短歌 (ペンギンは飛べない鳥で人間は何ができない猿なんだろう /またはそれ以外の歌)

(とても昔に、NHKラジオで短歌の番組があり、投稿していました。数首採用されたことがあります。)


ペンギンは飛べない鳥で人間は何ができない猿なんだろう

算数の問題の中でA君は同じ速さで走り続けた 

窓からは東京タワー 口からはフライドチキンの骨が出てくる

スカートがはためく影を見つめてる 風が地球の頬を撫でてく

細胞の海を無心に泳いでる ミトコンドリアに生かされている

あの年はノストラダムスにせかされて 実った恋の多かったこと

ロケットに部品を取り付け忘れたと言い出せないままカウントダウン

「この辺って、カレーを食べたとこだよね?」彼女の地図は味でできてる

俺なんか、「あれとって」って君の言う「あ」の瞬間に渡してるから

道端にへたり込んでも見上げたら いつでもここが空の真ん中

透明な夕方がある ここでいま 息できるのか不思議なくらい

吹き抜けの光の海の中でなら珊瑚のように呼吸ができる

檻に羽根を閉じ込められてそれ以来、飛べないんだよ扇風機って

いつの間に人は海からこぼれたの?帰りたくってときどき泣くの?

洗い物しながら僕は考えた 星のこととか砂のこととか

夢のなかの夢のなかの夢のなかの夢のなかで眠っていたい

悲しいと口に出したら悲しみが消えてしまうと言ったけど嘘

星空のようにまたたく神経のひとつひとつが痛み、熱、青

 その傷がまぶたとなってひらいたらおそろしいからガーゼを当てる

ドラえもんがいたことだけを忘れちゃうひみつ道具を最後にくれた

堪えられる程度の痛みであるのなら悟ったような顔をしなさい

"I♥NY"ってTシャツの♥を突きやぶればつかめるよ君の心臓

猫カフェで君とだらだら過ごしたい ほんとは君と猫になりたい

ジャイアンに追いかけられて殴られて夢の中でもやっぱり痛い

あいつらはみんなジャガイモ ときとして俺を泣かせてくれるジャガイモ







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