、準2級、2級、準1級、1級と数字が少ないほうが難易度が高くなっていて、わたしは学生のときに2級を取ったきり、遠ざかっていた。
社会人になって数年経ったころ、やけに「何か」を勉強したくなった。学生のように勉強する機会がなくなり、ようやくありがたみが分かったのか、ただ単に学校が恋しかったのか。
わたしは元々好きだった国語で、中でも得意な部類だった漢字ならできそう、と受かるだけが目的の勉強を始めた。
軽い気持ちで準一級テキストを開いたものの、「読み」は読めない漢字ばかり、「書き取り」もふたつみっつしか書けない。「四字熟語」のページを開いたときにさっぱり分からんと追い打ちをかけられ、無理だ、やーめよと早々に諦めてしまった。
買ったテキストは見えないように、本棚の後ろ側にしまっておいた。
わたしは漢字が書けなくなってきた今、漢字に興味を持っている今が勉強するタイミングじゃんと思った。さらに気持ちを後押ししたのは、今年の上半期に起きた、わたしに変化と衝撃を与えた出来事だ。人はいつ死ぬか分からないんだから、やりたいことはやっておかなきゃと後悔するぐらいだった。そう思ったのは人生で2回目。
再確認したからこそ、漢検準一級試験へのくすぶっていた気持ちに火がついた。
ここ1か月半で、準一級テキストに載っていた漢字がニュースや漫画、本、noteに出てくると目に留まるようになった。
ざっと覚えているのはこのくらい。
うへぇと苦手意識のあった四字熟語では
などがあった。(アニメとドラマばかりだ)
あれもこれも準一級に値するんだ。
わたしは難しそうだった準一級の漢字が生活で使われていることに気づいて、わたしの勉強の楽しさは実生活で見つけたり役立ったり、自分の琴線に触れたりするところにあったなと思い出した。
勉強したからこその、ちっちゃな賜物だ。
自覚していないだけで、他にもいっぱいあるだろう。
昨日進めた書き取りページの漢字が書けなくて、キィーーーとイライラする日もある。
(ペンをノートにぐるぐる押し付けたくなる)
面倒くさい。眠い。
今更やったって、とめげそうな日もある。
そんなときは
買ったテキストが勿体ないよ!
漢検を受けると宣言したのに、やめるなんて恥ずかしい!
やり始めたのは自分なんだから!!と喝を入れる。
時間は刻一刻と過ぎ、試験日は近づいてくるのだ。
勉強は取り掛かるまでが面倒くさいだけなんだから。生活の中で、ふと準一級漢字が現れるとちょっと嬉しいよ、と自分自身がこそっと囁く。
一、二、三、四、五
時計の針が進むと共に、わたしの習得漢字も少しずつ増えていくと信じて、そろそろとテキストを開く。
もしサポートいただけたら、部屋の中でものすごく喜びます。やったーって声に出します。電車賃かおやつ代にさせていただきます。