「首木の民」
誉田哲也さんの新作が出ると、つい読んでしまう。
例え、殺人とかグロい描写があっても、登場人物の細かい描写がすばらしく、「この人なんか情けないところもあるけど、人間の芯の部分は信じられるかんじがする」といったように、読み進めるうちに魅了されてしまい、あれよあれよと最後まで読んでしまうから。
図書館で予約待ちでようやく借りられて一気に読んでしまった。
給与明細を見て、「税金ってなんでこんな高いんだろう」と、ふと考えてしまう人は読んでみてほしいなと思う。
登場人物の一人、警視庁志村警察署の刑事組織犯罪対策課の佐久間龍平係長と、窃盗と公務執行妨害の被疑者である大学の客員教授の久和(くわ)秀昭氏との取調べ中の会話が、とても印象的だった。
久和は初日の取調べの冒頭で、「私は、ありとあらゆる公務員を信用していない、警察官も公務員だから信用しない」と発言する。
そして、「被疑事実については供述しないが、公務員を信用しない理由は説明可能」だという。
佐久間は、できれば無駄話には付き合いたくないけど、供述しないと宣言されてしまったので、久和が自発的にしてくれる話なら聞かないよりは聞いておいた方がいいと判断して、久和が言う「公務員を信用しなくなった理由」を聞くことになる。
それは、『そもそもお金とはなんなのか』という話から幕開けし、日本の経済成長から財政という壮大な話に繫がっていく。
そもそも「お金」って?
日本は借金大国?
国債ってあるよね。
疑問に思っても、日常生活の中では他の事柄に忙しくそのままにしてしまっている。
もしかしたら、そういうことって本当は怖いことなんじゃないかなと、誉田哲也さんのこの作品を読んで感じてしまった。
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2016年12月の読売新聞に、元米国国務長官のヘンリー・キッシンジャー氏のインタビュー記事の中で、インタビュアーから「インターネットが民主主義の姿を変えようとしていること」について聞かれて、こう答えていた。
とても気になったので、記事は切り抜いて保管している。
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やっぱり気になったこと、違和感を感じること、なんとなく納得できないことは自分で調べて、一次情報や二次情報もちゃんと吟味して記憶して、そこから自分の頭で考えて、自分なりの答えを出し続けるしかないということを、改めて考えさせられた作品だった。