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女神の継承(2021)正真正銘の問題作。
韓国とタイの合作ホラー。全編モキュメンタリー(フェイクドキュメンタリー)として描かれている。激ヤバとの噂を聞きずっと気になっていたけど、欧米産悪魔が大好きな私は何となく躊躇していた。十字架を握りしめて聖水を浴びせる定番悪魔祓いが好きなんだけどなーと。だがその心配は徒労に終わった。
…やってくれましたよ。
アジア特有のじっとり×悪霊の恐ろしさは無限大。
<本当にざっくりあらすじ>
舞台はタイの小さな村。現地の人々が崇拝している守護神「バヤン」の精霊に取り憑かれたという霊媒師ニムの日常を記録するため、タイのドキュメンタリークルーが村を訪れる。そんな折、ニムの姪であるミンが原因不明の体調不良に見舞われる。ミンの行動はどんどん過激になっていき、心配した家族は除霊を試みるが・・・
<感想>
※軽いネタバレを含みます※
前半は精霊とか霊媒とか継承とか、この村や一族のルールを理解するのが少し大変。文章で説明するのも長くなるのでやめておく。呪詛とかがハマらなかった人は若干退屈してしまうかも。かくいう私もその一人。でも諦めないでほしい。そこが受け付けなくても、視覚的インパクトだけでも十分に観る価値のある作品だ。
少しずつ様子がおかしくなっていくミン。その行動は日に日にエスカレートし、常軌を逸した行動をとるようになる。一体何が取り憑いているのか。あれでもない、これでもないとやっている間にミンは人間性を失っていく。
キリスト教と関わりの深い欧米産の悪魔(大好物)はそれぞれ人格があり、人間を馬鹿にしたり弱みを握って精神的な揺さぶりをかけてくる印象だが、ミンに取り憑いた悪霊はもっと原始的。性的逸脱行為を繰り返し、四つん這いで動き回り、好きなところで放尿。何をするか分からない動物的な動きがおぞましい。
途中で出てくる暗視カメラには世にも奇怪なものが映りこむ。思わず声が漏れそうな映像に、私は見てはいけないものを見てしまった罪悪感すら覚えた。生きたまま釜茹でにされて、むしゃむしゃ食べられるわんこの映像と悲痛な鳴き声は、小さい頃から犬を飼ってきた私の脳裏にしっかりと焼きついた(褒めている)。
最後も正々堂々バッドエンド。ハートウォーミングなシーンなど一切ない。誰も報われず、悪霊大勝利。
私は”子供にも容赦しないホラーは良作”という価値観を持っているのだが、まさか赤ちゃんにも容赦しないとは。ここまで来るともはや清々しさまで覚える。その方が公平な気さえしてくるのだ。
ホラーを見慣れている人にこそ鑑賞してほしい本作。息を呑むとはこういうことだ。モキュメンタリーなのも良い味を出しており、現場の臨場感を上手く醸し出している。どんな演技指導をされたのか分からないが、美しいのに体を張りまくった主演女優の役者魂には脱帽です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。