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読んだ本、観たもの

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「ぜひだれかとシェアしたい!」と思った本や展示を書き留めています。同じものを読んだり観たりした人、これ読みたい観たいと思った人と「スキ」やコメントでやりとりできたらうれしいです。
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記事一覧

「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」でマイ見本帖を作る

紙好きの方に、力をこめてお勧めしたい企画展やってます。東京・市ヶ谷で2025/2/16まで。 ここは大日本印刷が運営する「印刷博物館」。コロナ禍のさなかにオープンしたために開館当初は予約しないと入れなかったのですが(私は予約して行きました)、いまは予約なしで入れます。 が、大人気の企画展が終了間近ということで、週末は整理券が発行されるほどの混雑ぶりだとか。 そして、一枚ずつ集めた紙を製本コーナーに持って行くと、簡易製本してくれます。これがもう、実に楽しい。週末は製本コー

行ってきました。クリエイティブディレクターの宮崎光弘さんと上田壮一さんの展覧会、「デザインを読もう」at 多摩美術大学 https://www.idd.tamabi.ac.jp/design/miyazaki-ueda-exhibition/ 楽しかったので後でちゃんと記事を書くけど、ひとまずここにメモ

うっかり『言語学バーリ・トゥード Round2』を電車内で読んでしまい、吹き出すのをこらえて肩を震わせている。前作でも同様の失敗をしたのに

映画『うんこと死体の復権』を観ました。私たちの生活では忌み嫌われる一方で、深海でも地上でも、自然界では神様クラスに尊いうんこと死体。その落差を痛快かつ鮮やかに見せてくれる映画でした。 それにしても大人の自由研究の迫力よ……画面からあふれ出る狂気(ほめてる)に何度吹き出したことか

写真絵本『土佐湾のカツオクジラ』を読みました。ナイフのように美しいフォルムのカツオクジラ、土佐湾では一年中見られるそうです。…ってことは、土佐湾の海底には確実に鯨骨生物群集の世界がありますね🐳🦴

和歌を読み飛ばしていた私が『百首でよむ「源氏物語」』を読む

ウェイリー版・源氏物語(毬矢まりえ+森山恵姉妹・訳)を愛読し、長々と感想文を書き連ねた私ですが、実は、それまでの現代語訳遍歴でも、源氏物語の中の和歌はほとんど読み飛ばしていました。 覚えているのは、「からころも」を連呼するばかりの末摘花の和歌を光源氏が揶揄する「唐衣また唐衣からころもかへすがへすも唐衣なる」ぐらい。ひどいな光源氏、と笑ったから。 そんな私にぴったりの新書が昨年、出たのでした。 著者は古典文学の研究者、木村朗子さん。既刊の『女子大で『源氏物語』を読む——古

クラシック音楽を保護する「プリザビング・マシン」

文芸誌MONKEYの「いきものたち」号では、伊藤比呂美の「ヒルディスヴィーニたち」に加えて、フィリップ・K・ディックの'Preserving Machine’(柴田元幸 訳)も面白かった。 邦題が「プリザビング・マシン」で、最初は「Preserve」のことだとは気づかなかった。絶滅危惧種を保護する、というときのPreserveなのね。 モーツァルトの楽譜をこのマシンに入れると美しい鳥になって出てくる。ベートーヴェンの楽譜を入れると、厳しく堂々たるカブトムシに。さて、生まれ

伊藤ガビンさんの「はじめての老い」がすこぶる楽しい。一文終わったあとのどうでもいい付け足しにいつも吹き出してしまいます。口腔自衛隊……わたしも入隊適齢期だ https://note.com/itogabin/m/mfadfc4b35ea7

激忙トンネルを抜けたご褒美に読んでいる、MONKEYの「いきものたち」特集。伊藤比呂美の「ヒルディスヴィーニたち」が面白い

ウェイリー版「源氏物語」の沼にはまる

2024年のNHK大河ドラマは「源氏物語」の紫式部が主役なんですよね。楽しみー! いまから2年前の春、私はずぶずぶにはまっていました。源氏物語の沼に。 きっかけは仕事のご縁で、100年前にアーサー・ウェイリーが英語に訳した源氏物語の日本語訳を読んだこと。 ちょっとややこしいですが、 1000年前に紫式部が書いた源氏物語を、 100年前にイギリス人のウェイリーが英語に訳し、 そのウェイリー版を日本語に訳し戻した本 を読んだのです。 ウェイリーの訳は100年前のイギリ

『最前線に立つ研究者15人の白熱!講義 生きものは不思議』ーー鯨骨生物群集とバイオロギング編

読書週間ですね。今日のような夏日と読書週間のとりあわせはややちぐはぐ感もありますが、気温はともあれ空気はからりと気持ちいい。木陰でのんびり読書するならちょうどいいぐらいかもしれません。 前回のアマミホシゾラフグ編からの続きですが、この記事はこの記事で完結しています。どうぞ気にせず読み進めてください。 本書には、前回ご紹介したアマミホシゾラフグ研究の川瀬裕司さんを始め、わたしがこれまで取材でお話を伺ったことのある、めっぽう魅力的な研究者さんがほかにも二人、名前を連ねていまし

『ヤングケアラー 介護する子どもたち』の記者の姿に心揺さぶられる

『ヤングケアラー 介護する子どもたち』(毎日新聞取材班)を読みました。個々のケースがそれぞれに人生の深みを感じさせ、ケースごとにつまみ読みしていたら止められなくなった本でした。 ヤングケアラーは、「自分が10代のときは大変だった」だけでは終わらず、その時期のことが一生を左右してしまうんですよね。必ずしも負の影響ばかりではないので、一口に「かわいそう」と言うのはおかしいのだけど、それでも、ケアの日常を知ると胸が痛みます。 私が「ヤングケアラー」という言葉に初めて出会ったのは

危険! 時間とお金が溶ける「エルマーのぼうけん展」

数年前、実家で発掘した『エルマーとりゅう』の表紙をあらためて見て、びっくりしたことがありました。いくら逆光の場面を描いたとはいえ、森の中とはいえ、不吉な予感さえ抱かせるほどの暗さ。 足元で円陣を組んでいる鳥の輝きとのコントラストを出そうということなんだろうけど、主人公の顔が逆光でこんなに暗くなってる装画ってなかなかない。 ほんとにこんなに暗いの? もしかして印刷の問題だったりして……と福音館のサイトを覗くと、表紙画像はやっぱり強い逆光。なんならこっちのほうが黒い。 あれ

魚津の「埋没林博物館」で、水底に眠る巨大切り株に息を吞む

とある取材で、富山県にやってきました。海上に幻影のような風景が浮かぶ「蜃気楼」で有名な、魚津という町です。 天気はどんよりとした曇り。こんな日に蜃気楼が見られることはないのだけど、ここには「埋没林博物館」なる不思議な博物館があります。 埋没林って知ってますか? 河川の堆積や火山の噴火で森ごと地中に埋まり、朽ちることなくそのまま保存された森のことだそうです。森ごと地中に……。なんでしょう、このファンタジー感は。 魚津では100年ほど前、海岸工事で広大な埋没林が発見されまし