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「人生の道しるべ」

自分にとって「善きもの」に見たり触れたり読んだりすると、比喩かもしれないけど、心やお腹のあたりがぽっとあったかい気持ちになることがある。

この対話集を読んで、すぐにその気持ちになり、読み終わった後も、まだその温もりが残っている気がする。

世代も作風も異なるふたりの作家の共通点は、人間の「生」を力強く肯定する作品を書き続けていること。「ぼくは、小説の世界では、心根のきれいな人々を書きたい」(宮本輝)。「読んだ人に『自分と同じだ』と感じてもらえたら、ちょっとした治癒が起きるんじゃないか」(吉本ばなな)。創作の作法、家族、健康、死生観……。小説が問いかける「幸せ」のかたちとは? 知恵と思索が詰まった珠玉の対話集。

集英社文庫 「人生の道しるべ」 
宮本輝 吉本ばなな 著
作品紹介より

宮本輝さんに、吉本ばななさん。
お二人の著作をずっと読み続けてきた自分にとって、この対話集は大事にしていきたい宝物と言っていい。

「対話」の目的は、お互いの意見や感情を尊重し、理解を深めることと言われるが、作品紹介にあるとおり、珠玉の対話集だった。

お二人の歳の差は、約20年弱ほどあるので、そういった場合、年長者が年少者をリードしたり、少し諭すような雰囲気になったりすることが考えられるが、この対話集にはそういったものは感じられなかった。

その理由としては、お互いがお互いを「作家」「小説家」として、尊重していることがベースとしてあるからではないかと思う。

また、個人的な私感ではあるけれど、「魂」という概念があるとするなら、お二人の「魂」はなんとなく重なり合う、共鳴するようなかんじなのではないかと、対話集の全部を読んで感じた。

この対話集のハードカバーは2015年に出版されていて、自分が買ったのはその文庫版だ。

まえがきは宮本輝さんが、あとがきは吉本ばななさんがそれぞれ書かれているのだが、文庫版には文庫版のまえがきとあとがきがプラスされている。

その、まえがきとあとがきが、宮本輝さんと吉本ばななさんの往復書簡のようなかんじで、とても「善きもの」だった。

この先の人生でも、宮本輝さんと吉本ばななさんの作品たちを読み続けていきたいと、改めて思わせてくれる対話集であり、読めたことにより、お二人の偉大な作家より「幸せ」を受け取った気持ちになった。

これからも、コツコツと「文学」を読み続けて、自分の心や魂を磨いていけたらと切に願っている。

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