とろ日記(今こそ腕まくりするときです)
健康診断に行って、テンションがやや下がる。
医師の反応とか、歯科のアドバイスを受けて「あ〜あ、やんなっちまうぜ」と少々思う。気弱になる。
時間を確認すると、次の電車が来るまで駅のホームで待つには長い。風が冷たいから、今日の上着では首元が冷えてしまう。
駅の近くにカフェがあったから、飲み物で自分を慰めることにした。豆乳チャイ。空っぽの胃に、あったかい豆乳チャイが入っていくのが分かる。
店内では、常連さんと思しき人と店主が話し始めた。
片方が「たにがわしゅんたろうさんが亡くなったの知ってますか?」と言った。
たにがわ…。
たにかわじゃないんだ。
妙に引っ掛かり、谷、川、俊太郎と検索窓に打つ。
あ、たにかわでいいんだ。
自分が知っていた通りで安心する。
たにがわ、たにがわ、と聞こえるたびに「たにかわですよ」と言いたくなるが、そんな人イヤだわと自分で思い、チャイに口をつける。今年は「ぐりとぐら」の中川李枝子さんや、「ねないこだれだ」のせなけいこさんなど、物を作る人が続けて亡くなっているように思う。鳥山明さん、楳図かずおさん。谷川俊太郎さん。毎年誰かしらが亡くなっているだろうが、今年はそういう年なのかなぁ、なんて考える。
まだまだチャイはあったかい。お腹がぽかぽかする。チャイの味が特別好きだというわけじゃないのに、メニューにあると選びたくなる。なんでだろう。時計を見ると、まあまあいい時間。やばい、電車が。カップから口を離さず、こくこくと飲み続ける。ぼーっとしていたからか、店内で本を売っていることに今さら気づく。うわー。気になるけど、電車が来ちゃう。ちらっと見てお店を出る。旅の本やら、雑貨やらが置いてあった。また来れたらいいな。
電車に乗って外を見ていると、わたし空腹だったなぁ。空腹だから、余計に気持ちも落ちてしまうのかなぁと思った。
早く家に帰って、フィナンシェを食べよう。今日の夜に食べようと取っていたおやつだけど、健康診断のご褒美として食べてしまおう。
フィナンシェを食べ終えレシートを見ていたら、カフェのレシートにこう印字されている。
わたしは無宗教のはずだが、啓示のように思えてくる。
将来に向けて準備する…か…。
腕まくりをすると、採血後に貼られた止血用パッドが見えた。四角というだけだけど、ダイヤを連想させる。