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妊娠出産記⑧緊急帝王切開、は驚きの連続だった
夫は知らない、手術室のアットホームさ
急な妊娠高血圧により、妊婦健診からそのまま緊急入院、そして緊急帝王切開ということになった。夫は仕事を早退し、荷物を持って急いで病院に駆けつけてくれた。
「旦那さんが間に合わなくても、準備ができたらすぐに手術室に入るので」と言われており、時間的には微妙なところだったが、なんとか手術室に入る前に顔をあわせることができた。私もそうだったかもしれないが、夫の顔は明らかに緊張していた。
手術室に入るとまず入り口で、本人確認や、アクセサリーを身につけていないかなど、様々な質問を受けたうえで、手術台に運ばれた。
麻酔科医からも改めて本人確認を受け、機械的に生年月日を答えたところで「うちの息子と1日違いだね!」と明るく言われた。緊張しっぱなしだったので、一瞬何を言われたか分からず、「へっ、へぇ〜」と変なリアクションをしてしまったと思う。
そしていつも検診をしてくれる、怖い女の先生も入ってきた。再び緊張していると、「ちょっと、音楽かけて」といつもの冷たいトーンで指示をしていた。
は?と思っていると、どこからかAikoの歌が流れてきた。この人、Aikoとか聞くタイプなんだ・・・(後から調べてみたら、手術室で音楽をかけるのは定番らしい)
ぶっつけ本番!帝王切開の流れ
帝王切開の可能性は全く想定していなかったので、多少なりとも調べておけば心がまえができたのかもしれない・・・とこの段になって後悔していた。とはいえ、私は横たわっているだけで段取りは進んでいく。
まず横に向いて、背中から麻酔が打たれる。そういえばこの背中の麻酔がすごく痛いと聞いたことがあったような・・・と思って緊張していたが、ほとんど痛みを感じずに終わった。
麻酔が効いてくるにつれて、なんだか体の中があったかくなるような感覚があり、胃の中のものが出てきそうな、要は吐きそうな感覚になってきた。
そんな私の様子を知ってか知らずか、麻酔科医からは「ちょっと気持ち悪いよね?でも実際吐いちゃう人はほとんどいないから安心して」と言われた。計画的に帝王切開をする人は、朝から何も食べないはずで、私は緊急のため通常通り朝ごはんを食べてきているので、それでより「出そう」な感覚があったのかもしれない。
しばらくすると麻酔科医が冷蔵庫から小さい瓶をもってきて、私の体にあてた。あれ、普通に触れてる感覚あるな、と思っていたら「冷たさを感じますか?」と確認された。確かに冷たさは感じなくなっていた、麻酔ってすごい。肩から手にかけては感覚は残っていて、逆に胴体側は感じなくなっている状態だった。
そして、ついに手術が始まった。病院の待合室では、グッドドクターというドラマを見て時間をつぶすのが定番だったので、「よく見るこのシーン!」と内心おかしなテンションになっていた。(この時、音楽はミスチルに変わっていた)
ついに誕生!赤ちゃんは想像以上に堂々としていた
手術が始まって5分くらいで、「赤ちゃん産まれますよ」と言われた。初めての手術室を楽しんでいた私だったが、さすがにこの場ではきゅっと心が引き締まった。ああ、なんてったって早産なんだもんな、大丈夫かな・・・
赤ちゃんが出てきた姿が目に入る。あれ、泣き声が聞こえない。あれ、あれ?・・・「ふえ〜〜っ!!」
よかった、よかった、と思う暇もなく、赤ちゃんは助産師さんに抱えられていく。泣き声が聞こえたら安心するというけれど、この段ではまだ「大丈夫かな」の方が大きかった。聴診器を当てて、もう片方の手で拍数を数えているようだ。その手を私はじっと目で追った。
そしてついに、私の元へ赤ちゃんを連れてきてもらった。
産まれたばかりの赤ちゃんは、かよわくて、壊れそうな存在だと思っていたが、実際にはなんだか堂々としていた。「へ〜、そんな心配してんの?私なら元気だけど?」とでも言っているような感じ。
産まれた顔を見て名前を決める、という話を聞くと「そんな産まれたばかりの顔で性格なんてわからないでしょ」と思っていた。でも産まれた我が子にあって初めて会った瞬間、「この子は芯が強くて、人の目を気にせずに突き進める子だろうな」と感じた。直感ってあるんだな。
また赤ちゃんが回収されていって、しばらくすると「XXXX グラムです!」という声が聞こえ、その瞬間に怖い女の先生が拍手して「立派!よかったね〜」と言ってくれた。早産ではあったが、低出生体重児ラインである2500gは上回っていた。
気づくと、手術室の音楽はAIの「ママへ」など誕生を祝うような曲に変わっている。聞くと、この曲は手術室全体で共通で、この曲になると「産まれたんだな」とみんなわかるようになっている、とのことだった。私は総合病院に行っていたので、きっと隣ではガンなど様々な病気の手術もしていることだろう。とても「ハッピーバースデー!」な気持ちになれない人もいるだろうから、なんだか申し訳ない気持ちにもなった。(全身麻酔がほとんどだから患者さんには関係ないのかもしれないが)