吉住絵里加

存生

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最近の記事

やらかしポーカーフェイス

 しっかりしているねと言われる。 まあ乱雑より整っている方が心地良いし、物事の前にはそれなりに準備をする。 個人的にそういった印象を抱いて貰えるのは嬉しい事なので出来る範囲で見合うよう努力を重ねる心構えではあるが、時にスカッと丸々抜け落ちるような「やらかし」をしてしまうのが私のミスのパターンである。 まずは私の2つの失敗談を聞いてほしい。  一つは学生時代属していた吹奏楽部で参加したとある大会でのことだ。 吹奏楽は舞台に楽譜を持ち込み、楽譜と指揮者を確認しながら演奏する。舞

    • 推し活での「認識」について

       ある日、スタッフがいつに無く真剣な表情で質問を投げかけた。 「次の休みに初めて推しのライブを見に行くことになったのですが、正直な所、ライブのステージからどれぐらい客席って見えているのでしょうか?」  イベントに参加し、憧れの人に対峙するとき誰もが一度は意識するであろうポイントである。  その場では一緒にいた他の演者が主導して答えていたので回答を任せ私は聞き役に回ったが、良い題材だったのでここで今回は「認識」をテーマに、過去ユニット活動を行い有難いことにライブやイベン

      • 好きなゲーム音楽を語る GBA編

         ゲームで遊んだ思い出を話す時、ボスが強かった、ストーリーの秀逸さ、システム、キャラクターが好きなど人によって出てくる感想は違うが、今回私が推したいポイントは「ゲーム音楽」である。画面に合わせた音楽が私達の進展に臨場感を与え、ゲームの世界を身をもって体感する。音楽に操られるように鼓動が高鳴り喜び、悲しみに暮れる事となる。  今回は個人的に好きなゲーム音楽をいくつか書いていく。 書くにあたってひたすら好きな曲を挙げたら何十曲となってしまったのでゲームハード毎で分ける事にする。

        • 短編まとめ「重力」「お笑いライブを見よう」

          重力 子どもの頃を思い出すと、とんでもない動きをしていたのではないだろうか。 逆立ちして木からぶら下がったり、ただひたすらに高いところに登ったり飛び降りたり。落ち着きなく動き回るエネルギーの塊だ。  通っていた体操教室でトランポリンの授業があった。私は張り切ってクラスの誰よりも高く飛んでみせた。太いワイヤーで貼られた布面を踏み込むと、自身の体重を跳ね返すように高く高く飛び上がる。順番を待ち地面に座り込む人々が私を見上げ歓声をあげている。 その瞬間、自由だった。  毎朝

          最近遊んだゲームたち②

           前回に引き続き、最近遊んだゲームを記録しておきたいと思います。 前回の記事はこちら Chants of Sennaar 異なる文化を持つ住民が階層ごとに生活している。プレイヤーは階層を進む度に、見知らぬ言葉や文化と出会い、言葉を解読し世界の秘密や謎を解いていく事となる。  先に言っておくと、一人ではクリアできなかった。 ひたすら熟考し自分なりに試したが、後半部分で世界観と言語の推測を同時に行う必要がありどうしても行き詰まってしまう。かと言ってこのまま投げ出すには惜し

          最近遊んだゲームたち②

          短編まとめ「無賃乗車」「喋りだす夜」

          無賃乗車 日差しが色濃くなってきたある日、私のもとに祖父の訃報が届いた。 父の地元は山々に囲まれた九州のとある田舎町だ。幼いころは父の帰省に連れ立ち、集まったいとこ達と共に盆と正月を迎えたものだが、私たちの生活が変わるにつれ足が遠のいてしまっていた。  今回葬儀に参列する為、あれから数十年ぶりに降り立つ。何も変わらない景色の中で、私の姿形だけが変わっている。ここに来る為に乗ってきた飛行機が実は時間を遡るタイムマシンで、まるで過去へ戻ってきたような心地になった。  余裕を

          短編まとめ「無賃乗車」「喋りだす夜」

          短編まとめ「脳への空想」「おいでませアパラチア」「それぞれの絵画」

          脳への空想  ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズをぼんやり眺めていたらクランゲみたいになりたいなと思った。 クランゲは全身が脳の見た目のキャラクターだ。私がこのまま老いて姿かたちが曖昧になったら最後には大きい脳みそになりたい。私は昔から脳という物にどこかロマンを感じる。  まあ、本気で実現を目指しているわけではない。子どもの空想の延長線のように聞いてほしい。空を自由に飛んでみたい、魔法が使えたらなどなどこうなったら面白いなと思う私の空想は大きな脳になることだ

          短編まとめ「脳への空想」「おいでませアパラチア」「それぞれの絵画」

          神聖

           私は主人公が命を落としてしまう作品が好きだ。 あくまで創作物フィクションでの話である。 気付いたきっかけは舞台演劇を見ていた時だ。好みの作品が2本ある。  ひとつは闘牛士が葛藤や絶望の末、赤布を投げ捨て猛牛の角に貫かれ、ドラマチックな音楽の中命を落とす。幕が降りるまで闘牛士の名前を叫び続ける恋人役、ステージの真ん中に倒れ込んだ役者の横顔はとても美しかった。 もうひとつは説明が長くなるので作品のタイトルを出すがロシアの作家チェーホフの戯曲「かもめ」だ。 「コンスタンチン・ト

          最近遊んだゲームたち

           幼い頃から主たる趣味がゲームで、かれこれ30年ぐらい遊んでいます。 日頃堅苦しくなりがちな私の文面だが、今回は筆を軽やかに気楽に最近遊んだゲームの感想を書いてみる。 ROBOQUEST  毎回プレイする度、持ち物やレベルがリセットされるシステムをゲーム用語で「ローグライク」と呼ぶ。日本で有名なのは「風来のシレン」や「トルネコの大冒険」「ポケモン不思議のダンジョン」などがある。今作はその要素もありつつより軽めのローグライトシステムであり、臨場感あるFPS視点のゲームだ。  

          最近遊んだゲームたち

          32歳のワードローブ

           「子どもの頃、30代はすっかり大人だと思っていたけれど、実際なってみると変わらないね」 30歳を越えると必ずこの手の話題があがる。  まず私的な結論を出すと、自身の主軸となる意識は皆が言うように変わらないと言える。人によっては魂と呼んだりもするこの「内面」は、物心ついた頃からずっと、ここにある。知識や経験、物事への対処法など入ってくる情報である「外面」の部分が日々変わるのだろう。  内面はまるで素体のマネキンのようだ。 知識や経験の外面部分は、服やアクセサリーバッグなど

          32歳のワードローブ

          あなたが居ないこの世界で

           13年前に上京し、初めてライブハウスに足を運んだ。慣れない土地の慣れない駅、ダフ屋独特のうさんくさい呼び込みの声を聞き流しながら人の流れに寄りかかるように会場へ向かう。幸運なことに最前のフェンスを掴めたものの開演までの数時間、後方から圧迫されふらつく私の前にやっと現れた浮世離れしたスーパースター。序盤は正直覚えていない。演劇のような感情をのせた歌声が私の脳をかき乱した。音源で聞く数倍の情報量。人の表現とはこれ程にもエネルギーに溢れ突き動かされる物なのか。ああもっと知りたい食

          あなたが居ないこの世界で

          銀座の高級スパへ

           2023年暮れ、どうしてもと声を掛けられ、気の進まないまま仕事関係の忘年会へ参加した。世の中の忘年会は8割は行かなくてもいいもので、2割ぐらいが本物ではないか。今回は8割のほうだ。 到着してすぐ始まったビンゴゲーム。手にしたビンゴカードはあっという間に綺麗な斜めの穴があき、景品と言って名刺入れぐらいの大きさの箱を渡される。 なんじゃこりゃと開けてみると私でも知っている銀座の超高級スパの招待チケットが入っていた。  基本的にあまりスパやエステに通うタイプではない。 施術台の

          銀座の高級スパへ