萩原朔太郎「月光と海月」
絡めては こごる指先 春の雨
解いて 溶かして その舌先で
(前橋ポエフェス_2014年)
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「月光と海月」
月光の中を泳ぎいで
むらがるくらげを捉へんとす
手はからだをはなれてのびゆき
しきりに遠きにさしのべらる
もぐさにまつはり
月光の水にひたりて
わが身は玻璃のたぐひとなりはてしか
つめたくして透きとほるもの流れてやまざるに
たましひは凍えんとし
ふかみにしづみ
溺るるごとくなりて祈りあぐ。
かしこにここにむらがり
さ靑にふるへつつ
くらげは月光のなかを泳ぎいづ。