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英語はすでに世界共通語

「英語がすでに世界の共通語」ということに対して異論のない方は、この項目を読み飛ばしてもらっても問題ありません。

AI(人工知能)翻訳があるから、わざわざ外国語を習得しなくてもいい、との主張も聞こえてきます。これに対する反論は後ほど別枠でします。ここで言っておきたいのは、AI翻訳に頼っている限りは、ニュアンスの違いや価値観の違いに気づかず、上っ面のコミュニケーションしかできないことになります。

国際連合(United Nations)の公式言語は6つあります。アラビア語、英語(イギリス英語)、フランス語、北京中国語、スペイン語、ロシア語です。これは、これら言語を使う加盟国の数と常任理事国などの力関係で決まっていると思われます。ですが、国連とともに世界に影響力を及ぼしている世界経済フォーラム(World Economic Forum)はスイスで行われますが英語です。スウェーデンで行われるノーベル賞(Nobel Prize)の授賞式も受賞講演も英語ですし、そもそもスウェーデン語のページさえありません。International Civil Aviation Organizationでは明確に民間航空のコミュニケーションは英語と規定されていますから、世界のどこでも飛行機に関わることは整備マニュアルから何から何まで全てが英語です。学術会議では、ドイツ化学会や中国の科学技術学会の多くのほとんどの会議は英語で行われています。私の経験でも、どこの国の大学の教授とでも、話すときは英語が共通語です。中国や韓国、ドイツもフランスもポルトガルもスウェーデンの人もです。お互いに何の疑いもなく挨拶からして英語です。ビジネスでも国境をこえる関係では、相手がどこの国の人であろうが英語が当たりまえです。

次に、英語が世界の共通語という点を支持する様々な量的データを、英語、日本語、他の第二位の言語との比較でみてみましょう。

英語を話す人口

最初に英語を話す人口です。ネイティブからある程度のレベルで英語を話す人まで、その定義にばらつきがあるため数字に幅はありますが、2008年時点でおよそ6億から20億人と見積もられています。2018年現在では世界人口も増えていますし、世界はよりグローバルにつながってきているので、この数字はもっと増えているはずです。それに対して日本語を使う人は約1億人です。世界第2位の言語人口は当然中国語の14億人ですが、中国語と言っても北京語、広東語、福建語など実際には互いに通じない多言語です。つまり英語を使う人口が圧倒的に世界No.1である事は明白です。2008年時点での英語人口と日本語人口の比は6〜20倍にもなります[1]。

書籍発行数

書籍の発行数はどうでしょうか。2016年の数値で見ると、英語が56万冊、日本語は7万8千です。ちなみに第2位の中国語は44万で英語に迫っています。英語・日本語比はここでは7倍の開きがあります[2]。書店に行くと、多くの書籍が海外の作者の翻訳版であることに気づくでしょう。でもこれらはベストセラーの中のほんの一握りにすぎません。

学術雑誌発行数

学術雑誌の数はどうでしょうか。2007年の数字ですが英語が2万8千種、日本語は2千種でしかありません。14倍の開きがあります。2位はドイツ語の7千ですが英語とは大きな開きがあります[3]。ちなみに日本語の学術雑誌での論文発表は、日本の外では業績評価の対象にさえなりません。ところで、いまでは経済でも軍事でも超大国アメリカと肩を並べる中国は、学術面でも世界のトップクラスの大学(日本のトップの東大よりも上)があります。中国国内の学術雑誌の大部分はいまでは、Chinese Journal of Chemistryなどと英語になっています。日本はこの点でも大きく遅れを取っています。

Wikipedia項目数

最後にWikipediaの項目数です。英語が世界一で569万件、二位はドイツ語の221万件。日本語は112万件、と英語の約5分の1です(2018-08-12現在)。

これらの数字から言えることは、英語をコミュニケーションや情報入手の手段として使えない人は、情報量だけでも圧倒的に不利だということです。世界は広いのに日本の狭い世界に閉じこもっているのです。江戸時代の鎖国と同じです。英語を身につけないということは、自ら鎖国しているようなものです。

ところで、東南アジア諸国では日本語学習熱が高まっています。ベトナム、マレーシア、タイなどです。これら諸国で日本語を学ぶニーズがあるのは、日本に介護師などとして働きにくるためです。しかし日本語が将来、アジアの共通語になることはありえません。アジア各国では、英語がすでに共通語として認められているからです。

一方、中国語も将来の世界共通語になるのでは、という論調も見られます。世界の人口の6人に一人が中国語を使うわけですし、前述の通り国連の公式言語の一つでもあるため、一理あるかもしれません。しかし私はそうは思いません。なぜなら覚えなければならない文字数が多いこと。そして膨大な数の漢字を覚えなければスタートラインにさえ立てないことです。アルファベット26文字(英語の場合)だけで全てを表すことのできるヨーロッパ系の言語からすれば非常にハードルが高いのです。またイントネーションが違えば全く意味が異なる言葉が非常に多いことも中国語の習得を難しくしている理由です。

19世紀後半には、エスペラント語という人工言語が作られました。これはあらゆる国の人が習得しやすいように工夫されたもので、ラテン系アルファベットを使い、発音が工夫された言語です。しかし今日に至っても第二言語として採用している国もなく、Wikipediaの項目数でも25万件弱と、世界共通語の当初の目的からはほど遠いのが現状です。

以上のように、数字と現状からみると、英語が世界の共通語というのは紛れもない事実なのです。

[1] Crystal, David, Two thousand million?, English Today, 24 (2008) 3-6, doi:10.1017/S0266078408000023
[2] http://www.worldometers.info/books/
[3] Lobachev, S., et al, Top languages in global information production, Canadian J. Library Info. Practice Res., 3 (2), 2008, doi:10.21083/partnership.v3i2.826

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