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イブの夜に彷徨う刺激臭【ユーモアエッセイ】

 3階建ての3階が私の住処。
 家を出ると、ドッグフード独特の強い匂いが充満していた。


 私は鼻が効くもので、この匂いはただごとではないと察知した。


 コーラだと思って飲んだらコーヒーだったほどの衝撃で、私は、近くの鉄板焼き屋からホルモンを焼いた香りが漂ってきているのだと、無理矢理に大きく頷いた。


 世間はクリスマスイブだ。

 そうかそうか。皆はあの店でホルモンを焼き、ホルモンに囲まれてビールでも飲んでいるか。
店は特別にホルモン祭でもやっているのだろう。


 イブは外でホルモンを食べ、ホルモンの香りを身に纏い、ホルモンを放出し、ホルモンバランスを整え、ホルモンで顎を鍛る。
 本格的な寒波に向けて体力を温存するため本能のままに焼き、嚥下のタイミングを見ながら食していているのだ。


 そうかそうか。ならこの匂いも仕方がない。

 私は一瞬にして、そんな身勝手な妄想に浸っていた。



 しかしおかしい。


 冷静に考えて、肉を焼いた炭火の香りが風に乗って届くことはあるけれど、ドッグフードのあの匂いに似た、ちょっとウッと鼻が曲がりそうな匂いは、どう考えてもおかしい。


 もしかして、このダンボールか?


 ダンボールは時々変な匂いがする。
 それこそ卵が腐ったような、そっち系の匂いが…


 玄関前の芋を入れているダンボールを嗅ぐと、少々臭うが、まさかここまで漂うものではないだろうと推察し、今一度、鼻穴を広げた。

 首と眼球を、左右前後と小刻みに動かしながら、匂いの根源を探した。

 私の鼻はとても効くのだ。


 オデコに人差し指を当てその場でウロウロし、古畑任三郎さながら、私はピンときて顎をなでた。


ははぁ〜ん
そういうことですか。


 下の住人が、ベランダに魚を干している光景をよく見る。
 七輪で魚を焼いていることも知っている。

 ご主人が釣りが趣味なのかもしれないし、魚屋で働いているのかもしれない。



クサヤだな。

これは、クサヤの匂いだ。

クサヤの匂いを知らないが、クサヤに違いない。


 クサヤは食べたこともないが、そっち系の匂いで苦手な人も多いと聞く。間違いない。

 クリスマスイヴにクサヤ祭りをしている階下の家族たち。

 どんなパーティーなのかとても気になってしまった。

 予想では、クサヤとチキンとケーキ。あながち間違いではないかもしれない。

 臭い臭い♪ヤバいヤバい♪と盛り上がり、とても楽しそうなクリスマスパーティーだ。

 他人の家は青く見えるとはこのことだ。
 クサヤが超最高級品の魚に思えてきて、食べたくなった。


 そんな私は少し高価な牛タンを食べた。テイクアウトである。

 そしてその後、硫黄臭が数日間消えない高度な入浴剤を入れてお風呂に浸かった。

 私の体からは温泉街の匂いが漂っている。

 この硫黄な臭いも、他人には青く見えるのだろうか。




最後までお読みいただきありがとうございます♪
また来てね♡


〜おまけ〜
念入りにお風呂掃除をした。
気づいたらズボンの裾が絞れるくらい濡れていた。
体力が無さすぎるのか直ぐにバテてしまったが、何とかやり切った。
お風呂掃除というのは何故あんなにも疲れるのだろうか。

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えりやん
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