宝探し(Twitter300字ss)
宝物を蒐めるのが好きだった。
小さい頃はビー玉や鳥の羽、何の役にも立たない代わりに幼心をつついてくれるようなものを。ある程度長じてからは好きな作家やジャンルの本を蒐集し、絶版本を探して古本屋を梯子した。老境に達してからは、これまでに蒐めたコレクションを眺めるのが楽しみになった。
そして、今。静かに終わりを迎えるだけの状態になって初めて、私が蒐めた宝物はコレクションそれ自体ではなかったのだと気がついた。
ガラクタを手に入れるために挑んだ冒険。同好の友との語らい。物を見ると溢れてくる、それらの思い出、人と交わした感情が、私にとって、かけがえのない宝物なのだ。私は生涯、宝探しをしていたのだ。
空白合わせて300字ジャスト。お題は「宝」でした。
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