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祈りの柱:呼吸が繋ぐ天と地の叡智

 少年が目覚めたのは、見知らぬ異世界――そこでは「気柱」という天と地を繋ぐエネルギーの柱が人々の生命と運命を支えていた。しかし、世界の柱が崩壊の危機に瀕し、少年は「柱の守り手」として選ばれる。

 導師リオと癒し手エリナに導かれ、彼は「腹式呼吸」や「祈りの呼吸」を通じて自身の気柱を強化していく。影との対峙、迷いの克服、そして世界の柱と繋がるための試練――冒険を通じて、少年は自分自身を見つめ直し、真の自分を知る旅に出る。

 深い呼吸がもたらす癒しと覚醒の物語は、あなた自身の内なる世界とも響き合う。影を受け入れ、気柱を築くことで、少年は奇跡を起こし、世界を救うことができるのか?

 癒しと成長、ミステリアスな異世界の中で描かれる壮大なファンタジー。読後、あなたの呼吸もまた変わるかもしれない。


第1話 霧の中の声

 目の前に広がるのは濃い霧。音もなく、時間すら停止しているかのような静寂の中、僕は立ち尽くしていた。
 ここはどこだろう? 目を覚ますと、いつもの見慣れた天井ではなく、白く霞む世界が広がっていた。足元には冷たい石畳が続き、遠くにぼんやりと光る何かが見える。

 「……そこにいるのか?」
 声が聞こえた。低く、けれど柔らかな響きを持つ声だ。
 「君が……新たな柱となる者か?」

 振り返っても誰もいない。だが、声は確かに耳に届く。意味を尋ねようとするが、口が動かない。代わりに心がざわめく――なぜか、僕はこの場所に招かれたのだと確信していた。

 「お前が選ばれた。深く息を吸い、すべてを感じ取れ。お前自身の『気柱』を見つけるのだ……」

 その瞬間、足元から青白い光が湧き上がった。それは細い糸のように天へと伸び、やがて僕の身体を包み込む。そして――すべてが暗転した。



第2話 セリアと呼吸の教え

 目が覚めたとき、そこは美しい草原だった。空は紫がかった夕焼けで、金色の光が波のように草を揺らしている。
 僕の目の前には一人の女性が立っていた。年齢は僕と同じくらいか、少し上に見える。彼女は緑色のローブをまとい、優しいがどこか鋭い目つきをしている。

 「起きたのね。私はセリア。この地で『気柱』を守る者よ。」
 「き……柱?」
 僕はまだ朦朧とする頭を抱えながら訊ねた。彼女は静かに微笑む。

 「あなたがここに来た理由を知りたいのでしょう?その答えは、あなた自身の中にある。だが、その前に一つ学ばなければならないことがあるわ。呼吸のことを。」



第3話 腹式呼吸の目覚め

 セリアは僕を森の中の小屋へと案内した。そこには古びた木のテーブルと、ところどころ傷ついた椅子があるだけだった。

 「座って。今から、あなたに『腹式呼吸』を教えるわ。」
 セリアは言葉を続ける。
 「この世界では、呼吸がすべてを繋いでいるの。人間、自然、そして宇宙までも。深い呼吸を身につけることで、あなたの『気柱』が目覚める。」

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