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Pavilion of Participating Countries / Venice Biennale 2019

Venice Biennaleに行く時は最低でも3日は滞在することをおすすめします。GiardiniとArsenaleはそれぞれ1日ずつ、そして残る1日で島に点在する各国パヴィリオンを歩き回る。この3日目が実は大変で、コースを間違えると大きく遠回りをすることになります。早く閉まるパヴィリオンもあります。今年もそれで見ることができない場所がありました。計画が大事。Venice Biennaleはそういう意味でも体力と精神力を使います。

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ニュージーランドパヴィリオンでは、記録されない/目に見えない小さな出来事を拾い上げ印刷し続けるプロジェクトです。

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アンドラ公国の展示。作家というよりアイドルを推しているような様子の展示空間でした。

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エストニアの展示はKris Lemsaluの作品。もろに男性器女性器だったので写真は割愛します。「A punk pagan trickster feminist sci-fi shaman」な彼女の作品の中心にすえられた女性の象徴が着ている服や手に持っている様々な道具は社会の取り組まなくてはならない現状なんだろうと想像します。

エストニアは前回(2015年)に訪れた際も男性器もろで、国の恥部ともいえる事件をとても美しく作品に仕立て上げていました。この国における美術の立ち位置がとても気になります。

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Hrafnhildur Arnardóttir / Shoplifterによる幻想的な空間展示となったアイスランドパヴィリオンでは、オリジナルの楽曲(メタル)が空間の色彩に応じて使い分けられていたようです。

インスタ映えをする場所だからでしょうか、Giudecca島の外れにある会場にも関わらず若い女性や子ども連れの家族までかなりの入場者でした。

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バングラデシュパヴィリオンでは女性作家の展示が目立っています。スタッフに聞くとやはり国内ではこういった活動はできないとのこと。そういう国の現状を国際芸術祭で伝えようと苦慮されている国が多く、身が引き締まります。

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Malaysiaパヴィリオンではテレビが裏向きに設置された展示がありました。20個ほどあるテレビからはそれぞれが聞き取れないくらい様々な言語で放送されていることが伝わります。ヒンズー教、仏教、イスラム教、その他様々な宗教や、マレー系、華僑、南インド系、その他様々な民族が混在している国だからこその問題意識なんでしょう。

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クロアチアパヴィリオンでは内戦後の時代の移り変わり、特に社会主義から資本主義への変化の現実を突きつける展示でした。3つの手法を用いたリサーチ展示となっており1つ目は「Wild House」というもの。ご想像の通りの様々な家についての展示。次は手工芸品を入り口に地方を。そして工場の解体を通じて社会構造の変化、特に家族の変化を見せています。

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GiardiniやArsenaleの力強い展示も素晴らしいですが、こうした街なかに点在している各国パヴィリオンでそれぞれの国が、国にある美術系の団体が、アーティストが何を見せようとしているのかを知ることは重要です。

モンゴルパヴィリオンでスタッフの方と話しました。彼女は団体の職員で、パヴィリオンは国の予算などではなく所属している団体が(国の後援はもらうもののお金は出ない)苦しみながらも参加しているものでした。上記したバングラデシュも同じような状態です。美術を通じて戦っている人たちの力強い言葉を聞くだけでも、何かを気づくきっかけになります。少しでも美術や海外のことに興味のある人はVenice Biennaleに出かけてください。そして街なかの小さなパヴィリオンまで足を運びコミュニケーションをしてください。

来年は2021年。体力が残っていればまた私は歩きに行くでしょう。

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