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#2 私の人生を変えた運命の出逢い|まじめなものづくりと日本人が大切にしてきた価値観

第2回は、なぜ私が日本の歴史あるものづくりをライフワークとしようと思ったのか、人生の転機となった2つの出逢いについて、ストーリー仕立てでお話ししたお話ししようとします。


1つめの出逢い:私、Harrodsに営業に行っていい?

2023年の8月。猛暑が続く東京の夏。そんななか、私達は銀座のスターバックスにいた。
「私、今治行きましたよ!タオル買いに!」
「なんてやつ?」
(え、今治タオルは今治タオルなんだけど。。。あ、そういえば、そのあとネットで買い足したからメールがあるはず!メールの履歴を調べて)
「COLOR100!」
「あー、藤高やね」
(え?!なんでそんなのわかるの?!)
「うち、タオル屋なんよ」
今治までタオルを買いに行くぐらいタオル好きな私は、嬉しくなって、タオルのこだわりについて話し出す。
「私、タオルはふわふわがよくて、洗い方にこだわってて。洗濯機まわした後に10分ぐらいだけ乾燥かけるの。そうするとふわふわになるって聞いて」
「もっとええ方法あるよ」
「え!何?教えて!」
「洗濯するやろ。そのあと干す時に角を持ってパンパンパンってやるんよ。それで、干して乾いた後に、10分ぐらい乾燥機かけるともっとふわふわになるよ」
「えー!やってみる!」
(この日から我が家のタオルはとってもふわふわである笑)
タオル屋さんの彼とタオル好きの私は、はじめましてだったにも関わらず、気付けば30分もタオルの話で盛り上がっていた。私が「ふわふわだけど、水を吸って、耐久性も良いタオルがいい」とわがままを言うと、ふわふわにするためには細番手の糸とか、甘い撚りの糸、織り方も調整が必要で、ただふわふわにするとそれに比例して耐久性は落ちてしまうから、そこのバランスが難しい。吸水性をあげるにはしっかり糊抜きをしないといけない。そんなふうに目をキラキラさせてタオルについて話す彼から、ものづくりに真面目に向き合う姿勢、うちに秘めた熱い想いやこだわりを感じ、率直にすごい!格好いい!と思った。
「海外には売らないの?ヨーロッパとか?」
「ヨーロッパはね、なかなか難しいんよ」
「え?!絶対売れるよ!私、Harrodsに営業に行っていい?笑」
会話のなかでふっと出た一言。もちろん簡単なことでないのはわかっている。でも今思うと、それが私の真意だったなと思う。目の前にこんなに真面目に素晴らしいものづくりをしている人がいて、その真心のこもった素敵な製品を、もっとたくさんの世界の人に届けたい!!
そんな想いが湧いてきて、頭から離れなくなった。

2つめの出逢い:出逢って10分で心を掴まれる

2023年10月。大学院1年生の秋学期が始まり、そろそろゼミを考えなきゃと思っていた頃。入学当初はデジタルマーケティングについて研究しようと思っていたけど、なんだか気持ちがのらない。
そんなある日、必修科目の総合経営の授業で転機となる出逢いが訪れる。授業開始10分、東芝の閉鎖する白熱電球の工場で
「120年間、おつかれさまでした。そして、ありがとうございました」
と機械に向かって深々と頭を下げる工員たち。その写真に心が大きく揺さぶられた。私はこの人についていく!この人に教わりたい!直感的にそう思った。それが恩師となる平野教授との出逢いであった。

出所:日本新聞協会

その後も「日本的経営とは何か?」「日本人が大切にしてきた価値観とは?」 という問いを、授業を通じて考え続けた。「日本の強みとは?」「日本の特徴とは?」そして同時に「それが競争力を失う原因になっていないか?」 と考えた。アメリカ型の経営は、株主や短期的な利益を最優先する一方で、日本型の経営は「近江商人の三方よし」 の考え方や、ステークホルダーそれぞれの利益、長期的な視点を重視するといった特徴がある。そうした日本的経営を魅力的に感じる一方で、世界で競争力を失いつつあるのが現実である。このままではいけない。未来の子どもたちのためにも、今、私たちの世代が真剣に向き合い、変革に取り組む必要があると思うようになった。

2つの出逢いが交差する

タオル屋さんの彼に出逢い、日本の素晴らしいものづくりに感動し、そして、恩師となる教授に出逢い、日本がもう一度世界で輝けるようにならないかと、そんなことをぐるぐる考えていたら、ふとある考えが浮かんだ。
「日本人が代々受け継いできた素晴らしいものづくりを、その価値の高さをしっかりと伝えて、世界の人に届けたい!」
私がライフワークとする夢が見つかった瞬間であった。
留学していた頃、海外の人は日本に良いイメージを持っているのに、「何か日本について知っているものはある?」と聞くと、その回答はトヨタ、寿司、アニメぐらい。大学生ながらに、もっと日本の良さを知ってほしいと漠然と思っていた。
また、フランスのラグジュアリーブランドで働くなかで、コロナ禍も圧倒的なブランド力で好業績を叩きだし、率直にすごいなと思う一方で、なぜ同じように小さなファミリービジネスで始まった日本のものづくり企業は、世界的にブランド価値を高められていないんだろうともやもやした気持ちを抱かずにはいられなかった。
「日本の歴史あるものづくりのブランド価値向上と海外展開」
私は生涯をかけてこの夢に取り組む!!
転機となる2つの出逢いと私が元々感じていた想い。その点と点がつながって、ひとつの線になった気がした。はじめての感覚だった。ワクワクが止まらなくなった。

最後に

第2回は、私がどうやって日本のものづくりに出逢い、この夢をライフワークにしようと思ったのか、少しパーソナルなストーリーをお話ししました。これからお話ししていく研究結果、取材内容などを読んでいただく前に、私がどんな想いでこのテーマに取り組んでいるのかを少しでもお伝えできたら嬉しく思います。
さて、次回は、なぜ今こそ日本の地場伝統ものづくりが世界を目指すべきなのかについてお話ししたいと思います。









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えりー|Japanese Craft & Brand Narrative Communicator
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