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好きなゲーム音楽を語る 番外編「ポケモンゲーム名曲選」
ポケモンは恐ろしいゲームである。
今や世界中で愛されるコンテンツ。ポケモンと聞けば誰もがイメージするキャラクターの愛らしさに目を惹かれるが、本質はバトルゲームだ。
プレイヤーは頂点を目指す冒険に出かける。自然を潜り抜け、街々を渡り歩きながら仲間と出会い進んでいく。そんな冒険の雰囲気を引き立て盛り立てる素晴らしいBGMもポケモンシリーズの魅力であろう。
勿論音楽だけに留まらずキャラクターの愛らしさ、頂点への憧れ、工夫され続けるシステム、更にはグッズやカードゲームなどなど、私も二十数年楽しみ続け今もなお満足が用意されているポケモンは、本当に恐ろしいゲームである。
今回は「好きなゲーム音楽を語るシリーズ」番外編としてゲームハード毎ではなく、ポケモンシリーズからゲーム音楽を紹介したいと思う。素晴らしい音楽に溢れており甲乙付け難いが、私が特に好きなBGMをいくつか挙げてみようと思う。
マサラタウン(ポケモン赤緑)、ミシロタウン(ポケモンルビー・サファイア)
ポケモンは基本的に自宅からの旅立ちでゲームからスタートする。
少年が生まれ育った街を離れ、沢山のポケモンや景色人々に出会いながら物語が展開する。
ゲーム後半になると移動手段が増え気軽にホームタウンに帰る事ができるようになるのだが、久しぶりに故郷に流れるメロディーを聞くと、旅を始める前の自身を思い返す事が出来る。あの日のメロディーが出迎えてくれる。
変わらない故郷があるからこそ、恐れず進んで行けるのだ。
このメロディーを聞きながら繰り返しゲームを遊んだ私も、実際に生まれ故郷に帰ると当時の思い出と共にこの音楽が聞こえてくる。思えば随分遠くへ来たものだ。
マサラタウンと同じぐらいに気に入っているルビー・サファイアのミシロタウン。山々に囲まれた街に穏やかな風が流れるような、ここから世界が広がっていくのが想像できる温かみのある音楽が特徴だ。
赤緑は一人で遊んでいたが以降の作品、特にルビーサファイアは居間で弟と二人で遊んでいたあの日の記憶が蘇る。
戦闘!ジムリーダージョウト(ポケモン金銀)
ポケモンシリーズにとって「ジムリーダー戦」は重要な項目だ。
ジムリーダーは冒険で訪れる各地のエリアボスと言った所か。
そもそも目標であるラスボス、チャンピオンに挑戦する為には各地のジムリーダーを倒して挑戦権を得る必要がある為、ゲーム攻略で必ず行き当たるポイントである。
リーダーと言うだけあって緊張感のある戦いが展開される。各作品ごとにジムリーダー戦の音楽が用意されているが、個人的に印象深いのは作品第二世代、ポケモン金銀のジムリーダー戦だ。
早いテンポで揺れ動くメロディーラインの中にポケモンが戦う姿が見えてくる。実際にはゲームボーイカラーの中の動きの少ない画面だが、音楽が戦いのイメージを模る。
私のターン、早いテンポに鼓舞されるかのようにポケモンに指示を出す。攻撃が当たるがまずまずの具合か。相手のターン、技を繰り出されると今度は分厚い効果音が鳴り、目の前の私のポケモンが倒れた。
焦りながらバッグを開き、こちらの残りの手持ちの状態を確認する私に、先程まで鼓舞してくれていた音楽が次の展開を囃し立てるように鳴り響く。ここは戦いの世界。力無き者を追い立てるようだ。
必死に思考を巡らせ手を打つ。
飛び出したポケモンの鳴き声が音楽と混じり合う。
電子音の渦の中、プレイヤーは戦い続けるのだ。
プツッと音が鳴り、画面横の赤いランプが消える。
当時の携帯型端末には電池を使用して遊んでいたのだが、どうやら遊びすぎて切れてしまったようだ。
早速親に電池をねだるが難色を示される。「この前電池買ったばっかりやのにもう無いの?」さあこれはどうやって説得するべきか。鋭い指摘にたじろいだその時、メロディーが頭の中で鳴り出した。
キキョウシティ(ポケモン金銀)
ノスタルジックでどこか切なさがあるメロディーが印象的なキキョウシティ、こちらもポケモン金銀の音楽だ。
街に入った時だけ流れる、冒頭の音が味を出している。
基本的に音楽はループ再生なのだが、一度曲終わりまで流れると以降、冒頭の音が入っていない後半部分でループが再開する為、わざわざ一度街を出てまた街に入り直す事で冒頭の音を楽しんでいた。
おまわりさん!街の入り口をうろつく、怪しい帽子の子が居ます!!!私です!!
あれっ、もしや音量最大にして音楽プレイヤーのようにして聞いていたから電池の減りが早かったのか?
戦闘!ホウオウ(ポケモンハートゴールド・ソウルシルバー)
冒頭、弦が弾かれる。音を合図にバトルが開始する。曲を盛り立てる鼓の音、伝統的な音に伝説と呼ばれるキャラクターに相応しい煌びやかなメロディーが印象的な一曲だ。
HGSSは上記のポケモン金銀のリメイク作品なのだが、今作でホウオウイベント専用曲が用意された。
えー何この曲カッコ良い。
当時ギャルとして学校に通っていた私は、周囲の友人達が流行りの歌姫を聞く中、このポケモンHGSSのサントラを繰り返し聞いていた。
休み時間にメイクを直しながら、有線イヤホンを耳に入れる。近くの席のギャルがストローで紙パックの飲料を吸い上げながら声を掛けてきた。
「絵里加何聞いてるん?」「この前出たポケモンのサントラ」「ええやん!」ギャルは感受性が豊かである。
日本史の授業中、頭の中で音楽を再生しながら授業を受けていると音楽と記憶がリンクしたのか、その期末テストの成績が向上した。頭の中でホウオウ戦の音楽を流すとスラスラ答案できたのだ。
何その効果知らん。少し怖かったです。
ホドモエシティ(ポケモンブラック・ホワイト)
誰か助けて欲しい!
この記事を書く為に久しぶり聞き直したのだが、頭を離れない。
中毒性というものを音楽にしたらこうなるのであろう。
1ループで40秒ほどの短い曲なのだが、追いかけたくなるメロディーが脳にインプットされ、聞けば聞くほど脳回路が太くなり、さらに報酬系が働き心地よくなってしまいこの音楽から抜け出す事が出来なくなる。名曲でありながら劇薬のようでもある。
どこかアジア的な雰囲気もあるこの曲は海外では特に大人気であり、ホドモエシティのメロディーに合わせて踊るネットミームが話題となった。もしかしたら知らぬ間に聞いたことがある人も居るかもしれない。
日々落ち込んだり嫌な事があっても、この曲を聴いているとあれなんだか大丈夫かもと気持ちが動き、さらに曲に合わせて小躍りすれば気分が晴れ渡っていく。
さあこれを読んでいる貴方にも体感していただきたいのでホドモエシティの音楽を聴いてきてください。
決戦!チャンピオンダンデ(ポケモンソード・シールド)
初めて聞いた時、大号泣してしまった。
バトルが大きな産業になっている今作は、観客ひしめくドームの中で戦う事となる。観客サポーターの熱気を表すように、曲の中に観客のコールが入っているのだ。
そんなコールに合わせて流れる、本編ラストバトルで流れるこの音楽は、なんと初代ポケモン赤緑をクリアした『殿堂入り』の際に流れるBGMのアレンジとなっている。
…ここからは勝手な妄想なのだが、この曲が流れるダンデというキャラクターは、相棒に初代のポケモンを持ち、ソードシールドの主人公達より上の世代の人物だ。
考察大好きファンの思考が加速する。ああきっと、このキャラクターが意味する所は、初代を遊んでいた私たち世代なのだろう。当時ゲームボーイを握り締め喜んだ音楽が聞こえてくる。あの頃の音楽と今の音楽が重なっていく。私は、あの頃の私を超えていかなければならないのだ。
熱気の中勝敗を決する。
かつての音楽に今度は背中を押された。
さあ、勝たなければならない。
※後半つらつら妄想で書き上げました。
今回書いていて思ったのだが、私が毎回言っている「ゲーム音楽は体験する音楽」というのはひょっとすると、このポケモンシリーズで刻み込まれたのかも知れない。
フィールドを移ると音楽が変わる、バトルの高揚感を音楽で記憶する。
情報が今ほど組み込めなかったからこそ近い距離で音楽体験を得る事が出来たのだろう。
現在ポケモンシリーズは専用ページで音楽を楽しむ事が出来る。
随時更新なのでまだ登場していないシリーズもあるが、当時遊んだ作品の音楽がある方は是非音楽も楽しんでいただきたい。
最新作スカーレット・バイオレットや新シリーズlegendsアルセウスなどの音楽はNintendo Musicに用意されている。
32歳現在、まだまだポケモンシリーズ新作を楽しみに過ごしています。おばあちゃんになっても「今作の音楽は最高じゃあ」と言って楽しみたい所です。
この先高齢になった私でも、あの頃から遠く離れても、故郷に帰るときっと、あの始まりの音楽が聞こえてくるのだろう。