唇とお尻の穴って同じなんだって
「唇とお尻の穴って同じなんだって」
と、息子が言った。
「え?どういうこと?」
と聞いたら、
「同じ種類の皮膚からできてるんだって」
という返事が返ってきた。
そういうことね。
言われてみれば、何年か前に漆かぶれで全身が腫れあがったとき、唇とお尻の穴には湿疹ができなかった。
そこだけ何か違うんだろう。
唇とお尻の穴は、入口と出口でもある。エネルギー補給過程の始まりと終わり。口から始まる管は驚くほど機能に長けていて、最終的にお尻の穴へたどり着く。
また、口の周りもお尻の穴の周りも外の肌に隣接していて、そこから私たちの体の外側と内側がスムーズに繋がっている。つまり、私たちの体は外側を包む肌の層と、内側に続いている内臓の管の二重構造。その2つの次元の接続部を担うのが唇とお尻の穴だ。
壮絶な情景ではないか。
まるでファラデーの電磁誘導の法則みたいに、他方向かつ規則正しく循環する複雑な流れ。
念のため断っておくと、私は電磁誘導の仕組みについてはよく知らない。
さらに、この構造の始まりと終わりを繋げることができたなら、二重のメビウスの輪もしくは二重のインフィニティーマークのような、究極のシンボルができるような気がした。
頭の中の壮大な情景が、想像できないレベルになった。これは実際に見てみなければならない。
幸いなことに、これを体現できる存在がごく身近にいた。うちの猫である。体をねじってお尻をきれいにするそのポーズこそ、次元を越えたインフィニティー…
のはずが、いたって普通。
状況を簡略化して観察するために、マカロニで再現してみた。
いたって普通。
入口と出口が繋がったことで、内側の管は終わりなき循環を始める。でも、同時に外側への移行部分は閉じられてしまった。
結果的に、外側は外側だけ、内側は内側だけで完結することになり、2つの次元の壮大な動きは止まってしまった。
マカロニの内側と外側、ただそれだけ。
結局、繋げない方がよさそうだ。
普段の私たちのあらゆるポーズこそが、壮大な多次元構造なのかもしれない。