遺すこと
先日「映画大好きポンポさん」という映画を見た.
ポンポネットさんという映画プロデューサーの下で働く,映画への熱い情熱を持ったジーンくんという少年が初監督作品を撮りきるまでを描いたアニメーション映画である.
この映画の中に,フィルム倉庫の中でジーンくんとレジェンド映画プロデューサーが語らうシーンが出てくる.ジーンくんは迷いや葛藤をレジェンドに打ち明け,レジェンドは遺されたフィルムを切ったり貼ったり再編集して遊ぶ.
私はこのシーンを見て涙が止まらなくなった.全編通して映画への愛が溢れた映画の中に一瞬でも,遺すこと・遺されたもの・遺されたものを今の視点で楽しむことが描かれていたことに,この上なく胸が熱くなった.
何十年,何百年の時を超えて遺されたものを見るたび,私は一人じゃないんだと感じる.何十年,何百年前にも,様々なことを考えたり悩んだりした人間がいるんだということがわかる.自分の内にあるものを外に出そうとした人間がいるんだということがわかる.遺されたものに生かされていると感じることが幾度もあった.
そして,今は,何かを遺すことにほんの少しは貢献できているのかなぁ,と思える仕事をしている.憧れた仕事だったし,楽しいし,恵まれているなぁと思うんだけど,今は気合いが入りすぎて空回りしてやり場のない怒りを抱え込んでしまうことが多い.自分が考えることは,今は一緒に働くチームの文脈の中でうまく形にすることができていない.とりあえず少し肩の力を抜いて,いつか自分の内にあるものを外に出して,たくさんの遺されたものに並べて遺したいな.
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