「まつわる紐、ほどけば風」 感想
北九州芸術劇場クリエイション・シリーズ「まつわる紐、ほどけば風」を配信で観劇しました。
「女性の問題」についての纏まってない箇条書きの状態のように感じました。〈女性の生き方を問うドラマ〉とありますが、主語を性別一括りにしているのは極論だけど差別であって。二組の夫婦については女性だけの問題ではないし、不妊や社会進出についても深く描かれないから説得力を感じられませんでした。
<劇団員医者夫婦>
愛梨の言動にリアリティを感じませんでした。彼女は演劇を続けながら習い事(ボルダリングジム)にも通い、お友達とお茶をする時間、そしてお金の余裕がある。働いていたとしてもアルバイトくらいの稼ぎだと想像されます。そんな彼女が離婚後の生活の不安もなく、あんなに啖呵切って離婚届を出せるとは考えにくいです。世の中に一体どれほどの女性が金銭的な問題で離婚を切り出せないでいるか……。むしろ今日の社会問題はそちらにあると思います。
<不妊治療夫婦>
「不妊治療」という言葉から想像できるものの域を出なかったという印象でした。
<久代と鉄道オタクの男性>
ストーカーだし不法侵入だし怖い。結果的に惹かれ合うにしても過程が全くないので納得できない。家に上がってきた時ボルダリング仲間が茶化して面白がってるのは普通なら考えられないと思います……。 ましてや久代さんは男の人が苦手みたいな発言をしていたのに……。
<学生三人と母>
レズビアンを物語のために消費しているように感じました。理由は、描こうとしている要素が多すぎるのか彼女たちについてのエピソードが端折られすぎていて、共感できなかったからです。今作の全体に言えることですが、物語のために登場人物を蔑ろにするのはやめてほしいと感じました。
久女?は物語にうまく絡んでいるように思えず、必然性を見出せなかったです。
ラストシーン、壁をなぜ登らねばならないのか? そして、ひとりひとりでいいと言いながらひとりでいた久代さんの幸せが男性パートナーを見つけることというラストは、本来描かれるべき〈生き方の多様化〉を否定して、前時代の価値観の枠に押し込めているように感じました。
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九州の数少ない芸術劇場から発信される作品として、今作はどうしても上記のことが気になってしまいました。私自身もお世話になっている劇場で、知り合いの方もたくさん関わっている中、こういった感想をあげることがちゃんと気持ちの通りに届くかなという不安もありましたが、自身の問題意識、これからの生き方について関わる部分でもあるので、こうして文章にしてみました。また直接会える人とはゆっくり感想を言い合ったりしたいです。
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