焼き立てパンとささやかな幸福
僕が住んでいるアパルトマンの階下には、こじんまりとしたブーランジェリーがある。
朝から晩まで、小さな窓の向こうでせっせとパンが焼かれている。
だから、玄関のドアを開けた時、エレベーターで加工する時、いつだってほのかに焼き立てのパンの香りが漂ってくる。
それは、温かくて柔らかくて、ちょっとした幸せを届けてくれる香りだ。
この匂いを嗅ぐたびに、僕は思う。
たぶん、この建物に住んでいる全員が、この香りにやられているんだろうなって。
どんなに意志が強い人間でも、毎朝バゲットの香りが鼻先をかすめるたびに「まあ、一つくらい」と思ってしまうに違いない。
実際、僕だってそうだ。
目覚ましが鳴る前に鼻がパンの匂いに反応して、気づいたら階段を降りている。
カウンターに並んだクロワッサンやエクレアを前にすると、自分が何を求めていたかなんてもう考えるまでもない。ただ買うだけだ。
この環境は、間違いなく僕たちを太らせている。
けれど、それはちょっとした代償だとも言える。だ
って、毎日パン屋が提供してくれる幸福感は計り知れない。
外が雨だろうと風が吹こうと、そこに焼きたてのパンがある限り、世界は少しだけ明るく見えるのだから。
もしかしたら、ここに住んでいる誰もがそう感じているのかもしれない。
日々のちょっとした誘惑に負けてしまう自分を許しながら、焼き立てパンの香りに包まれて暮らすことを特別な喜びとして受け入れている。
たとえ体重が少し増えたとしても、まあ、それくらいは許されるだろう。
これで2記事目。
もしあなたがこんな僕を応援してくれるというのであれば、その旅路を少しだけ見守ってほしい。
どこか、あなたの一杯のコーヒーの向こうで。
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