露
この頃ショパンを弾きたいという子が多い。
とくに中高生。
繊細な年頃に、ショパンは確かによく似合う。
少し前にプレゼントで頂いた
エリックエマニュエル・シュミットの本
『マダムピリンスカとショパンの秘密』には
こんなシーンがある。
ショパンを弾きたくてウズウズしている
若きエリックに、
ポーランド人のマダムピリンスカは
1週間ピアノに触らないことを命じる。
かわりに毎朝リュクサンブール公園に行って
朝露をこぼさないように
そうっとそうっと花を摘むこと。
そしてsilence (休符、静けさ)を聴くこと。
そうっとそうっと。
このシーンを今、偉そうに生徒に語る私だけれど
その昔留学したての頃、今は亡き恩師のマダムに
言われたことがあった。
あなたはパリにいるのよ、
ピアノばかり触っていないで
絵を観に行きなさい
教会へ行きなさい
そして、それから5時間は弾きなさい。
作家となったエリックにマダムピリンスカは言う。
見知らぬ大勢ではなく
誰かのために書いて。
別の孤独を生みだす孤独の中にいたショパンのように
音を出しながらではなく
静けさを作りながら書きなさい。
そうっとそうっと。
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