1/29/24(月) お茶を飲む
やっと今日は日が差して23度。体がとても楽に感じる。15度なんて東京の冬ならむしろあったかいと感じるのに、台北ではそれがすごく寒く感じる。朝から母がベランダの植物たちにじゃばじゃばと水をかけて、植物も喜んでいるように見える。私も今日はセーターをやめて、コットンの長袖でちょうどいい。愛之助もベランダにずっと出ている。
いとこおばが具合を悪くしたと電話があって、母が「ちょっと行ってくる」と急に支度をして出かける。こういう時に駆けつけられるようにと思って台湾にせっかく戻っているのに、ちょうどそのタイミングで仕事の連絡がいろいろ入っていて行けない。せめて、と思って、鵠沼のお稲荷さんで元旦に買ってきた健康お守りを、母に託して持って行ってもらった。本当は過年で会う時に、紅包と一緒にお土産で渡そうと思っていた。
「過年どころじゃないって感じだよ」
と、いとこおばのところから帰ってきた母が言う。
いつもえりが台湾に帰ってくるたび、あと何回会えるかな、って思ってね、と以前母が私に言った。いとこおばにはあと何回会えるんだろう。
コンサートの仕事で四国の病院で歌ったことがあった。台湾の歌手だからというので、そういう時はテレサ・テンとかも歌うんだけど、やっぱりテレサ・テンのヒット曲くらいになると、「ああ、この曲聴くの何年ぶりだろ、ほんっと久しぶり!」とか言いながら、みなさん覚えてるところを一緒に歌ってくれたりする。ただ聴いている人も、ああ本当に懐かしいという顔で私の方を見ていたりするから、こっちまで懐かしい気持ちになって、みんなの顔を見ながら、一緒に歌ってる気持ちで歌った。そうしたら一番前に座っていたおばあちゃんが、まだ歌っている私に一生懸命話しかけようとしてきているのに気がついた。ちょっと待ってね、というつもりで、曲の途中でおばあちゃんの方を何度か見ながら、間奏がくるのを待って、おばあちゃんの声が聞こえるところまで歩いて行くと、
「あのね、こっちの方見ないで」
と、おばあちゃんは私に言った。
「あなたがこっち見るとね、泣いてしまうから」
立ち止まった私を見て話すおばあちゃんの目から、涙がぽろぽろあふれてきた。
いとこおばのことを考えていたのに、いつの間にかあのおばあちゃんのことを考えている。そう書いているところに、仕事のいい知らせが入って、いとこおばと、四国の病院のおばあちゃんと、いい知らせと、ぐちゃぐちゃになってきて、さっき淹れたお茶を飲む。ああ言われて、私はあのおばあちゃんをもう見れなかったけど、やっぱり視界の端っこでちょろっとだけ見てしまった気もする。今日は夜になっても冷えない。まだ18度ある。
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