「人生の道しるべ」
自分にとって「善きもの」に見たり触れたり読んだりすると、比喩かもしれないけど、心やお腹のあたりがぽっとあったかい気持ちになることがある。
この対話集を読んで、すぐにその気持ちになり、読み終わった後も、まだその温もりが残っている気がする。
宮本輝さんに、吉本ばななさん。
お二人の著作をずっと読み続けてきた自分にとって、この対話集は大事にしていきたい宝物と言っていい。
「対話」の目的は、お互いの意見や感情を尊重し、理解を深めることと言われるが、作品紹介にあるとおり、珠玉の対話集だった。
お二人の歳の差は、約20年弱ほどあるので、そういった場合、年長者が年少者をリードしたり、少し諭すような雰囲気になったりすることが考えられるが、この対話集にはそういったものは感じられなかった。
その理由としては、お互いがお互いを「作家」「小説家」として、尊重していることがベースとしてあるからではないかと思う。
また、個人的な私感ではあるけれど、「魂」という概念があるとするなら、お二人の「魂」はなんとなく重なり合う、共鳴するようなかんじなのではないかと、対話集の全部を読んで感じた。
この対話集のハードカバーは2015年に出版されていて、自分が買ったのはその文庫版だ。
まえがきは宮本輝さんが、あとがきは吉本ばななさんがそれぞれ書かれているのだが、文庫版には文庫版のまえがきとあとがきがプラスされている。
その、まえがきとあとがきが、宮本輝さんと吉本ばななさんの往復書簡のようなかんじで、とても「善きもの」だった。
この先の人生でも、宮本輝さんと吉本ばななさんの作品たちを読み続けていきたいと、改めて思わせてくれる対話集であり、読めたことにより、お二人の偉大な作家より「幸せ」を受け取った気持ちになった。
これからも、コツコツと「文学」を読み続けて、自分の心や魂を磨いていけたらと切に願っている。