ディモルフォセカ(誕生花ss)
対象の思考の癖を学習することで人格や行動パターンなどを模倣し、人間の代わりに働くことのできるロボットを開発した、と大手IT企業が発表し、人々は歓声を上げた。一度、思考パターンをインプットしさえすれば、自分の代わりに職場へ行かせて働かせることができるというのだから、ありがたい話だ。
翌日から、多くの職場にロボットが出勤するようになった。持ち主の容姿も可能な限り再現し、似たような行動をとって働くので、それほど抵抗なく受け入れられていった。
だが程なくして、ロボットたちが持ち主のしないようなこともし始め、あちこちで混乱が起こった。持ち主は勤勉であるはずのロボットが仕事をサボって欠勤したり、寡黙な持ち主のロボットがお喋りに興じて、同僚に迷惑をかけたりし始めたのだ。しかし、誰よりも迷惑したのは、ロボットの持ち主たちだった。表向きには隠し通してきた、自分の内面までをもさらけ出されてしまったからだ。
企業はすぐに商品を回収した。
多くの異なる思考パターンを場面によって使い分けるという高度な処理は、やはり自分たちにしか出来ないのだ、と、人々は再び出勤しながら思った。
形が異なる2種類の種をつける、という、名前の由来となった特徴から着想しました。
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